NOVEL REVIEW
<2002年06月[後半]>
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06/30 『フィギュア17 つばさ&ヒカル』 著者:米村正二/電撃文庫
06/30 『電詩都市DT <下>』 著者:川上稔/電撃文庫
06/29 『総理大臣のえる! 撃破! 日本消滅計画』 著者:あすか正太/角川スニーカー文庫
06/28 『レンテンローズ』 著者:太田忠司/富士見ミステリー文庫
06/28 『理央の科学捜査ファイル3 そして私が消えてゆく』 著者:夏緑/富士見ミステリー文庫
06/27 『トレース&トレース でたとこ勝負の超新星』 著者:伊澄優希/富士見ファンタジア文庫
06/27 『チャイニーズ・ドリーム そして炎は天を突く』 著者:雪村智史/富士見ファンタジア文庫
06/26 『ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!』 著者:風見周/富士見ファンタジア文庫
06/23 『武官弁護士エル・ウィン』 著者:鏡貴也/富士見ファンタジア文庫
06/23 『新装版フォーチュン・クエスト3 忘れられた村の忘れられたスープ<下>』 著者:深沢美潮/電撃文庫
06/23 『新装版フォーチュン・クエスト2 忘れられた村の忘れられたスープ<上>』 著者:深沢美潮/電撃文庫


2002/06/30(日)フィギュア17 つばさ&ヒカル

(刊行年月 H14.06)★★☆ [著者:米村正二/カバーイラスト:千羽由利子         /口絵・本文イラスト:中平凱/メディアワークス 電撃文庫]  同名アニメの小説版。この作品は知っていたけどアニメじゃ見れる機会がなかったので、 ちょっと興味を持って読んでみました。アニメの脚本書かれた方が執筆されたという本作、 てっきりアニメ見てる人対象なのかと思いきや外伝的なストーリーってわけでもなく、ど ちらかと言えば観た事ないもしくは知らない人向けなのかも。  つばさの内向的な性格は読んでいてもどかしかったり苛々したりだったけど、ヒカルと の出会いから別れまで本当の意味で変わろうとするつばさの姿が雰囲気としてよく表れて ます。ただ物語の雰囲気は掴みやすいのですが、展開があまりに急ぎ過ぎてあらすじを読 んでいるような感覚だったので、描写不足な所が結構あったりキャラクターの掘り下げが 足らずに少々薄っぺらく感じてしまったり……。どうも脚本寄りな所が小説とは違ってい て、小説は書き慣れてないかなーという印象でした。  しかしアニメを知ってるとキャラクターや設定の描写不足はそれほど気にならないだろ う、と考えるとアニメ見た人向けでもあるのかなと思ってしまうのですが、それなら外伝 的なストーリーの方が良かったんじゃないだろか? とターゲットがイマイチ分からない 作品でした(^^;)。面白く感じられそうだっただけに惜しいなぁ。
2002/06/30(日)電詩都市DT <下>
(刊行年月 H14.06)★★★☆ [著者:川上稔/イラスト:さとやす/メディアワークス 電撃文庫]  下巻も相変わらずの極厚ボリュームで《言定議状態》と《言解議状態》の切り替えで進 んでゆく特殊な文章形式も同様。しかし上巻であれほど読書に苦戦していた文章形式が何 故か下巻を数ページ読んだだけですんなり受け入れられたのは、いい加減慣れてしまった からなのか。内容的にやってる事はほとんど青江の答えを求めようとする行動として表れ ていたので上巻と比べたら割と単純明快に感じられたかな。特に《言解議状態》での戦闘 シーンが多かった気がしたのですが、そういう描写はじっくり読んで想像すると頭の中で 明確に動きが見えていたのでうまいなと思いました。  優緒を求めて彼女を託そうとする者達と相対し、「最強」を掴む為にアルゴとぶつかる 事で答えを得ようとする……そんな青江の行為が実に分かり易いものだったので、深く独 特な文章と設定・世界観にもそれほど跳ね返される事がなかったのかもしれない。あとは 青江と優緒がベタベタエロエロしてただけだし(笑)。  設定で一番興味を引かれたのは、奏荷(プラス)と騒荷(マイナス)の概念とか同極と 対極の関係などで、納得しきりな説得力があってなるほど〜という思いでした。対極の青 江と優緒がくっ付いてるのって磁石と同じ? 同極で本気の争いがないのも磁石でくっ付 かない=決してぶつかり合わないと解釈しましたが……どうだろう。    そんなわけで予想してたより下巻読了で感想が結構上方修正され、食わず嫌いはいかん なと思わされました。激しく読む人を選ぶと言われる都市シリーズの中でもこのDTは輪 を掛けて特殊だったようで。しかし確かに取っ付き難い所はあったけど、やはり世界観と 設定の作り込みは並々ならぬものがあり、加えて文章形式の「システム」を読み解く楽し みというのがこの物語の魅力なのではないかなと。ま、これ読めたらなら他シリーズも充 分楽しめそうな気がするので(笑)いずれ手を出してみたいです。  既刊感想:
<上> 2002/06/29(土)総理大臣のえる! 撃破! 日本消滅計画
(刊行年月 H14.06)★★★★☆ [著者:あすか正太/イラスト:剣康之/角川書店 角川スニーカー文庫]  シリーズ第4巻。悪魔メフィストの魔力が切れた為にのえるが総理大臣の座を失った前 巻からの続き。と言っても話的には続いてないですが、総理大臣の椅子を奪還するという 部分が黒瀬に乗っ取られた所から引き続いてる感じ。  基本的にこのシリーズは、とにかく主人公・折原のえるのトンデモで強烈なキャラクタ ー性で引っ張ってる印象が強い。で、2巻まではのえるが際立ってた分ストーリー部分は イマイチだったけれど前巻あたりからようやくかみ合い始めたかなと言った所で、今回は のえるの個性と脇役達とストーリーとがこれまでで一番バランス良くうまくかみ合ってた んじゃないかなと思いました。まあ個人的にはのえるってキャラが大好きなので、惚れ込 んでるキャラがしっかり描かれてるなら物語の展開の粗はそんなに気にならなかったり許 容出来てしまう……ってのがこのシリーズに抱いてるものかなと。  前回のどシリアスな重い展開の鬱憤を晴らすかのような、今回のキャラクター総出演& シリーズ集大成っぽい展開。まるで最終回を感じさせる内容で、好きなシリーズだけどこ れで潔く終わるならそれもまたよしと思いましたが、まだまだ続くそうな(笑)。  出番が削られてただけに、相変わらず遊ばれてた健太とか相変わらず気持ちが伝えられ ないほのかとか、かなり優遇されてた相変わらずイジメられ役なさくら先生とか(笑)久 々の出演だった忍とか、結構登場してたのは嬉しかったかも。  目的は総理の奪還。でもメインで描かれていたのはのえると若葉のやりとり――若葉が のえるに抱いてぶつけた苛立ちとか嫉妬とか自らも持て余す気持ちに加えて、心の奥底に あったのは羨望だったり憧れだったり。そんな部分だったんではないかと思いました。  のえる1人でどうにかしようとして、なんだかんだとやってのけてしまうんだろうなと いう期待を抱かずにはいられない。それでも今回はどうにもならない所から、1つ1つの 小さな想いのカケラが集約してのえるにとって大きな後押しとなり加速する辺りが凄く良 かったです。最後の大逆転劇はこれまで溜め込んでたものを一気に吐き出す感じで痛快か つ爽快。読んでてスッキリしました。  気になってた部分として「どういう方法で総理大臣に返り咲くのか?」というのがあっ て、またメフィの力頼りじゃつまらんよなぁとか思ってたんですが……そうでなかった事 に安堵しつつもやり方がとんもなくのえるらしい。こういう所で頭が回るくせにどうして 勉強はダメなんだろう(笑)。いや、それより特大フォントで素行「マイナス1億点」と やられたのには度肝を抜かれました。というかこんなのやっていいのかよ?(^^;)  既刊感想:
彼女がもってる核ボタン       恋する国家権力       乙女の怒りは最終兵器 2002/06/28(金)レンテンローズ
(刊行年月 H14.05)★★★ [著者:太田忠司/イラスト:天広直人/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  何処行っても「天広さんの表紙イラストや挿絵に抗えずついつい手に取ってしまったぁ 〜」つーのばかりしか見掛けなかったような気がしてそれでいいのか? と思ったのも一 瞬で、やっぱりこの美麗なイラスト見せられたらそれでいいですとしか言えない(笑)。  過ちや伝えられなかった事が引き金で悲劇を生んだ現在を、もういちど過去から修正す る事の出来る可能性。1度自殺や殺人事件が起こりながらそういったものを盛り込むとい うのは、現実離れしていながら新鮮で面白い発想だなと思いました。欲を言えば2話目も 1話目と同様に、達哉が伊月に吐いた言葉を修正出来るような救いのあるやり直しだった ら良かったのですが。ただ、本来後悔の残る言葉も死んでしまった人間も修正する事は不 可能なわけだから、過去をやり直す代償と考えればたとえ救いのないものだったとしても 納得は出来るかなと(それでも1話目の結末の方が断然後味は良いですが)。  しかしながらレンテンローズの店やアカンサス、プリムラの正体は分かっても存在は一 切謎のままなので、確かに内容的にミステリーとは言えても全然納得出来ない所が多かっ たです(^^;)。いつの間にか姿を見せるレンテンローズの店が病んだ心の癒しになって るのは分かるんですが、何故真相を語るシーンで登場するのか? 意味は? 目的は?  どうして過去からやり直す事が出来るのか? その理由は? 現状だと「それがアカンサ スの能力だから」で片付いてしまってるので、その辺続編でスッキリさせて欲しい所。
2002/06/28(金)理央の科学捜査ファイル3 そして私が消えてゆく
(刊行年月 H14.05)★★★★ [著者:夏緑/イラスト:船戸明里/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  シリーズ最終巻。かつて交通事故を起こして恋人の命を奪った男が殺された事により桐 生が逮捕されてしまった事件。それと陸上部のマネージャーに志願した理央が、レギュラ ー選抜と部員の失踪から浮かび上がってきた疑惑に巻き込まれてしまう事件。  一見接点のなさそうな二つの事件がアリバイ証明という所から繋がりを見せる辺りがう まく書けてるなと思った上で、更に逮捕された桐生を救おうと謎解きに挑む理央の頑張り や直向きさが乗っかってるから彼女に感情移入も出来て面白く感じられる。  なんかあまりに行動派なもんで、理央が慢性腎炎という病気持ちだという事を毎回つい つい忘れがちになってしまうのですが(笑)。今回は動き過ぎて体調崩すような事もなか ったけど病気持ちなのにこんなに動き回って平気なのか? という不自然さみたいなのも 少々あったり。でも持ち前の元気さと前向きさが病気を跳ね除けてくれてるんだろうなと 思えば、そこが理央の魅力なのかなと思います。  しかしこれでシリーズの見納めとは……錦織警視の印象が多少良好に向かった所でよう やく主要キャラも出揃った感じで、シリーズ作品として続けばこれからキャラも育ってそ れぞれの関係が事件を通して描かれてゆくと一層面白くなるだろうなぁと思ってただけに 残念でならないです。元々好きなシリーズで、富士見ミステリーの中じゃ推理も謎解きも 安定した出来で楽しみながら読める数少ない貴重な作品だったのに〜(^^;)。  まさに物語の幕を降ろす為に添えられたようなクリスマスの日のエピローグシーンを読 んで「ああ、やっぱりこれで終わりなんだな……」と実感させられました。タイトルにな ってる「そして私が消えてゆく」が何を指しているかはおそらく……桐生冬樹が今まで束 縛されていたものであり最後に彼の中から消えていったもの、ではないのかなとあくまで 勝手な憶測ですがそんな風に解釈してます。  既刊感想:
2002/06/27(木)トレース&トレース でたとこ勝負の超新星
(刊行年月 H14.05)★★★ [著者:伊澄優希/イラスト:葉賀ユイ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]  第十三回ファンタジア長編小説大賞<努力賞>受賞作……ではなくて受賞後新たに書き下 ろしたものが本作だそうな。そういうケースも珍しいなと思いつつ、努力賞なんて受賞枠 があったのか〜と、そっちの方にちと驚いてしまいましたが(笑)。  ストーリーの内容あるいは展開構成などに感じる所や印象に残る所が少なかったとして も、主人公の強烈な個性があれば足りないものを補って読み手を引き込む事も出来る…… と期待したくなるのが「あたし」もしくは「わたし」一人称文章で、この作品も主人公ユ ーカのあたし一人称文章となります。んでどうだったかと言えば、元気系のヒロインとし ては悪くないんだけど強烈とまではいかなくて、やっぱりどうしても類型的という印象は 拭い切れなかった。どちらかと言えば、突っ込み毒舌モモンガのハルやユーカ曰く変態癖 で彼女を溺愛してるコーウェイや美術館館長ゴッチィとかの方が個性はユーカより抜け出 ていたかも。ユーカの個性が脇役に負けてる感じがしたので、脇役達を遥かに越える彼女 の飛び抜けたはじけっぷりが見られたならば、もっとユーカというキャラクターに引き込 まれる事でもっと物語も楽しめたんではないかなーといった所です。  内容に関しては、勢いは感じられるんですが……う〜む。終始でかガメを追っかけてる という印象しか残らなかったので、もうちょっと捻りが欲しかったかも。例えば何の為に 登場したんだかよく分からなかった殿下と呼ばれる美青年やルイックをもっとユーカに関 わらせるとか(全く直接的に関わってないのでホントに登場させる事に何の意味があった んだか(^^;))。ただキャラクター同士の掛け合い――特にユーカとハル、ユーカとコ ーウェイは読んでいて楽しく、この作品はキャラクターで引っ張る部分は面白く書けてい ると思います。ユーカが【ルアル・ペブル】なるものを集め始めた辺りで続く気配濃厚な ので、今度はまだ謎とされている部分と合わせてユーカ達と上記の敵側にまわりそうな2 人との関わりなども見せて欲しい。
2002/06/27(木)チャイニーズ・ドリーム そして炎は天を突く
(刊行年月 H14.05)★★★☆ [著者:雪村智史/イラスト:大峰ショウコ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]  中華風というのはあくまで雰囲気付けで、メインは故人の怨念が残した「燃える絵」の 謎を追うミステリー仕立て。これは確かに……某同系列ミステリー作品群より余程内容は しっかりしてるなと思いましたというかこういうのこそミステリー文庫で出してくれと声 を大にして言いたいのですが(笑)。  例えば続編を想定して書かれた場合、何かしら必ず謎として伏せられる部分があって、 この作品も狙ったように主人公・シャンの生い立ちとかがそれに当てられそうだったので すが、最後の最後で明かされたのでホッとしました。シャンの事に限らず燃える絵や他の 謎とされていた部分に関しては、一旦事件の収束を見てから最後にシャンの口から語られ るという展開だったので途中結構やきもきしたというか。そういう展開が物語を引っ張る 要因になってたのは確かで最後で一気に真相を知れてスッキリしたんだけど、もう少し途 中途中で小出しにして見せて欲しかった……というのは読み手の我侭かな? しかし大き く破綻してるような箇所は特になく、滅亡したソルダの王族や華国との確執などは細かい 所まで設定が効いているなという感じだったし、何より下手に謎を残さず全て明かして張 られた伏線もきっちり消化している点はスッキリした読後感を味わえて良かったです。  キャラクターは思わず華奢な女の子と見間違えてしまう美少年シャンと思わず健康的な 男の子と見間違えてしまう少女ラピアの対比が読んでいて面白く、この二人を中心に他の 主要キャラも個性が出ていたかなという印象。脇役は一筋縄ではいかないというか一癖も 二癖もありそうな人達ばかりだったような……個人的にはアブナイ趣味を持ってそうで、 飄々としてながら意外に実力ありそうな子央が気に入ってます(笑)。もし続編あるなら、 内容がどうあれこのキャラクター達の物語なら読んでみたいかも。 
2002/06/26(水)ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!
(刊行年月 H14.05)★★★☆ [著者:風見周/イラスト:おときたたかお/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]  第十三回ファンタジア長編小説大賞<佳作>受賞作。  余計な部分で無駄のある文章ってのは冗長になりがちという事にもなるでしょうが、デ ビュー作で多目の文章量でも読み易かったという印象だったので、削ったと解説にあった 100ページ分がどの辺なのかは分からないけどそれも読んでみたかったかなと。  依頼人のセキュリティシステムの不備を探すべく、家宅潜入でそのセキュリティシステ ムと対決するのを生業とする仕事人達の物語。依頼人の張ったセキュリティの網との能力 比べのような感覚で、それを請け負う「侵入屋」という発想が面白い。主人公の侵入屋チ ーム・トレスパスが連戦連敗で金欠貧困ってのはお約束っぽい気もしたけど(笑)。  キャラクターは類型的ながら個々の魅力がうまく引き出せているなぁという感じ。特に マナとレイヴァ――とりわけレィヴァがマナに対して抱く想いが何なのか、ちゃんと理解 出来ず持て余してる様子はなんかいいな〜と思いました。いがみ合って反発し合って到底 うまくやってけそうにない危なっかしさを見せながらも、徐々に気になる存在になりつつ ある所とか。合わせてレイヴァの過去をほのめかしながらハッキリした所が伏せられたま まだったのは少々残念だったり不満だったりでしたが、いかにも続編ありそうで続きに持 っていき易そうな内容・展開からするとその辺は次に期待って事になるのかな?  後半の飛行器レースと空賊退治は、出来ればどちらかに絞ってじっくり見せて欲しかっ たですが、序盤から中盤にかけての侵入屋としての依頼作戦遂行や前述のマナとレイヴァ と仲間達のやり取りなどはうまく描けていたと思います。まあ元気系ヒロインの恋心なん てやっぱりご愁傷さまで辿る結末はこんなもんか(笑)。でもマナにはレイヴァがいるか らいいんじゃないかと。この二人の今後も気になる所。
2002/06/23(日)武官弁護士エル・ウィン
(刊行年月 H13.01)★★★☆ [著者:鏡貴也/イラスト:義仲翔子/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]  第十二回ファンタジア長編小説大賞<準入選>受賞作。  もう1年半くらい前の作品でシリーズとしても既に5巻まで刊行されとりますが、今年 の受賞作品読もうとして何となく思い立ったのと、それより前から他者様の感想を読んで いて色々と気になっていた作品だったので試に1冊読んでみようかと思った次第。  とにもかくにも方々で言われていた通り、ヒロイン・ミアの暴走気味な乙女チック一人 称文章を許容出来れば内容的にはそれなりに楽しめるんではないかなと(もっとも、これ は1巻読んだだけの感想ですが(^^;))。祖国を滅ぼされたという重い過去を背負って いながら、酒場で盗賊まがいな事やって前向きというか斜め向きに生きてる辺りは元お姫 様なのに結構手馴れな上に逞しいな〜と好感触だったんですが、何かにつけて“元お姫様” を意識したがったり、ウィンに助けられていきなり惚れてネジがぶっ飛んだ辺りから少々 おかしくなってしまったようです(笑)。と言っても嫌なわけじゃないんだけど。  面白いといえば超簡易強制裁判とか、人間以外の生物――竜を相手に裁判を起こしたり また竜を弁護したりのシーンなどが物語に組み込むアイディアとしてはなかなか面白いも のを感じました。ただ法廷での言葉の対決というのはあまりなくて、実際には魔術?能力 がぶつかり合うアクションシーンの方が多かったんじゃないかなと。武官弁護士であるウ ィンが強過ぎる所から危機感が少ない分何でも出来てしまうような感じで、法廷での駆け 引きにあるような緊張感が少々薄かったかなぁという印象(そもそもこの物語にそういう の求めるのは間違いだったりして(笑))。ミアの過去話が今後絡んでくるとまた面白く なるかなといった所かな。ま、それなりに良かったのでいずれ続きも読んでみようかと。
2002/06/23(日)新装版フォーチュン・クエスト3 忘れられた村の忘れられたスープ<下>
(刊行年月 2002.05)★★★ [著者:深沢美潮/イラスト:迎夏生/メディアワークス 電撃文庫]  上巻が事件発端編とすると下巻はほぼ全編ダンジョンクエスト編。そうかこのエピソー ドでクレイへの不幸&不運&不遇というイメージが確立されたのかと(笑)、この巻も色 々思い返しながら読みました。レベル3〜5の癖にブラックドラゴンをどうにかしようと 行動してるので相変わらず無能やな〜とかそういう事ばっかりやってるからレベルがまと もに上がんないだろうなとか、テーブルトークRPGみたいな物語の中でキャラがテーブ ルトークRPGなんかやってんなよとか、どっちかと言うと物語の展開や構成などよりキ ャラの行動にいちいち突っ込みたくなる内容でしたが(^^;)。  ブラックドラゴン(JB)とのテーブルトークRPG勝負なんかは、進行上で本筋から 逸れた部分にもかかわらず結構ページ数を割いてるので、今考えるとこれがあるから全体 が冗長に感じてしまうのかなぁとか。でも結局好きなんですよね、こういう遊び心の入っ た部分ってのは。特にまずキャラクターありきな物語だと魅力が際立ったりするので。  少しだけどトラップがクレイとの過去を懐かしみながら語るシーンが一番印象に残った かな。ぶっきらぼうなトラップだけど親友としてちゃんとクレイの身を案じてるんだなと 感じられたので。パステルがジュン・ケイに心奪われる様もなかなか良かったですが、ま あ元気系ヒロインが憧れとか恋心抱いた末の結末なんてこんなもんだろ(笑)。  既刊感想:
2002/06/23(日)新装版フォーチュン・クエスト2 忘れられた村の忘れられたスープ<上>
(刊行年月 2002.05)★★★ [著者:深沢美潮/イラスト:迎夏生/メディアワークス 電撃文庫]  まだまだ面白さより懐かしさが先に立つ新装版フォーチュン。パステルの一人称やパー ティメンバーの性格と役割だとか、登場アイテムやモンスターは久し振りに再読してもか なり覚えてる部分はあったのですが(今回の場合はカバの高速乗車アイテム・エレキテル ヒポポタマス通称ヒポちゃんが特に(笑))、肝心の物語の方があんまし印象に残ってな かったなぁという感じ。それでも段々「そういやこんな話だったな〜」となるので、思い 返しながらじっくり噛みしめるように読んでました。  んで元々は冒険者カードの書き換え(現実の運転免許の書き換えみたいなもんか?)と いう目的で、行動拠点のシルバーリーブから砂漠の街エベリンへの往復の旅だったはずが、 とある事件に巻き込まれてパーティレベル以上のクエストに挑まなけりゃならないハメに なってしまったと。冒険者カードの書き換えってとこでふと思い、今回と新フォーチュン 8巻の冒険者レベルを比較してみて、1レベル程度しか上昇してない辺りパーティのへな ちょこさが伺えるというか(苦笑)。まあ弱っちいのに無謀なクエストに挑むのは日常茶 飯事だったり、そのくせビビリながらも根底ではお気楽極楽さを何気に感じさせてくれる のが読んでいて楽しい部分なのかも。  既刊感想:


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