NOVEL REVIEW
<2002年07月[中盤]>
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07/19 『頭蓋骨のホーリーグレイル』 著者:杉原智則/電撃文庫
07/18 『吸血鬼のおしごと2 The Style of Servants』 著者:鈴木鈴/電撃文庫
07/17 『A/Bエクストリーム ニコラウスの仮面』 著者:高橋弥七郎/電撃文庫
07/16 『レベリオン 楽園に紅き翼の詩を』 著者:三雲岳斗/電撃文庫
07/14 『ばいおれんす☆まじかる! 〜核の花咲く日曜日』 著者:林トモアキ/角川スニーカー文庫
07/13 『ブロークン・フィスト2 傷だらけの遠い明日』 著者:深見真/富士見ミステリー文庫
07/12 『ブロークン・フィスト 戦う少女と残酷な少年』 著者:深見真/富士見ミステリー文庫
07/11 『レブリガン・ド・レコール 今宵、すべての悪党たちに』 著者:日昌晶/富士見ミステリー文庫


2002/07/19(金)頭蓋骨のホーリーグレイル

(刊行年月 H14.07)★★★ [著者:杉原智則/イラスト:瑚澄遊智/メディアワークス 電撃文庫]  エロもグロも想像してたほどではなかったですが、まあ電撃だし(何が?)露骨な描写 はさすがにないにしても、文章の中にはちゃんと表現があってどろどろとした陰鬱で妖し げな雰囲気作りはしっかり作風として反映されてたんではないかな。  とある宗教団体が崇拝する神(この場合は悪魔か)を現世に降臨させようというオカル トな部分や、異能力同士の戦いや拳銃戦などのアクションシーンなども盛り込み方のうま さを感じさせてくれました。弘人らと敵対するバフォメット心奉者側の『魔堂騎士』なん て異様さが醸し出された設定はなかなか興味をそそられて面白い。  しかし、それでもなんかイマイチだったな〜というのが読了した時点での印象なのです が。それが何処かと考えても靄がかかったようにハッキリしないのが困りもの。  主人公が固定されてない辺りなのか、それとも構成に少々難を感じてしまった辺りなの か。一応弘人が主人公だと読んでいたのですが、彼が行動を起こす事情や心情が中心とな ってるのかと思いきや必ずしもそういうわけではなくて。  中心が弘人と涼子だったり瑞枝達だったり遼馬と咲夜の父娘だったり……それでもうま く纏まっていればやってる事の内容も把握出来て楽しめたと思うのですが、どうもちりば められたピースがちぐはぐに接ぎ合わさったような感覚でうまくいってないような。  んで「誰が何の為にどんな気持ちでこういう行動を起こしている」のかが場面ごとで掴 み辛くて、やってる事がごちゃ混ぜになってるように感じてしまったのですよね。  とか自分で書いてて本気で言いたい事を見失いがちなのですが(^^;)、構成に首が傾 いでしまったのはこういう所から。ただ充分楽しめたし気に入った点が結構あったのも確 かです。続きとして仕組まれた部分が今後どう展開するのか気になる所。
2002/07/18(木)吸血鬼のおしごと2 The Style of Servants
(刊行年月 H14.07)★★★☆ [著者:鈴木鈴/イラスト:片瀬優/メディアワークス 電撃文庫]  とりあえずレレナの存在意義はありました(ただ今度は逆に舞の存在意義が……)。  いやしかし、なんで前回あんなに扱き下ろしたんだったっけな〜? と、つい忘却して しまうくらい格段に面白くなってました今回(結局前巻は粗が目立ち過ぎでダメだったの かも)てな具合で内容的にも着実なレベルアップを感じられて良かったです。  とは言っても何故かまだ色々突っ込み入れたくなるこのシリーズ。まず1巻が舞メイン に対して2巻がレレナメインと解釈すると一見バランスが取れてるようにも思えるんだけ ど、1巻あたりのキャラの登場頻度に偏りがあり過ぎ。上記の通り今回は舞の扱いが非常 にぞんざいなので、前回のレレナの時と同じく二枚看板でヒロイン立ててる部分があまり 生かされてないぞと。ただ今回の場合は出番少ないながら、レレナの葛藤と苦悩と理不尽 な文句をぶつけられた時に発生した舞の気持ちがうまく描かれていました。それだけに亮 史が最後に舞の台詞を思い返してるんだったら、せめて彼女と言葉を交わすシーンがあっ たらなぁという感じだったのですが。次巻以降は両ヒロインに偏りのない登場・活躍の場 を物語に合わせてしっかり与えて欲しい。  あとは今回レレナとマリ&ガゼットの帰る帰れない話とシギ&クイナの吸血鬼絡みな話 が混ざってたわけですが、レレナが双方に関わってしまう以外は、お互いあまり干渉し合 わない独立したエピソードだったのではないだろうか? と考えると片方をもっと突き詰 めて書くか、もしくは完全に独立させて構成を2話形式にした方が、混同せずにすっきり 纏まり更に密度の濃い内容で楽しめたのかもしれないという気持ちでした。  ……なんて不満言ってばかりで終わると「またイマイチだったのか……」となってしま うのですが(^^;)。頻繁で無意味な場面転換は改善されていたし「吸血鬼だから〜」っ てのも全然鼻に付かなかったし、キャラクターが何処に向かって何をしようとしてるのか というのも明確に描かれていたので、前回イマイチだった部分はほぼ帳消し。こういう所 からうまくなってきてるなと言う手応えみたいなものを感じられました。  そしてこの物語で最もいいなと思わせてくれるのは、前にも書いたけどキャラクターの 動きや仕草とか様々な想いをない交ぜにした心理描写。特にレレナとマリの交錯する気持 ちと、シギとクイナの過去の記憶から巡る気持ちは凄くうまく描けてたと思います(まあ シギとクイナは救われる結末であって欲しかったというのが正直な所なのですが。  次巻以降もこの面白さを維持しつつ、更にもっと楽しめる内容を期待してみたいです。  既刊感想:
2002/07/17(水)A/Bエクストリーム ニコラウスの仮面
(刊行年月 H14.07)★★★★ [著者:高橋弥七郎/イラスト:金田榮路/メディアワークス 電撃文庫]  シリーズ第2巻。今回も、あとがきで担当さん曰く「これがないと読者は全然分からん」 に思わず納得な巻末設定資料集付き(笑)。この作品の専門用語の敷居はかなり高いかな と感じられ、組織はまだしも慣れるまでどうしても難解さが拭い切れないのはメカニック と武装関係でしょうかね。だからそれと連鎖するように、アクションシーンの描写もじっ くり読んで頭の中に叩き込まないと、理解して想像を浮かべるのがやや難しいかなと。  しかしそれでも読み進める内に、作品の持ち味である深く詳細に練り込まれた設定と世 界観、そしてどうしようもなく格好良くて人間臭いキャラクター達によっていつの間にか 引き込まれてしまってるから面白い。総合的な完成度の高さは前巻同様という印象でした。  ぶっちゃけ専門用語の羅列に慣れてしまえば、メインは派手なドンパチアクションだし やってる事は単純明快なので実は非常に分かり易い展開なんじゃないかなとも思います(笑)。  今回は駆除屋の本業である「グレムリン」と呼ばれる巨大生物退治ではなく、(表向き は)ディビジョン商会の資金強奪を巡る組織戦と言った所からして、<ゾーン>内部を舞台 にグレムリン退治をしてた前巻とはまた趣きの異なる内容。分断された2方向で展開され る作戦やアクションが面白いです。一応ディビジョン商会の地下社屋もゾーン内部なんだ けど、もっと閉鎖的な戦闘で時間制限を設けた「深く静かに進行」してゆくような内容も 良かった。その時間制限も、実は社屋崩壊までのリミットではなくて違う意味を持たせて る所がうまいよな〜と唸らされました。これに限らず、さり気ない伏線の張り方と後に 「あ、なるほど!」と思わせる明かし方がとにかく絶妙。  印象に残ったシーンとしては敵対する側であるニコル達の心情描写の全て……でしょう かね。正直救われない結末を想定していたので、特に4人で肩を並べて『普通の生活』が 待つ未来へと歩むラストシーンは凄く良かったです。  あとは終盤の「王者の一撃必殺(ロイヤルストレートフラッシュ)」の実態にも度肝を 抜かれましたが、こういうスケールの大きな事を平然とやってのける奴らが本当に誰も彼 も魅力に溢れていて大好きです。専門分野プロフェッショナルが揃っていながらミスもす るし危機にも陥る。だけどどこか余裕に満ちていて颯爽と任務をこなし、そのくせ休暇中 なんかはひどく所帯じみている姿を見せたり。結局本作で一番惹かれてしまう所はここな んだと思います。そりゃもう専門用語も何のそので。  既刊感想:
CASE314−[エンペラー] 2002/07/16(火)レベリオン 楽園に紅き翼の詩を
(刊行年月 H14.07)★★★★ [著者:三雲岳斗/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]  シリーズ最終巻。好きな作品なので読んでいる時の気持ちとしては「まだ読み終わらせ たくない」と終盤でページをめくる手が鈍ったりもして、大きな部分としては登場キャラ クターの魅力に惹かれた物語。こんな風に感慨深い想いで完結編に臨むというのも結構久 し振りだったかも知れないです。内容としては前巻からの心配事が予想通りだった所や不 満だった所、嬉しかった所や良かった所など抱いた感想はホントに様々でしたが、シリー ズ全体を通してのこの最終巻の結末には満足でした。以下ネタバレ反転。  前巻からの心配事ってのは、多量に持ち越されたと思えた書かれるべき事柄を果たして 残りたった1冊で消化し切れるのか? というものだったんですが……これは明らかに詰 め込み過ぎと感じたので、どうしても急ぎ足な展開になってしまったのは勿体無い。  これだけ密度の濃い内容なら2冊分で書いて欲しかったかなと。その辺から引っ掛かっ たのがキャラクターの描写でハッキリ言って全然足りてない。  特に敵対するユルキナと真澄美、それから結局単なるヤラレ役だったのかーと突っ込み たくなった(笑)最終巻にして初登場で散って行った3人とか、重要視され続けたわりに 最後はやけにあっさり纏まってしまったYの事とか、物語立ち上げた時から決まってたの なら別だけど如何にも取って付けたような悠の再登場など(悠の事はもっと前から何かし らの兆しみたいなのを感じられるシーンがあったら良かったのになぁ……)。もしこれが 2冊分の文章量でじっくり描かれていたならば、おそらく詰め込み過ぎなのも描写不足な のも解消されてたんではないかなと。  ユルキナが何故をYを欲するのかに関して、語られそうで語られず終盤まで引っ張りま くる所はいかにも三雲さんらしい書き方だなぁと思いながら(笑)、伏線を解き明かし、 ひとつひとつにケリをつけてしっかり纏めようとしてる気概が感じられる所にケチをつけ てるようで何ですが、やはりぎゅうぎゅうな内容だったのは惜しいなという気持ちです。  しかし不満の反対も当然存在していて、良かった所を挙げるならクライマックスシーン に相応しい、これでもかと言わんばかりに繰り広げられるトランスジェニック能力を駆使 した戦闘シーンの数々。戦いに関してはシリーズ通して面白かったと言える要素で、今回 はもう特に戦いがメインだという感じの展開でお腹一杯になりました。  んで嬉しかったのは香澄は恭介に、恭介は萌恵に「好き」だと自分の気持ちをしっかり 声に出して伝えた事。極限状態の中でとか最後の戦いに赴く前とか、告白するにはお約束 っぽいシーンだったけどそれぞれ相手を想う言葉にじんわりときました。  最後に満足だった所。個人的には不満派の声を結構聞いているラストシーンの恭介と香 澄です。何でかって言うと、自分なりにシリーズ通して読んで掴んだ恭介と香澄の“らし さ”が一番良い形で描かれていたと思ったから。この2人だったら今その場所でくっ付い てしまうのは簡単だけど、それだとなんだからしくないような気がして。互いに想いつつ それでも今は自分の目指すべき道を進んでこそ恭介らしく、そして香澄らしいなと。読み 手の願望よりもキャラクターのらしさが表れていた点が満足だったというわけです。『友 人同士』ってのは発展途上の表現と解釈。まあ2人ともまだ10代の若さだし、為すべき 事を果たして行けば進展する要素なんてきっと未来には幾らでも転がってるはず……と期 待しつつ想像を巡らせてみるのもまた面白いのかもしれない。  ……というわけで番外編書いてください(笑)。  既刊感想:
放課後の殺戮者       弑殺校庭園       炎を背負う少年たち       彼女のいない教室 2002/07/14(日)ばいおれんす☆まじかる! 〜核の花咲く日曜日
(刊行年月 H14.07)★★★★ [著者:林トモアキ/イラスト:愛媛みかん/角川書店 角川スニーカー文庫]  シリーズ第3巻。緋奈の色恋沙汰が控え目だったので微かに下がり気味(笑)。全体的 な盛り上がりも前回までよりちょっと弱いかなぁと感じたのですが、もしかして緋奈や由 香利がミスターBの手であっさりさらわれたりしてたからだろか? ラスト付近で今後の 展開として伏線らしきものが張られてる辺り中継ぎ的な話という印象を受けました。  それでもキャラクターの魅力で物語を引っ張るという見せ方は秀逸で、ボケと笑いは相 変わらず面白く(脱衣麻雀での清次とか車通なみゅうちゃんとか)、直情的な信念剥き出 しに繰り出される緋奈の暴力もクライマックスシーンではスカッとさせてくれます。  今回はどちらかと言えば、緋奈達よりも敵対するミスターBと愉快な部下達の方が興味 ありで気になる展開だったかも。現在の魔族の力を得たくそじじいからは想像もつかない 若かりし頃のシリアスなミスターBの姿や、そんな過去と合わせて自らを『B』と名乗る その理由などが明かされていてなるほど〜という思いでした。未だ素性が謎なホワイトの 思わせ振りな言動も聖四天マリアクレセルが緋奈やBに介入して来てるのも気になる所で、 この辺は次巻以降の繋がりとして描かれてるようだから今から続きが待ち遠しい。  緋奈達側にも触れると、肝心なシーンは彼女が決めてるけど見せ場が多いのは表紙も飾 ってる由香利の方。周りを巻き込む性質は今回も健在だったり(笑)。テトラと心を通わ せたい気持ちが無茶な行動として表れている終盤のシーンは特に良かったです。  あとは本当の実力(合気道の有段者とか)がバレそうになると、緋奈でさえも顔で笑っ て力で黙らせてしまう由香利こそがやはり作中最強だろうと再認識させられました(^^;)。  既刊感想:
〜九重第二の魔法少女       〜恋の呪文は修羅の道 2002/07/13(土)ブロークン・フィスト2 傷だらけの遠い明日
(刊行年月 H14.06)★★★☆ [著者:深見真/イラスト:桐嶋たける/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  実行可能かと言われると今回もちと微妙なんじゃないかなぁ……なんて思ってしまった 殺人事件のトリックですが、前巻に比べるとまだ出来そうな可能性は高かったかも。  格闘技というカテゴリーにちゃんと意味を持たせて事件に絡めてる辺りは、この作品な らではの持ち味としてうまく書かれています。この格闘技の部分が何の関わりも意味も無 かったりすると突っ込みバシバシになる所だったのですが(笑)。  ただ、事件の推理以上に格闘技を用いた戦闘シーンに力を入れてるような気がして、決 してミステリー部分が弱いわけじゃないし話の組み立てもうまさを感じさせてくれるので すが、読み手がじっくり考えてトリックや真犯人を解き明かそうとするには少々物足りな さがあるかもしれないと。何せ動きの激しい格闘シーンが多いので、じっくり腰を据えて 推理ってな風にはなり難いんですよね。まあ私の読み方だと、自分で推理するのを楽しむ より登場人物が謎を解き明かす過程を読む事を楽しんでいて推理する部分で物足りなさと いうのはあまり感じなかったので、この辺は読み方次第かもしれない。  面白いのは1冊ごとに起こる事件と並行して、この物語の根底に流れる核心とも言える 武田新陰流と闘二の過去が随所に描かれている点。今後の方向性を示してるような感じで、 普通に?起こる事件とは別にどう展開してゆくのかなぁと気になりつつも楽しみな所です。  あとは秋楽の成長物語でもあるそうな。今でも充分強いんだけど、キレたモードの闘二 や彼と相対する超人並みの人達と比べると実力が劣って見えるのは仕方なく、だからこそ 一層強くなって闘二が安心して委ねられる存在となって欲しいです。端から誰が見てもそ うなのに、恋人同士と指摘されて焦って否定する秋楽も初々しくて良い感じ(笑)。  既刊感想:
2002/07/12(金)ブロークン・フィスト 戦う少女と残酷な少年
(刊行年月 H14.01)★★★☆ [著者:深見真/イラスト:桐嶋たける/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  第1回富士見ヤングミステリー大賞受賞作。  読んでみてさすが受賞作と言うのがミステリーとしてのストーリーの組み立ての上手さ を感じられた事。事件発生の発端から推理過程を経て真相を掴み謎解きで事件解決の結末 に至るまで、読み手に興味を持たせて引き込んで行く作りとしては、似非とかもどきとか が氾濫する(笑)富士見ミステリーの中でも珍しく正統派なミステリー小説として仕上が っていたのではないかなという印象でした。  ただ、その中でむ〜んと唸ってしまったのが「そんなんありか!?」と色んな意味で呆 然となった密室殺人のトリック。おおよそ小説の中の殺人事件ってのは当然フィクション でありながら、殺人トリックに関してもそれを推理して解く事に関しても、実現可能なよ うに書かれているからこそ現実味が増して面白く読める。そう考えるとこの作品の密室殺 人トリックは実現可能かそうでないかの線引きがかなり微妙なのでなぁ……。  でも作中の殺人事件だって架空の出来事なんだから、そのトリックもたとえ現実的に無 理があっても嘘臭くてもいいんじゃないか? と強引に納得してる部分もありますが(^^;)。  それよりも空手を始めとした格闘技の要素を事件の真相と結び付けてる辺りが新鮮であ ってこの作品の一番の良さと“ウリ”ではないだろうかと思いました。空手に関する造詣 は深いようで戦いのシーンも細かい動きまでしっかり描かれてるし、この組み合わせの斬 新さが受賞の決め手のひとつになったのかもと(勝手な推測だけれども)。  視点はヒロイン羽山秋楽の一人称で、活発そうな印象なんだけど文体だとわりと冷静に 物事を見定められるという所が彼女の性格としてよく表れている。実際謎解きしてるのは 闘二だけど、彼本人視点よりも秋楽の第三者視点の方が広範囲に状況を見渡せるという点 でより適していたかなと言うのが個人的見解。  次もまたトンデモトリックなのか気になる所ですが(笑)、今回あまり明かされなかっ た闘二の身辺や過去の事などは興味があるので、そこら辺がもっと見たいかも。
2002/07/11(木)レブリガン・ド・レコール 今宵、すべての悪党たちに
(刊行年月 H14.06)★★★ [著者:日昌晶/イラスト:篁龍士/富士見書房 富士見ミステリー文庫]  まず先に立ったのは、随分色々と詳細に深い所まで資料を集めてストーリーに絡めてる なぁという印象。架空ではあるけど聖櫻館学園も内部の細かい所まで設定されてるし、そ の学園が建つ舞台となっている新宿区戸山は実在の地名で、周辺の様子など実際に調べな けりゃ分からない部分までしっかり描かれている。  事件に関係した徳川家の事や風水・陰陽なども同様で、これは知識がないと書けないだ ろうなと。ただ、あまりに深過ぎるマニアックな域まで達してしまうと、読んでる方はち ょっと付いて行けなくて置いてけぼりを喰らってしまう。個人的にそういう部分が幾つか あったのも確か。  最もそう感じたのは暗号解読の部分で、この物語は読み手に推理させるような書き方じ ゃなくて登場人物の推理を追って読ませる書き方だから。というのも解読法が「んなもん 考えたって分からんわ」てな具合なのですね(^^;)。普通は知識無いと絶対解けないと 思うし、キャラクター(解読においては鞘香)がいわゆるマニアックと感じられた部分を 説明して解き明かしてるから、読んでる方は「ああ、そうなんだ〜」と言われてようやく 追い付けたという風になってしまう。この辺、せめて暗号解読だけでも読み手が考えて答 えを導き出せるような展開だったらもっと面白かったんだけどな……という思いです。  しかし、あとがきの「ミステリー小説じゃないのにミステリー文庫から刊行されている というところが<ミステリー>ということで」ってアンタ……作者が自らそれ言っちゃイカ ンだろ(笑)。まあその通りだと頷けてしまうのが何か間違ってる気もするけど、それで もこの作品は謎解きやってるだけ枠から外れてるって程ではないと思いますが。  メンバー4人の立ち回りはそれぞれ役割分担がきちっとしてて楽しめたので、その点が 一番良かったかな? 活躍に大分差はあったけど(梨紗の出番が少な過ぎなのが不満(笑))


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