NOVEL REVIEW
<2003年02月[後半]>
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02/28 『銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!2』 著者:あらいりゅうじ/電撃文庫
02/27 『銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!』 著者:あらいりゅうじ/電撃文庫
02/26 『スクライド・アフター』 著者:兵頭一歩/電撃文庫
02/24 『12月のベロニカ』 著者:貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫


2003/02/28(金)銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!2

(刊行年月 H14.07)★★★☆ [著者:あらいりゅうじ/イラスト:みさくらなんこつ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  基本的にやってる事が前巻と変わらず宙の湯絡みのドタバタ騒ぎか学校関連行事でのド タバタ騒ぎかなので、内容に深く踏み込んでまで書く事がないような気も……。  今回からルカのライバル?らしき新キャラ・サエコさん登場。銀河の大スターで我侭振 舞いの自己中なお姉さまタイプで、きっとこういうキャラが出てくるだろうなーという予 想と期待を裏切らないお約束ぶりも健在。当然のように三助にベタ惚れになってしまうし。  ただサエコさんが三助を好きになった理由ってのが、知れるまで「なんでかな?」と考 えさせられてしまって普通とはちょっと異なっていたのが良かったかも。宇宙人ならでは と言える惚れた理由から、三助(地球人)との感性の違いが見れたような感じ。  今回はサエコさんのキャラクターを充分に見せつける為に費やされたような1冊。だか ら彼女の性格や言動なんかは随分際立っていて、その点を見せるのには成功してたかなと 思います。が、三つ巴三助争奪戦になるにはルカと夕子の心情描写がやや弱い。  ルカの場合はまだ三助に対して曖昧な部分が多いからどうにもならずで今後に期待する として、夕子がもっと積極的になってくれたらなぁ。三助の焦り具合も増してそれ見てル カも気持ちを揺さぶられたりとかで楽しくなりそうなんだけど。  既刊感想: 2003/02/27(木)銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!
(刊行年月 H13.11)★★★☆ [著者:あらいりゅうじ/イラスト:みさくらなんこつ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  キャラクターもストーリー展開も、とにかくべたべたでこてこてなお約束満載の典型的 ラブコメディ(SF込み)としか言いようがないのです。けど個人的にはこういうストー リーで見せるのではなく、キャラの個性を目一杯押し出して見せるタイプのドタバタなノ リは結構好きなので、キャラが立ってる分だけベタな展開もそれ程気にならなかった。  まあこのテの主人公ってのは、容姿も成績も平々凡々でへなちょこだったり気弱だった り押しに弱かったりバカ正直だったりお人好しだったり……本編主人公の三助もそういう 例に漏れずのお約束を地でゆくキャラクター。  それで何故か女の子が次々と好意を抱いて寄って来て、起こったトラブルに抗えず巻き 込まれてしまい、自分が好きな女の子=ヒロイン以外の女の子の気持ちにはとことん鈍感 だったり……なんてのもお約束なんだけど、ここまでやってくれると逆に潔くて清々しさ さえ感じてしまう。何故宇宙人の観光旅館なのか? とか何故銭湯なのか? など一々突 っ込み入れたくなるような設定も、結局気にするだけ無駄でこの話の中では大した問題で はない些細な事なのかもしれない。  ちょっと違うのはヒロインのルカが宇宙人である為、地球人との感覚のズレから彼女が 三助を好きかどうかまだ曖昧だという点。好きは好きなんだけど現段階では友人止まりの 好意と言った所で、きっとこれから恋心が芽生えてくるに違いないと予想してますが。  ただ、夕子が何で三助にベタ惚れなのかがよく分からん。一目惚れなら理由はないだろ うけどルカよりは全然付き合い長いわけだし、よりにもよってこんな男の何処に取柄を見 出してしまったのやら。夕子が三助を好きになってしまった過去のエピソードがもしある としたらちょっと読んでみたいかも。 2003/02/26(水)スクライド・アフター
(刊行年月 H14.11)★★★☆ [著者:兵頭一歩/イラスト:平井久司/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  同名アニメの小説版。前巻の『新しき盟約』がアニメ最終話以降(と言うよりカズマと 劉鳳のラストバトル後と時が流れたラストシーンを繋ぐ空白の時)の外伝的な物語とする なら、今回は最終話からの“続編”という位置付けの物語だそうな。  読了した感じではアニメ見てない人が読んだら確実に置いてけぼり喰らうような内容だ ったで、ハッキリとアニメ視聴者向けと線引きが為されているのかなと。だから逆に私も 含めてだけど、特にアニメでのキャラやアルターの知識を持って読書に臨んだ場合、思わ ずニヤリとさせられるシーンが結構あるでしょうね。  カズマを『カズヤ』と呼ぶ男の存在なんかがそうだったし、アントワープの記憶を具現 化するアルター能力は一種のファンサービスだったんじゃないだろか? と思ってしまい ました(何かいつかどっかで見たような能力がちらほらと)  ストーリーは小説版のオリジナルですが、カズマと劉鳳の因縁が絡んだ内容としてはま ずまずだったし、オリジナルキャラもしっかり立っていて世界観も雰囲気出てるなと感じ られたので良かったです。とりあえず今回はカズマ中心って事で、「相変わらずだよな〜」 と言いたくなってしまった彼の性格行動は健在なようで何より。こう喉の渇きで餓えた獣 が、獲物を引き裂いて満足感を得ようとする直情的な衝動が如何にもカズマらしい。次は 彼の渇きを潤せる唯一存在、劉鳳がメインのようなのでどうなるのか続きが気になる所。  あとがきの『びっくりするぐらいの事』がなけりゃ良いけど……。  既刊感想:スクライド 新しき盟約 2003/02/24(月)12月のベロニカ
(刊行年月 H15.01)★★★★ [著者:貴子潤一郎/イラスト:ともぞ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  第14回ファンタジア長編小説大賞『大賞』受賞作。  きっと読者の多くがこういう作品に期待して求めるものって、騎士が命を賭けて愛する 幼馴染みの少女を守り抜くというラブロマンスみたいなものじゃないかな? ってふと思 ったんですけど、それだと方々で見た感じちょっと辛口ではないだろかと思ってしまった 感想・評価にも納得。  以下ネタバレ反転  何せそれがメインで描かれているわけではないものだから、やっぱりどうしても作中で 主人公の騎士とベロニカとの関係を描く部分がハッキリと弱い。だから読んでいてそこに 期待を寄せた場合、この物語から掴み取ったものとしてはどこか物足りなかったり、肩透 かしを食らって期待外れとなってしまうのかも。個人的にも騎士とベロニカの物語として 感情の深い描写などを期待してたので、それに関してはちょっと弱いかなという印象。  そもそも『ベロニカ』という象徴からしてどことなく掘り下げが足らない気がしたし、 シーゼルもアマンダも一歩身を引いてる感じで物語の深い所まで突っ込んでこないので明 らかに『象徴』だけの脇役扱いだし、ルグナスとトゼリアのベロニカを巡る確執も描写を 重ねてゆけばもっと面白いものになっていたかもしれない。  ただメインとなっているのは構成面の大仕掛けからも言える事だけれど、フレイルとハ キュリーの対比を描く部分。それは多分騎士とベロニカの関係よりも、他に色々足りない と感じられた部分をあえて犠牲にしても、著者が読み手に一番見せたかったものなんじゃ ないだろうかと思いました。端的には一人称で交互に語るハキュリーとフレイル――この 過去と現在で全く同じ道を歩む二人の姿を追う事に全てを賭けてるような、他をおざなり にしてまで『これを描きたい!』という気概が伝わってきました。  確かに読んでいてあれこれ突っ込みたい箇所はあったのですが、もしこれが普通に騎士 とベロニカとの関係をメインに描いたものだったとしたら、果たして大賞に選出されたか どうか……と考えると、それこそ単に既存の類型的な物語と取られて佳作さえ受賞出来な かったのではないかという気もしました。  私はこう読んでいて自然に惹き込まれてしまう感覚だったので、文章表現力に関しては 文句なく高いものを感じました。それにプラスして類型的になりそうな物語に独自の味付 けをして新しい面白さを引き立てる……作品の中でそういう挑戦意欲みたいなものを感じ られたのが何よりも良かった。久々の大賞受賞者なので今後育って行って欲しいですね。


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