NOVEL REVIEW
<2004年07月[前半]>
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07/10 『マリア様がみてる チャオ ソレッラ!』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
07/10 『緑のアルダ 旅立ちの丘』 著者:榎木洋子/コバルト文庫
07/08 『敵だらけのビューティー』 著者:久藤冬貴/コバルト文庫
07/07 『ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
07/06 『ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック!?』 著者:新井輝/富士見ミステリー文庫
07/06 『リバーズ・エンド after days』 著者:橋本紡/電撃文庫


2004/07/10(土)マリア様がみてる チャオ ソレッラ!

(刊行年月 2004.04)★★★☆ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第17巻。リリアン2年生メンバーの修学旅行話。あとがきにあるこのエピソー ドを執筆する際の著者の取材旅行体験記を、そのまま祐巳、由乃、志摩子達の行動に当て はめて描いているという印象だったかな。今回も体育祭とバラエティギフトに引き続き、 祐巳と由乃の妹選び前の箸休めと言った所。そろそろ秋イベントのネタも描き尽したよう なので、次辺りから長らくお待たせしました〜ってな具合で劇的に展開して欲しい。  修学旅行でのイタリア巡りの状況、正直どこ行っても現地のイメージがサッパリ頭に浮 かばないもんで、あんまり乗り易い感じとは言えなかった(修学旅行が海外って時点で違 いを感じてしまう辺りがちょっと悲しい……)。どの観光スポットを祐巳達が辿ったのか、 随時ルートをチェック出来るような地図でも載せてくれてたら良かったのになと。  ただ大きな事柄ばかりではないんだけど読んでいて楽しめた収穫はそれなりに。とにか くやっぱりロサ・カニーナこと蟹名静さまと唐突に再会出来た事が、祐巳にとってもそう だし多分読み手にとっても懐かくて嬉しい(彼女のペンフレンドの相手を知った時は予想 外でちょっと驚いた)。ゆっくりした時間も取れずにお別れとなってしまったのは惜しい けれど、それはそれで旅行中のささやかな出逢いという雰囲気がうまく出ていたと思う。  本当は佐藤聖さまの行方をメインに置きながら引っ張って行く展開を望んでたんだけど、 そこが弱い上に結局の所真相はどうだったのか曖昧に終わっているのは残念。それなりに 想像はつくにしても、そこら辺はもうちょっと明確な事実を描いてみせて欲しかった。  終始賑やかな雰囲気の中で、ラストの『紅薔薇の蕾の不在』はじんわりと心に染みるエ ピソード。祐巳絡みで因縁のある2人の空気はギシギシ、でもそれは次第に解けて自然と 優しく漂う空気に変わってました。注目すべきは可南子の発言。キッパリ「祐巳の妹には ならない」って断言してるよこの娘。いや本当に妹選びの段階が待ち遠しくなって来た。  既刊感想:マリア様がみてる           黄薔薇革命       いばらの森              ロサ・カニーナ       ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)         いとしき歳月(後編)       チェリーブロッサム          レイニーブルー       パラソルをさして           子羊たちの休暇                  真夏の一ページ            涼風さつさつ       レディ、GO!            バラエティギフト 2004/07/10(土)緑のアルダ 旅立ちの丘
(刊行年月 H16.05)★★★★ [著者:榎木洋子/イラスト:唯月一/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第6巻。4巻目から続いていた王都ジャイバーラル編も今回で終結。しかし進 行状況としてはまだまだ全然進んでおらず、これでようやくアルダ・ココが守龍を呼ぶ者 を手繰り寄せて、守龍探しへ向けてのスタートラインに立った所。ただ、このシリーズの 1巻当たりの容量はそれ程多くないので、6巻まで読んでみても密度的にあまりこれまで が長かったとか時間が掛かったとかいう印象はないです。まあそれでも「やっとか〜」と 思わず言いたくなったりはしたけれど。少なくとも巻数一桁ではとても終わらなさそう。  前巻ラストのアルダ・ココの占いで、いよいよコーサ国に守龍を呼ぶものが指し示され たけれども、冷静に考えてみればそれでいきなりさっさと王都に別れを告げて旅立てる筈 もなく。その辺りの色々な残されたごたごたをスッキリ整理して片付けて、多くの者に充 分納得させた上でアナンシア姫が守龍探しの旅の出立するまでを描いているのが今回。  アナンシアが選ばれた事、それと同時に一気に加速してしまった“誰が次期王位継承者 に相応しいか?”の話題。この2つの事柄を主軸に、騒然となりながらも様々な思惑が交 錯する展開はなかなか楽しめました。陰謀そのものについては実に分かり易いですけど。  ん〜描かれている印象で、私は最も王位に相応しそうなのはルダート王子かなと思った んだけど。この顛末は彼にとって実に不運というのか、とばっちりを食ってしまっただけ の損な役回り。もっとも、拘束されたくらいでそう簡単に凹んで落ちぶれてしまう様なや わな性格とも思えないので、今後物語に影響を与える存在には充分なり得そう。母親のデ ムナ夫人も捕われの魔法使いを解き放つとか、不穏な動きを見せているようだし……。  何はともあれ次巻から本当の守龍探しの旅の始まり。これまでの2人と1匹にアナンシ アが加わる事で、果たして何かしらの変化が見られるのかどうか。あと何度も助けられな がら、素性がイマイチハッキリしてないパンポール一座の事がちょっと気になる。  既刊感想:石占の娘         荒れ野の星       千年の隠者        謀略の都       虹の白夜 2004/07/08(木)敵だらけのビューティー
(刊行年月 H16.06)★★★★ [著者:久藤冬貴/イラスト:有吉望/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第2巻。前巻を読んだ時点で続編出るかどうかは半々な手応えだったのだけど、 とりわけキャラクターの性格を充分に活かした描写が好みで、あれば読みたいと思ってた ので続いて良かったなーと。今回も少数精鋭柔道部中心の学園アクションコメディ+極め て軽いミステリー仕立て。同著者の他作品でもよくそう感じてたけど、相変わらずドタバ タ騒動にちょっとした謎を含ませる展開で進めてゆくのが好きな方。いつも軽過ぎて手応 え弱い辺りが微妙ながら、キャラの魅力で不足分をうまくカバーしているのも同様。  謎解き要素が軽度なのは一緒なので、真犯人はピンと来れば結構早い段階で「もしかし てこのキャラがそうかな?」と嗅ぎ分けられる筈。まあ最も怪しい奴ほど実は別の事情が あったりとか。ミスリード役が割と頑張って終盤までシロと特定させず曖昧に演じてくれ ているので、これまでの物語と比較すると数段面白さが感じられたかなと。  それに加えて主人公の光を抑えて今回メインを張っている、ゴスロリ少女・果穂の描き 方が素晴らしく良かった事。大好きなのは光(注:女の子です)だけの光一筋、極度の男 嫌いで険があって棘もある他者を見下したような物言い、本人が意識してなくても辛辣な 発言が相手を傷付け知らず知らずに恨み妬みを買う事多数――これが果穂の一面。  しかしながら、本作で詳細に描かれている果穂の本質に触れてみると、これまで反感を 買ってしまう部分がちょっと違って見えて来る。普段の振る舞いからしてかなり意外に思 えたのだけれど、所謂彼女は『努力型の天才』なんですよね。自身の輝きを保つ為ならど んな努力も厭わない、そういうのを見せ付けられるとハッキリキッパリ言い過ぎな攻撃的 な言葉にも納得が行くというもの。ま、それでも好きになれるかどうかは別問題だけれど も、好感度が上方修正されたのは彼女の魅力の引き出し方が上手かったからと思う。  既刊感想:ご機嫌ななめのファイトガール 2004/07/07(水)ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?
(刊行年月 H16.06)★★★★ [著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  今回も数年後の未来で健一と鈴璃が語らうプロローグから始まり、そこへ至るまでの道 程を本編で徐々に描いてゆくようなスタイル。ここで面白いなと思うのは、既にプロロー グの会話を通して幾つか決定付けられている事柄があるという点。例えば現在本編の13 階の空間で共同生活を送っているメンバーは、いずれ退室しそれぞれ別の道を歩む事とな る。例えば健一は千夜子との付き合いを正式に続けている状況にある。ただしその過程で 複数の女の子と肉体関係を持つ事にもなる。2巻時点では綾、蛍子、冴子の3人が判明し ているけれど、会話を聞いてる限りとてもそれだけで済んでいるとは思えない。  とまあ先に未来を突きつけられてしまうと、俄然健一が女の子達との関係を経て辿って 来た道程が気になってしまうわけで、そういう興味の引かせ方ってのがうまいなと思う。  やはり13階の不可思議空に触れる気はあんまりなさそうで。本編はと言うと、前巻ラ ストで手を差し伸べたクラスメイトの冴子とヤってしまうまでの状況を描いたもの。また 「今度は4回でしかも更にその後再燃して朝までしっぽりかよ」とか、そんなとこばっか り印象にしまうのもなんだかな〜とか。この冴子編は次巻へ続くようで、確かにまだどう して冴子が“しないと寝れない”のか、とか彼女の本質に迫るまでには至っていない。  現在時点で顔合わせのない綾と蛍子の過去の関係を描いたエピローグは、素直に面白い エピソードと思った。どうしてこの場所にこれが挿入されたかってのは……少し勘繰って しまったんだけど特に深い意味はないのかな。もし間に健一を挟んで状況を知った上で2 人が再会した場合、この過去の出来事が影響してしまうのどうか。もっともまだ綾と蛍子 が出逢うかどうかも全然分からないけど。この辺りちょっと楽しみで気になる。  既刊感想:#1 2004/07/06(火)ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック!?
(刊行年月 H15.09)★★★★ [著者:新井輝/イラスト:さっち/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  この物語で多分最初に意識が向かう謎ってのは、『12階建てなのにどうして13階が あるのか?』とか『その不可思議な13階の鍵が何故健一の手に?』だと思う(私はそう だった)のだけれど、なんか気がついたらそんなのどーでも良くなってた。頭の中に叩き 付けられたのが“健一は初めてのエッチで5回ヤった”上に“衝動で実姉ともヤった”じ ゃどうしようもないな。そりゃ13階の不可思議空間や鍵の事とか、千夜子に告白されて 『期間限定お試し恋人』関係になった事なんて奇麗サッパリ吹っ飛ぶってもんです。  度肝を抜かれたという意味では完全にしてやられた。18禁ゲームノベルとかじゃなく てそういう事実がしっかり描かれている事に驚いた。しかも明確に接し方が違って見えた 健一の女の子達とのコミュニケーションがなかなか面白く興味深く描かれている。  まあ13階にある部屋の謎とかにはあまり念入りに接して行かないんじゃないかなぁ、 という気もしているので深く突っ込む気も起こらないのが正直な所。どうやら数年経った 状況のプロローグに帰結する物語のようなので、果たしてある程度決定付けられている未 来に向かい健一がどんな風に女の子達と接してゆくだろうか? 或いは健一が誰と何時ど んな状況で何回ヤってしまうのか? の方に想像を巡らせていた方が断然楽しそう。 2004/07/06(火)リバーズ・エンド after days
(刊行年月 2004.06)★★★★ [著者:橋本紡/イラスト:高野音彦/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  少年少女達の完結後のエピソード。本編みたく余計に考えさせられる謎が混在しておら ず、彼等彼女等の感情の機微が素直に心に染み入る読書感覚。いつまでも謎を残しながら 引っ張り続けていてスッキリしなかった本編と比べると、嬉しくてにやけ顔になってしま うくらい非常に気持ちがいい。それだけ繊細な心が透き通った奇麗さで映ってました。  解放されてスクールに居た頃より幸せな道を辿れているかと言えばそうでもなく、むし ろ傷痕やわだかまりを背負ったまま未だ振り切れないでいる姿の方が目立つ。特に七海は 拓己への想いが断ち切れない限り新しい一歩を踏み出せなさそうで、拓己には唯がいるか ら報われる事はないと分かっているのに、それでもどうしても忘れる事が出来ずに身を切 る姿がまた痛々しくて。この後日談は再会する為に皆が集まるまでを描いているので、そ の先に拓己と顔を合わせた七海がどんな想いを抱いたか? というのは、もうこれで本当 に幕引きだろうから残念ながら分からない。あとはあれこれ想像しながら楽んでみます。  私は七海が好きなのでこんな風に書いてますが、直人のもやもやとした気持も流れに弥 生の逆らおうとしない諦めのような気持も拓己と唯のスクールでの触れ合いも、全部凄く いい印象で残ってます。欲を言えば全員分の後日エピソードを読んでみたかった事。繋ぎ 役に回されてしまった茂と孝弘や逃亡中の様子が知れなかった遙と伊地知とか。  でも、結局最後は拓己と唯の携帯メールのやり取りを眺めて満足してました。長い道程 を逆走してふと思い返してみて、そういえばこの携帯メールが2人の原点だったなと。  既刊感想:


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