NOVEL REVIEW
<2005年01月[前半]>
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01/04 『シャンク!! ザ・レイトストーリー VOL.2』 著者:秋田禎信/角川スニーカー文庫
01/03 『マリア様がみてる イン ライブラリー』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
01/03 『マリア様がみてる 特別でないただの一日』 著者:今野緒雪/コバルト文庫
01/03 『マリア様がみてる プレミアムブック』 著者:今野緒雪・ひびき玲音 with山百合会/コバルト文庫
01/02 『緑のアルダ 熱砂の宮殿』 著者:榎木洋子/コバルト文庫
01/01 『緑のアルダ 蒼い雪原』 著者:榎木洋子/コバルト文庫


2005/01/04(火)シャンク!! ザ・レイトストーリー VOL.2

(刊行年月 H17.01)★★★☆ [著者:秋田禎信/イラスト:依澄れい/角川書店 角川スニーカー文庫]→【
bk1】  キャラクターは馬鹿やってても地の文章は割と硬め。調子に乗って文章が悪乗りしてし まうと中身の軽いコメディになるんだけれど、これはごく真面目にお馬鹿な行為を描いて いるような手応え。文章的にはどうしてもシリアス調が合いそうな気がしてるのは前巻と 一緒で、実際にはコメディやってる内容とのミスマッチが合うか合わないかは好みにもよ るかと思う。私の場合はこんな印象だから、シリアスになる部分だけはピッタリ合わさっ て引かれるんだけど、ノリが軽くなるとやや噛み合せがイマイチとなってしまう。  ただ、問題は文章関係の事よりも、作中でシャンクの行動に何の目的意識も感じられな い事の方が大きい。幾つかの謎は含みながら、どうもゴールが定められておらず無軌道に 突っ走っているだけのような印象なのですよね。要は“秘儀盗賊”の肩書きで、単純に違 法魔法使いをとっ捕まえて報酬を得るだけの行動を繰り返されるなら飽きも早いと。いく らあの手この手で工夫を凝らそうと、基本的な流れがいつも「また同じ事やってるな〜」 と感じてしまうのは拙いかも。元々連載仕様だから歯切れが悪いのは仕方ないのか?  でも今回最後の『ザ・シャンクストーリー』で多少は持ち直し。前述のシャンクが違法 魔法使いと関わろうとする目的やら理由やらが明らかにされたから。これならシャンクの 行動理念にも納得がゆくというもの。物語を終わらせる為に連載から書き下ろしに変更す るようなので、その為の転換点という意味でシャンクの過去と現在の目的を明らかにした のかも知れない。シアシスターナの為に不死秘宝の鍵を握る十二人のイモータルとの接触 を図る――このシャンクの目的が明確になっただけでも続きが俄然楽しみになって来た。  ……どむーんの言動は相変わらず訳分からんので頭痛の種だったりするのだけれど。  既刊感想:VOL.1 2005/01/03(月)マリア様がみてる イン ライブラリー
(刊行年月 2005.01)★★★☆ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第19巻。2004年に雑誌『cobalt』で掲載したものの間に、表題作である『イン ライブラリー』を挟んで纏めた短編集。これが本編から離れてると今までの流れとは別だ と割り切って読めるんだけど、実際には学園祭直後という設定なもんだから、祐巳の妹選 び云々で更に焦らされる羽目に。短編集がメインなのでそれ程深く突っ込んだシーンはな いけれど、前巻ああいう終り方してるので足止め食らってしまった感は少なからずある。  まあそういきり立たずに少しは深呼吸して一息入れろって事だろう、と勝手に解釈する として。今回は前の短編集『バラエティギフト』と同じような組み立てで、現在のちょっ とした謎を追いつつ幾つかのエピソードに触れてゆくというもの。『インライブラリー』 自体の謎掛けは、祐巳が必死に追いかけてた割にそれ程でもなかったかな? でも間の騒 動は楽しかった。短編エピソードは、切なく遣り切れない三者の関係を綴った『チョコレ ート・コート』と、仕掛けに「やられた〜」と唸らされた『図書館の本』の二編が個人的 にお気に入り。瞳子視点で素直な気持ちが描かれていた『ジョアナ』も良かったです。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ!           プレミアムブック       特別でないただの一日 2005/01/03(月)マリア様がみてる 特別でないただの一日
(刊行年月 2004.10)★★★★ [著者:今野緒雪/イラスト:ひびき玲音/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第18巻。前巻での祐巳達二年生の修学旅行の前後に跨って、学園祭準備段階か ら開催当日までの顛末を描いているのが今回。いよいよ祐巳の妹選びも佳境に入ったよう な感触を与えておいて、それでもまだまだ焦らす。まあ頁数を考慮したらこの巻で決まる のはちょっと駆け足気味になるかと不安だったので、ホッとした面もありましたが。  しかしながら、祐巳が瞳子と可南子の双方に接した時の描写を比較してみたら、これは もう一目瞭然なんじゃないですか? あまり先延ばしされ過ぎて結局「どっちでもいいや」 って気分になるのも嫌なので、もうそろそろ決断を下して欲しい所。個人的にはもう絶対 に瞳子を推したい。だって演劇部ともめた時の瞳子と、彼女に接する祐巳との雰囲気が完 全に姉妹のそれと一緒なんだもん。ただ、その割には可南子の男嫌いの原因として、家族 絡みの重いエピソードを“どんっ”と学園祭のど真ん中に落とす事で、祐巳の妹候補の地 位が沈んでしまった訳ではないと主張しているようにも見えてしまう。それを意図として 描いているかどうかは分かりませんが、少なくとも瞳子だと断言出来る状況ではない。  まあ今回のメインは祐巳の妹がどうのこうのじゃなくて(勿論それも大事だけれど)、 姉妹になって一年経った祐巳と祥子が記念イベントでどうなるか? の方だと思う。サブ タイトルがこういう形で、しかもラストシーンで物語に乗って来ると何とも感慨深いもの がある。正直どうも学園祭自体の流れは準備段階からイマイチ乗り切れずの不完全燃焼だ ったのですが、最後の祐巳と祥子のシーンで感極まってしまったのでそれだけで充分。  そして遂にお姉さまから指令? が出されたのでいい加減次辺りで決まるでしょう。た だ、由乃の方はハッキリ言って未だ対象が見当たらないので、江利子さまに頭下げるオチ じゃないのかと思わされてしまう。負けず嫌いが無理矢理歯止めを掛けるかどうか。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ!           プレミアムブック 2005/01/03(月)マリア様がみてる プレミアムブック
(刊行年月 2004.08)★★★☆ [著者:今野緒雪・ひびき玲音 with山百合会/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  アニメのファーストシーズン全話紹介、フルカラーの設定資料集、出演声優のインタビ ュー、書き下ろしのショートコミックにショートシナリオなどを加えた特別バージョン。  殆どアニメ方面寄りな内容なので、ファーストどころか既にセカンドシーズンまで放映 が終わってしまった今となっては触れるのも時期外れなのでしょうけど。個人的にはアニ メも全部観ていたし声優さん達のインタビューにも興味を引かれたので、マリみて関連の 読み物を眺めるという感覚では、それなりに楽しめた部分もあったんじゃないかなと。  でも小説のシリーズとは構成が全く別モノなので、マリみてコレクターアイテムという 位置付けで見るのが正しいのかも。もしくはアニメを補完する意味での読み物か。とりあ えずアニメの次回予告は最初から壊れてたんだな〜(主に祥子さまが)と再確認出来た。  原作小説と直結している、蓉子さまと祥子の姉妹関係の発端を描いた書き下ろしのショ ートストーリーについては……ううむ。感想としては短過ぎて勿体無い、かなぁ? 題材 自体は凄くいいものと感じたので、中編くらいの分量で描いて欲しかった。それ位ならシ リーズ最初から過去の存在だった、先々代の薔薇さま方のお姿も多く拝めただろうし(っ て最も注目すべき点はそこと違うんだけど)。ショートコミックは一巻の演劇準備のワン シーン。文章の視点からは見れなかったもので普通にいいな〜と思えるシーンでした。  既刊感想:マリア様がみてる    黄薔薇革命              いばらの森       ロサ・カニーナ     ウァレンティーヌスの贈り物(前編)  ウァレンティーヌスの贈り物(後編)       いとしき歳月(前編)  いとしき歳月(後編)         チェリーブロッサム       レイニーブルー     パラソルをさして           子羊たちの休暇        真夏の一ページ     涼風さつさつ             レディ、GO!       バラエティギフト    チャオ ソレッラ! 2005/01/02(日)緑のアルダ 熱砂の宮殿
(刊行年月 2005.01)★★★★ [著者:榎木洋子/イラスト:唯月一/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第8巻。まずサブタイトルで「おや?」と感じた事。確か守龍のついての知識 をもっと得たいというアナンシアの意向に沿って、水の守龍を抱くミズベ国へ進路を取っ ていた筈なのに、“熱砂”とは一体どういう意味なのかと。で、実際には強大な魔力によ って偶発的に別の場所に飛ばされた先が、コーサ砂漠の中の幻の楽園だったという事。  本来の道筋とは逸れた形なので、意識的ではないにしろアルダ・ココ達にとっては寄り 道とか遠回りさせられたような気分だったのかも知れない。もし無駄な寄り道だと、読ん でいて「また進みが遅れる?」なんて思わされる心配とかあったのですが、そこはちゃん と守龍絡みのエピソードで充分楽しませてもらえました。考えてみれば『緑のアルダ』シ リーズで、アルダ・ココ達に守龍の力が直接的な関わりを見せたのはこれが初めてだった んじゃないかな? しかし守龍に関われば関わるほど過去シリーズとの接点が密になって 来るだろうから、やっぱり未読の身には分からない部分が出てくるだろうな……と無いも の強請りしても仕方ないので、このシリーズだけでも楽しめる要素を探して行きたい。  アルダ・ココ達の守龍探しの旅に、波紋を呼ぶ一滴となりそうなルダート王子と魔法使 いラダの存在。しばらく陰に潜んでいたけれど、今回は表舞台に姿を見せてアルダ・ココ 達の前に立ち塞がる。とは言ってもどうやら危害を加えて邪魔する意志は少なくともルダ ート王子には無さそうで、逆に極力姿を隠して動向を見張りながら後を追っているような 感じ。どんな考えがあるのかは不明瞭ながら、表向きはルダート王子の目的もまたアナン シアと同じく守龍をコーサ国にもたらそうとしている模様。その割には旅の手助けをして やる辺りの真意が謎なんだけど、今後はこの二人の動きにも多くの興味含みで注目です。  既刊感想:石占の娘         荒れ野の星       千年の隠者        謀略の都       虹の白夜         旅立ちの丘       蒼い雪原 2005/01/01(土)緑のアルダ 蒼い雪原
(刊行年月 2004.08)★★★★ [著者:榎木洋子/イラスト:唯月一/集英社 コバルト文庫]→【
bk1】  シリーズ第7巻。アルダ・ココの占いによりコーサ国王女アナンシアこそが守龍を呼び 寄せる者と確定し、その後の紆余曲折を経てようやく今回から本題である守龍探しの旅が 始まる新展開。とにもかくにも全体的な序章段階が終わり、本当にやっとやっと本編へ突 入したんだな〜という印象が強かったですね。まあそれでも話の進みがゆったりなのは相 変わらずなのだけれど、そこはじっくり丁寧に描いているに違いないと解釈する事にして、 壮大で過酷なこれからの旅を予感させてくれた今回の最初の段階はまずまずの手応え。  しかしてっきりアナンシアの旅の付き人は占いで運命を切り開いたアルダ・ココと、彼 女の用心棒のウルファと地狼ヨールだけだと思ってたんだけど、こんなにも大所帯な旅に なるとは。元々王室育ちの王女様だから、本人が望まずともアナンシアが厳重保護となる のは当然の成り行きなれど、ちょっとこれは違うのではないかという不安はアルダ・ココ の胸中にもあったようで。主軸として描かれていたのは、その辺りの違和感をアナンシア 自身が確かめて気付いて改めて決意を固めるまでの部分だったんじゃないかなと。ラスト で決意を形にしてみせたアナンシアの思い切った行為が非常に印象的でした。  ただ一点だけ個人的に惜しいなと感じたのは、貧しい村の様子を目の当たりにしたアナ ンシアが嫌悪を見せた時。その後アルダ・ココの言葉で直ぐに現実を受け入れていたけれ ど、もうちょっと嫌悪を引き摺って受け入れるまでアナンシアに葛藤を与えてくれても良 かったかも知れない。それだけ彼女が出来た人間という事の表れなんだけど、逆に精神的 に脆い部分を露呈させた場合でもキャラクターに惹かれる要素になり得ると思うので。今 後は壁に当たる事もあるだろうから、むしろ順風満帆ではいかない展開に期待したい。  既刊感想:石占の娘         荒れ野の星       千年の隠者        謀略の都       虹の白夜         旅立ちの丘


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