NOVEL REVIEW
<2005年04月[前半]>
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04/10 『かりん 増血記5』 著者:甲斐透/原作:影崎由那/富士見ミステリー文庫
04/09 『VarofessII』 著者:和田賢一/富士見ファンタジア文庫
04/09 『クロスカディア6 星メグル地ノ訪問者タチ』 著者:神坂一/富士見ファンタジア文庫
04/09 『クロスカディア5 月眠ル地ノ反逆者タチ』 著者:神坂一/富士見ファンタジア文庫
04/09 『クロスカディア4 風サワグ地ノ逃亡者タチ』 著者:神坂一/富士見ファンタジア文庫
04/09 『A君(17)の戦争7 はたすべきちかい』 著者:豪屋大介/富士見ファンタジア文庫
04/07 『A君(17)の戦争6 すべてはふるさとのために』 著者:豪屋大介/富士見ファンタジア文庫


2005/04/10(日)かりん 増血記5

(刊行年月 H17.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:甲斐透/原作・イラスト:影崎由那/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  アニメ化決定で波に乗ってる「かりん」の小説版5巻目。何かいつの間にやらこのレ ーベルで長期シリーズとなりつつある。これから更に勢いづくだろうから、まだまだ外 伝的エピソードも切れる事はなさそう。原作コミックの合間の出来事で、小説オリジナ ルキャラクターを起用するスタイルは一巻目からずっと一緒。ただ今回の場合は、涼し い顔して躊躇う事なく冷静に暴力を行使する霧丘忍の存在が、これまでに無く異彩を放 つキャラクターで印象的だった。その暴力が健太よりも果林に振るわれる辺りとか。  果林に対する忍の暴力も彼女の方に原因はあるのですが、増血衝動の関する事だから 話せるはずもなく、結果として誤解が生まれてしまう。果林に好意を寄せる異性はあれ ども、容赦なく脅して追い詰める忍のような異性はなかったので、これまでよりもちょ っとだけ多目に果林の危機でどきどきさせられた部分は結構良かったと思う。  あらすじでは“健太と衝突して介抱された上級生の彩羽という少女が彼に大接近で果 林大パニック”な部分がメインのように扱われてますが、どうもそれより忍の方が際立 っていたような気がする。とりわけ従姉の彩羽が絡むと残酷な内面が表に出てしまう辺 りとか(本人は否定してるけど、女に惚れた男の行為にしか見えないんだよなぁ)。  果林と健太の関係は相変わらずどっちも友達だと逃げていつもの通り。まあ「健太の 事が好きで好きで堪らないんじゃないか」と突っ込み入れたくなる程、果林の気持ちが より一層ハッキリ描かれていたのは好感触だったかな。でもこれ、お互いがきちんと告 白しない限りは一生終わらないんじゃないだろか? 果たして何処まで続くやら。  既刊感想: 2005/04/09(土)VarofessII
(刊行年月 H15.11)★★★★★☆☆☆☆☆(5/10) [著者:和田賢一/イラスト:人丸/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  あれもこれも色々やりたそうな感じで結果殆どが半端なまま終わっていた前巻と比較 すると、起承転結のバランスとか一冊での纏め方とか、その辺りが進歩しているなとい う印象でした。前巻の刊行時期から随分経ってしまっているので今更ながらですが。  割とそつなく纏まっていて楽しめる部分も結構あったし、これ単体で眺めたら決して 悪いデキではないのだけれど、『シリーズ作品』で前巻の『続編』としてはあまりうま くない描き方かなぁと思ったりも。この巻はあくまでミロット少年が主人公として、ヴ ァロフェスはミロットと過去に関わりを持つ脇役として、前巻でヴァロフェスと深く関 わったリリスやジョパンニ一座は端役として描かれている。なので続編である事の意味 合いが大分薄れてしまっているんですよね。確かにマクバとの因縁は前巻同様にちらつ かせているのだけれど、ヴァロフェスが中心に居ないのでイマイチ盛り上がらない。  ハッキリ言ってしまうと今回いきなり出て来た少年を追い掛けるよりも、本来主役で あるヴァロフェスの方を追いたかった。それが前にヴァロフェスというキャラクターに 惹かれた部分にある気持ちです。きっとこれからもっとヴァロフェス自身の復讐に満ち た黒い感情を引き立てつつマクバと死闘を繰り広げたり、リリスと再会して触れ合いを 描いたりするつもりだったと思う。でも一年以上続刊が無い現状では望み薄かなぁ。  既刊感想: 2005/04/09(土)クロスカディア6 星メグル地ノ訪問者タチ
(刊行年月 H17.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:神坂一/イラスト:谷口ヨシタカ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  クライマックスに向けて、未だ解かれておらず残されていた謎は『神』と呼ばれる存 在の正体と、ずっとシン達の側についているギソウルの真意。特にギソウルは何で一緒 にいるのかずっと見当が付かなかったので、どう語られるのか楽しみにしていたのです が……む、う、ちょっと想像してたのと違う方向だったか、なぁ? もっと感情的な部 分が際立つと思ってたので、何か微妙な手応えで終わってしまった……。それでも前巻 で少々分かり難かった、レゼルトと共にメイに変化してディーヴァと対峙した時の状況 が、ギソウルの目的を知った事によって理解出来たからそれでいいやと思う事にする。  そんなこんなでシリーズ最終巻。後半急ぎ足で突き進んで来たので、本当にうまく纏 まってくれるかどうか不安一杯でした。が、とりあえず隠したままの謎は残さずに、伏 せていたものは全部明かしてくれたし、大体が収まるべき場所にちゃんと収まったので 納得のゆく結末だったかなと。とりわけ嬉しかったのは、弱いままのシンが最後まで弱 いまま、武力でなく言葉の力で神と呼ばれる存在に立ち向かった点。最後までこうあっ て欲しいと望んでいたそのままの姿でシンを描き切ってくれただけでもう満足です。  結局は丸く収まった。誰にとっても幸せ……とは言えないかも知れないけれど、おそ らく誰も不幸にならず、皆に得るものがあった結末。途中で埋れたキャラが居たのは惜 しかったですが(特に後半)、このホッとさせてくれる結末は実に良いものでした。  既刊感想: 2005/04/09(土)クロスカディア5 月眠ル地ノ反逆者タチ
(刊行年月 H16.07)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:神坂一/イラスト:谷口ヨシタカ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】    リワーダー達の住む東の大地から、メイの記憶と彼女の両親を封じた神々と会う為に 『月』へと渡る道を進むシン達。あ〜やっぱり次で物語を全部畳んでしまおうという気 概満々な素早い展開だなぁと思わされた。テンポは軽快だし話もすんなり頭に入って来 るから、そのせいで読んでいる時の楽しさが損なわれてしまうわけではないんだけど。  それでも先へ先へと促すよりは、その場その場で立ち止まりつつじっくり進めてくれ た方が良かったという気持ちがあるのも確かで。例えばドラグノでの三竜翁との直接的 な対峙は描かれなかったし、多分今回の場合でも舞台を月に移した事で地上に残された キャラクター達の活躍はもう望み薄だろうし。そういう意味でレゼルトやネネス・トト ルを地上に置いてままで行ったのは何となく勿体無いなと思ってしまったのでした。  読んでいて起伏に欠ける物足りなさがあるのは、シン自身の戦闘能力が弱いせいで戦 闘シーンが多いのに見せ場が作れないせいかどうか。ただ、そういうハンデは一番最初 から背負っていた事だから今更言ったって仕方ないのかな? その分作戦立案要員とし て充分役割は果たせているので、そういう直接的な戦いで弱くても言葉と頭でフォロー するような立場は最後まで貫いて欲しい。急に強くなるよりはその方がいいと思う。  既刊感想: 2005/04/09(土)クロスカディア4 風サワグ地ノ逃亡者タチ
(刊行年月 H15.11)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:神坂一/イラスト:谷口ヨシタカ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】    しつこいディーヴァの追撃を振り切り、レゼルドに連れられて北の大陸ドラグノ領に 入ったシン、メイ、ラフラ・リフラ。妙に和んでる序盤の様子から、このまましばらく ドラグノで平穏な日常を過ごすのかと思いきや、結局はメイ目当てで付けられていた監 視を掻い潜っての逃亡生活に逆戻り。シンの行く先が明確に定まって来たので、普通に 楽しめる部分は楽しめたのですが……今回1冊丸々使ってドラグノ領での出来事が描か れるだろうと予想してたので、ちょっと展開が駆け足気味だったような手応え。  もっとも、既にこの辺りから物語を畳む段階に入っていたのだとしたら、それ程早い ペースではないのかも知れないけれど(まあこういうのは完結した後に読んでるから言 える事か)。大してドラグノ領内の事に触れないまま、あっさり通過してラフラ・リフ ラの故郷リワーダー領に入ってしまったから、主に逃亡と戦いの描写が多く、シンとメ イとラフラ・リフラとでじゃれ合う日常シーンが序盤にしかなかったのは少々残念。  あとはメイの正体も結構あっさり判明してしまうのだけど、これもまだ少し引っ張っ て欲しかったような気がする。でも、物語を畳み始めているのならこの辺でバラしてし まうのが妥当だったのかなぁ。とりあえず結末へと走り出したので良しとすべきか。  既刊感想: 2005/04/09(土)A君(17)の戦争7 はたすべきちかい
(刊行年月 H16.04)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:豪屋大介/イラスト:北野玲衣/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】    春の訪れと共に、いよいよ魔王領殲滅を目的に掲げてシレイラ王女率いる20万の人 族連合軍が動き出す。前巻の結末によって裏方から表舞台に立つ事になったシレイラ王 女ですが、これがまた予想以上に凛々しくて格好いい御姿。前は兄貴のフェラール陛下 を立てる為に、自室で作戦を立てては発散出来ないストレスに悶々としていた少々アブ ナイねーちゃんだったのだけど。これこそ本来彼女が望んでた役割って事なのかな。  頂点に立って兵達を指揮する姿や、『これは誰のものでもないアタシの戦い』と噛み 締めるように実感している姿から、本当はずっと前からこうしたかったんだという気持 ちが強く強く感じられる。活き活きとした躍動感に満ち溢れる彼女が輝いて見えます。  一方で魔王領の我等が剛士総帥。人族連合軍の僅か4分の1という圧倒的不利な勢力 で、果たしてどう立ち向かうのか? 普通に考えたらその戦力差を知った時点でどうや っても覆すのは無理だと諦めムードに陥りたくなるのに、剛士ならきっと不可能を可能 にしてくれるだろうという人々の期待が逃げる事を許さない。皆を欺かなければ手にす る事が出来ないという、彼の内に秘めた勝利の策とは一体何なのか? 戦争が激化すれ ばする程危うさが増してゆく気がしてならない剛士自身の内面も含めて気になる所。  既刊感想: 2005/04/07(木)A君(17)の戦争6 すべてはふるさとのために
(刊行年月 H15.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:豪屋大介/口絵・本文イラスト:伊東岳彦・北野玲&モーニングスター         /富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】    もう春まで派手な動きは無いだろう、と警戒しつつも考えているランバルトの裏を掻 く今回の『田中魔王を救出して平穏無事な正月を迎えよう』作戦。突拍子も無く無茶も いいところなこの提案、しかし誰もが当り前のようにそう思いつつ、それでも誰も異を 唱えず皆が作戦成功に向けて意志を固めるのは何故か? それは魔王領総帥・小野寺剛 士への絶大で圧倒的な、信仰と言っても言い過ぎでない程の信頼感があるからこそ。  特にこの作戦では、これまでにない剛士への絶対の期待、信頼、或いは忠誠というも のが強く感じられたのだけど、それがちょっと行き過ぎていて“恐い”と言う印象にな っていた時もあった。恐いの意味は剛士が押し潰されるかもしれない不安とか、芳しく 作戦が進まなかった場合に期待の目で見る人達が掌を返すかも知れない不安とか。  でも、実は思うように行かなかった時の“恐さ”よりも、このままうまく行き過ぎ続 けた先の“恐さ”みたいなものの方が大きくて。何て言えばいいのかなぁ、落とし穴が ありそうだとかそういうのではなくて、剛士自身を息抜きさせてあげないと、いつか風 船が割れるみたいに精神状態がヤバイ方へ流されそうな予感がしてならないのです。と は言え今直ぐどうなるわけでもないので、とりあえず成り行きを見守るしかないか。  既刊感想:


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