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12/31 『ルーク&レイリア3 ネフィムの魔海』 著者:葉山透/富士見ミステリー文庫
12/28 『ルーク&レイリア2 アルテナの少女』 著者:葉山透/富士見ミステリー文庫
12/27 『ブルースカイ』 著者:桜庭一樹/ハヤカワ文庫JA
12/26 『少女には向かない職業』 著者:桜庭一樹/ミステリ・フロンティア
12/25 『荒野の恋 第一部 catch the tail』 著者:桜庭一樹/ファミ通文庫
12/25 『蟲と眼球と殺菌消毒』 著者:日日日/MF文庫J
12/23 『アンダカの怪造学II モノクロ・エンジェル』 著者:日日日/角川スニーカー文庫
12/22 『うそつき 〜嘘をつくたびに眺めたくなる月〜』 著者:日日日/新風舎文庫
12/21 『狂乱家族日記 参さつめ』 著者:日日日/ファミ通文庫
2005/12/31(土)ルーク&レイリア3 ネフィムの魔海
(刊行年月 H15.01)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:葉山透/イラスト:睦月れい/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
そう言えば前巻でツッコミ入れ忘れてた事が。今回もそうだけど、ルークって一巻当
初からこんなズッコケて笑いを取る二枚目半〜下手すると滑った時限定で三枚目キャラ
だったっけ? 何かクールに決める二枚目キャラなイメージが強かったのだけど……。
記憶が薄れているし、手元に一巻の現物が無い為に確認出来ないから分からないけれ
ど……こんなもんだったのかも知れない。レイリアの物言いに対してとことん弱い所は
最初からあったような気もするけど。もっとも、普段レイリアの尻に敷かれている情け
なさを見せていても、肝心な場面では最も頼れるパートナーとして活躍している辺りで
きちっと二枚目キャラを演じているなと(そういう所は普通に格好良く映る)。
今回の内容は海洋冒険ミステリ仕立て。これはシリーズ中最もミステリという括りの
読み物としての良さが出ていたと思う。無人の筈の難破船に残る人の気配、ルーク達が
乗る船で起こった食中毒事件や乗客の行方不明事件、伝説の中の存在であるネフィムの
歌声が響く魔海……などなど、船旅の雰囲気もバッチリ効かせての謎や仕掛けを幾つも
盛り込んだミステリ要素が色濃く描かれていて面白かった。ただ、プロローグのエピソ
ードがあまり本編で映えなかったのは少々不満で、カナールとセルフィの関係と存在を
もっと物語に深く絡めて欲しかったかなと。まあその部分も謎として隠しているような
感じだったから、真相が解かれるまでは明かさず語らずで通してたのだろうけどね。
そしてあとがき最後に「四巻でお会いしましょう」のお言葉が……会いたいなぁ。
既刊感想:1、2
2005/12/28(水)ルーク&レイリア2 アルテナの少女
(刊行年月 H14.11)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:葉山透/イラスト:睦月れい/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】
少なくとも出せる見込みがゼロじゃないと分かった四巻刊行を祈願するのならば、未
読分は読まねばいかん! というわけで、物凄く久々にシリーズを読む(過去ログ辿っ
たら前巻感想書いたの三年前だった……)。当時はデビュー作を二ヶ月連続刊行してみ
せたり、更に翌々月には三巻目も刊行されたり、かなりハイペースだったんだよなぁ。
今回もまた現在の富士ミスラインナップではあまり御目に掛かれない、「出すレーベ
ル間違えてるんじゃないか?」ってくらい富士見ファンタジア寄りなファンタジー色の
濃い雰囲気+ミステリのストーリー展開。伝説の民族アルテナが残した遺跡に隠された
幾つもの謎と、ルークとレイリアが依頼を受けて救った生贄にされかけていたアルテナ
の民の血を引く少女の謎を追っかける内容。これがまた読んでいてRPGのダンジョン
探索で謎を解き明かしてゆくみたいな感触で、妙に馴染み易くて馴染み深いのです。
まあルークが多人数を集めて真相明かすシーンで、ちょっとミステリ要素を意識し過
ぎてる演出かなぁと思ったりもしましたが、仕掛けの置き方や謎を追って読ませる引っ
張り方はなかなか巧くて面白い。あくまで仕掛けや謎は富士ミスらしい軽度のものだけ
ど、何よりルークとレイリア、それからルークの知人であるハンタージャッジのヒルド
との掛け合いが楽しいもので全体的なテンポも良いです。続く三巻目も楽しみ。
既刊感想:1
2005/12/27(火)ブルースカイ
(刊行年月 2005.10)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:桜庭一樹/早川書房 ハヤカワ文庫JA]→【bk1】
西暦2007年。青い空の下。惰性で生きる少女のタイムトラベルが始まる。……と、
この部分が描かれるのは終盤の方で、最初は中世ドイツの魔女狩りの時代、次に近未来
のシンガポール、そして最初の出発点である現在の日本・鹿児島へと繋がってゆく。
最初のマリーが少女の存在を受けるドイツでは、これって桜庭一樹スタイルのファン
タジー小説? とか思ったり。こういう雰囲気、他の作品シリーズではあんまり味わっ
た事無いかな……と感じた後にそういや『GOSICK』があったかと思い直す(時代
は全然違うけど)。でも同著作に触れた中では繊細な少女の心を綴る物語が多いので、
むしろGOSICKみたいな世界観の方が特殊な位置付けという感じがして、だからこ
の作品も随分異なる雰囲気を持った作品だなと感じたわけで。更に途中からタイムトラ
ベルが入り、ミステリ的な仕掛けも加えられ、益々新鮮味が濃くなり、それでも最後ま
で読んだ後に「ああ、これって一人の少女の物語だったんだな」と落ち着く辺りは紛れ
もなく他作品で抱いた感触と同質のものでした。結末を知った時の受け入れたくても素
直に受け入れられないか或いは受け入れてもしこりが残るような気持ちも同様に。
2005/12/26(月)少女には向かない職業
(刊行年月 2005.09)★★★★★★★☆☆☆(7/10)
[著者:桜庭一樹/東京創元社 ミステリ・フロンティア]→【bk1】
例えば誰かが少女に「殺人なんて少女には向かない職業だから……」と思い留まらせ
る切っ掛けを投げたとしても、“止めなさい”という最後の言葉を聞く前に殺人を犯し
ていたのではないか? 或いは、静止の言葉が届いたとしてもそれを振り切って殺人に
踏み切ったのではないか? 後からそう誰かに教えて欲しかったと思ってみても、教え
てもらい「うん、分かった」と理解した上で殺人に走ったのではないか? 結局は誰も
少女を救う事なんて出来なかったのではないか? 幾つもの疑問符が浮かぶ中で思うの
は、殺人は大西葵という少女に打って付けの職業だったのかも知れない、と。
この作品もまた著者お得意の思春期少女の生きてゆく為の闘いや、皆が集団で辿るレ
ールから逸脱した少女と少女の触れ合いを軸に描かれた物語。葵の外での陽気な振る舞
いは内向的な本性を隠す為のもので、うまく立ち回れなくて言い訳も出来ない本来の自
分が表に浮かんだ時、友達関係やら家庭環境やら色んなものがボロボロと音を立てて崩
れてゆく様が、ちょっと目を背けたくなる程で。それでも、葵が逃げながら身を守る回
避方法を殺人以外で取れなかったのは、たとえ静香の後押しがあったとしても、心の何
処かで殺人を犯してしまった相手に対して殺したい願望があったからなのかなと。
2005/12/25(日)荒野の恋 第一部 catch the tail
(刊行年月 2005.05)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:桜庭一樹/イラスト:ミギー/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
主人公・山之内荒野(女の子です、と一応)の恋を、少女の成長に乗せて描いてゆく
『恋の三部作』一巻目。駆け出しは十二歳。“好き”という意味も恋する気持ちも知ら
ない少女が、異性を好きになる感覚に遭遇し、異性への恋に目覚め、「ああ、これが人
を好きになり恋をするという事なのか」と、ふわふわした想いを理解するまでのエピソ
ード。さすがにこれだけ年代が離れた荒野、悠也と気持ちを重ねて同調する事なんて出
来やしない、とか唸りつつもこの青臭さが充満した空気は好みだったりします。
ファミ通文庫で少女の思春期を描いていた『赤×ピンク』『推定少女』と似たような
雰囲気ながら、ちょっと何処か触り心地が違う? と感じた原因があとがきで判明。そ
ういや上記で挙げた物語は今回みたく“少女が異性に恋をする話”ではなくて、少女が
少女と出逢って自身の置かれた立場から“生き方を模索してゆく話”だったからか。
でも、感触は違っても少女同士の会話や触れ合いから発せられる匂いだとか、少女の
身体の成長具合や性についての話題などを眺めて、ハッキリと女性作家ならではの描写
だなと思わされる辺りはこれまでの作品と一緒。少女の実態に理解が及ばないのも同様。
ラストシーンの荒野の言葉を借りると「だって、男だもん」と言った具合。第二部は十
四歳の頃だそうで、二年の成長が荒野の恋にどんな変化をもたらすのか。楽しみです。
2005/12/25(日)蟲と眼球と殺菌消毒
(刊行年月 2005.12)★★★★★★★★★☆(9/10)
[著者:日日日/イラスト:三月まうす/メディアファクトリー MF文庫J]→【bk1】
「眼球えぐっちゃうぞ」のグリコが帰ってきた。結構痛々しいグロさで容赦なくぐり
ぐり抉っちゃってます。本来は著者的にも一巻完結だったらしいのだけど、寝たままの
伏線を掬って拾ってとやってみたら、シリーズ続編として再び立ち上がっちゃいました
……そんなノリみたいです。いや、でも一旦決着をつけて終わらせたものをもう一度起
こし繋げたこの内容は、なかなか面白く巧い発展のさせ方だなと思いました。
最初からあったのかそれとも後付けなのか、その辺は分からないですが、どっちにし
ても隠されてた事実がこんなに次から次へと湧き出して来るとは思ってもみなかった。
前巻で不足してた部分をしっかり補って穴埋めしてるな〜という手応えで。グリコや鈴
音が身体に宿す「エデンの林檎」の本当に意味や、今回から敵対する相手がそれを狙う
理由とか、色々明かされるに連れて物語に奥深さが加味されて非常に面白かったです。
しかし……くっ! この読了後にじわじわと滲む様な遣る瀬無い気持ちは一体何処に
ぶつけたらいいんだろう? 折角グリコが人並みの幸せを実感し始めたというのに。そ
の戸惑いの中の幸せを見せられたからか、グリコが下した決断が余計辛く苦しいものに
映ってしまう。掴みかけて逃した幸福を取り戻せる日が果たして来るのだろうか……。
既刊感想:蟲と眼球とテディベア
2005/12/23(金)アンダカの怪造学II モノクロ・エンジェル
(刊行年月 H17.12)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:日日日/イラスト:エナミカツミ/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】
遥かなる夢は異世界から召喚する怪造生物と人間との共存。聞いた誰もが一笑に付す
か異様なものを見る目で忌避するか。しかしそんな冷めた周囲の態度も何のその、日々
《怪造学》を学びながら、今は到底手の届かない果てしなく遠い夢を追い続ける空井伊
依の成長物語。前巻守れなかった大切な怪造生物の友達と決して怪造生物を殺さないと
己に課した誓い。今回こそは守りたいものを必ず守る! と意気込む伊依のリベンジ。
怪造学の召喚に長けているわけではなく、肉体的な戦闘能力も皆無な伊依は相変わら
ず眺めていてハラハラさせられる程に危なっかしい。だけど危機に陥れば陥っただけ頭
脳プレイによる逆転劇が爽快に決まるというもの。伊依は何回も死にそうな目に合いな
がら、その度に僅かな抜け道の隙間を高速回転思考で見付け出し打開してゆく。
根底にあるのは、怪造生物ばかりでなく自分を殺そうと敵対する人間でさえ傷付ける
事を躊躇う気持ち。それは自らを窮地に追いやり滅ぼしかねない甘っちょろい感情なの
かも知れないけれど、何があっても決して信念を曲げようとしない姿を見ると何となく
ホッとさせられると言うのかな? ああ、これが空井伊依って女の子だよな〜と。
今回主に描かれていたのは好敵手と書いて“とも”と読む新キャラ戦橋舞弓(たたか
はしまいゆみ)との友情の育みと、伊依自身の成長具合。怪造学の奥深くには大して触
れなかったので、裏研究部なんて物騒なものも含めてこれから語られる事に期待。
既刊感想:I
2005/12/22(木)うそつき 〜嘘をつくたびに眺めたくなる月〜
(刊行年月 2005.08)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:日日日/イラスト:高橋葉介/新風舎 新風舎文庫]→【bk1】
狂乱みたいなライトノベル系と言われる作品読んだ後にこういうの続けて読んだりす
ると、一般文芸の括りなので違うってのは分かってるにも拘らず不意打ち喰らったよう
な気分になってしまう。いや、でも元々一番最初に触れた「ちーちゃん」や「私の優し
くない先輩」がこんな感じ――主人公の一人称で徹底的に自己感情を突き詰める描き方
だったから、むしろこっちの作風に日日日氏らしさを強く感じたり。まあ本来も何もジ
ャンルが違えば作風も変わるだろうし、どれも触れる度に全く新しい雰囲気を見せてく
れる辺りで、自分に合う合わないは別として多芸だな〜と思わされるのですよね。
この作品を読んで感じた個人的な『面白い』は、ストーリー展開ではなくて主人公・
竹宮輝夜のねじくれた感情をずーっと追っかけてく所に掛かってます。恋って何? 愛
って何? そんなの理解出来ない。理解したくもない。面倒臭いから。煩わしいから。
何より“下らない”から。そう心の中でキッパリ言い放つ輝夜の感情は、実は愛や恋に
接して溺れるのを怖がっている自分自身に嘘をつく為のもの。嘘を嘘だと認めさせない
口実。その辺りが徐々に理解出来るようになると、表面上で突っ撥ねるだけの輝夜に対
し愛しさが生まれてくる(それを知ったような口で彼女に告げると、投げやりな“下ら
ない”が返ってくるのだろうけどね)。この読後感はなかなかに良いものでした。
2005/12/21(水)狂乱家族日記 参さつめ
(刊行年月 2005.09)★★★★★★★★☆☆(8/10)
[著者:日日日/イラスト:x6suke/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】
三角関係なのにドキドキしないぞ? なんだこの歪みまくった三角関係は。ドキドキ
じゃなくてビクビク、或いはワクワクか。凰火と凶華と死神三番、頂点と頂点を結ぶ線
がねじれまくっていて三角“形”にすらなってない。それくらい凄い三角関係。
全てを拒絶していた幼少の凰火と死神三番=霧岬知紅の幼馴染み的関係から、あまり
見れなかった凰火の過去の事実が興味深く映る。その頃からどこか壊れて欠けていた二
人の現在、イカれた容姿でも凰火への好意を激しく示す死神三番の想いと、対して嫉妬
心剥き出しな凶華と、そんな凶華を愛しているとキッパリ言い放った凰火が印象的でし
た。……あれ? こうして眺めてみると意外とまともに三角関係してたのか?
しかしまた凶華の大暴走の力押しで進むのかと思ってたら、中盤以降かなりの変化球
が来て驚かされた。確か前巻のあとがきで「凶華のネコミミの秘密が明かされる……か
も」てな事が書かれてましたが、まさにその通りの内容。驚かされたのは凶華がネコミ
ミとシッポを生やしている真相の事もそうだけど、その後の“元の凶華自身の正体”に
ついてもそう。二段階で驚きの波に襲われたような感触。それが発生しただけで詳細ま
では分かってませんが、とりわけ凶華の正体と同時に過去の出来事が語られた事で、彼
女を見る目がちょっと変わったかも知れない(傍若無人ぶりは相変わらずだけど)。
ただこの流れだと、じゃあ『閻禍の子供』やら擬似家族生活の目的やらは何処へ行っ
たんだ? ともなる訳で。今後家族の掘り下げもあるらしいから、次はその辺に注目。
既刊感想:壱さつめ、弐さつめ
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