NOVEL REVIEW
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03/13 『想いはいつも線香花火3』 著者:一色銀河/電撃文庫
03/09 『想いはいつも線香花火2』 著者:一色銀河/電撃文庫
03/08 『レジンキャストミルク2』 著者:藤原祐/電撃文庫
03/07 『とある魔術の禁書目録8』 著者:鎌池和馬/電撃文庫
03/05 『9S<ないんえす?>SS』 著者:葉山透/電撃文庫
03/04 『護くんに番外編で祝福を!2』 著者:岩田洋季/電撃文庫
03/03 『かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜』 著者:駒尾真子/電撃文庫
03/03 『ユメ視る猫とカノジョの行方』 著者:周防ツカサ/電撃文庫


2006/03/13(月)想いはいつも線香花火3

(刊行年月 2006.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:一色銀河/イラスト:ゆい/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  キス! キス! キス! 美ヶ速優夜十七歳、めでたく双子姉妹まとめて食いやがり ました。このエロ小僧め。まあしかしどうしようもないセクハラ野郎な本質は初期の頃 とあまり変わってないとしても、その辺りのアクの強さを適度に薄めつつ、美風&空姉 妹との三角関係っぽいラブコメ色を強調させる描き方ってのは良い傾向だなと思う。  とは言っても、優夜と美風はお互い意識し合ってる癖に頑なに否定してばっかだし、 美空は相変わらず本心が読めないし(間違いなく優夜を好きなんだろうけど、美風も好 きなら身を引こうとしてる感じかねぇ……)。しかも美空にとんでもない能力が眠って いる事が判明し、そこに未だハッキリしない優夜の過去が深く関係して来たり、どうも シリアス寄りで呑気にラブコメなんぞやってる状況じゃ無くなりつつある様子。  多分美空の能力とか曖昧な優夜との過去などは、この物語の核心で結末に向けて描く べき要素ではないだろうかと。ただ過去絡みの部分については、前巻から敷いている伏 線がなかなか解かれず、やや引っ張り気味な印象でもやもやが全然抜けないのが不満だ ったかなぁ。ともあれ次が最終巻だそうなので、きちっと纏め上げて欲しいです。  既刊感想: 2006/03/09(木)想いはいつも線香花火2
(刊行年月 2005.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:一色銀河/イラスト:ゆい/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  相変わらず煩悩妄想全壊のエロ小僧こと優夜君十七歳。一人称視点がダイレクトに伝 わって来るので、直に彼の目線を堪能出来てしまえるという仕組み(それがいいのかど うかはまた別として)。ただ、思春期のリビドー晒しまくりであまりに痛々しかった前 巻よりかは大分おとなしくなっていたような気もする。そんなに優夜を鬱陶しく感じな かったし、美風との息ピッタリなどつき合いは結構楽しめたんじゃないかな〜と。  それに今回は、優夜と美風と美空の関係が何だか好みの方向へ傾いているようじゃな いですか。それぞれの想いがまだ弱いものであったり曖昧なものであったりなので、三 角関係と括るにはまだ早いと思うのだけど。美風はもう完璧に優夜に惹かれているのを 必死で否定して誤魔化そうとしてるのが可愛くて。優夜の方も美風の仕草に胸が高鳴り を覚えてるくせに無かった事と否定しやがってこの野郎。二人の過去で助けたり助けら れたりの記憶が食い違ってて、その辺りは今後の伏線になってるのかどうか。  本当の所がよく分からないのは、優夜への好意が透けて見えているようで実はどうな のかハッキリしない美空。彼女のは異性へ向けるものより家族とか兄妹に向ける好意の ようにも感じられるのだけど……。 でもデートで気合を入れているのを見ると、優夜 への好意が異性へのものに思えて来る。まあ美風と美空で優夜を取り合うって構図は今 はまだ想像し難いけれど、三角関係盛り上がりの方向で行って欲しいと希望。  既刊感想: 2006/03/08(水)レジンキャストミルク2
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:藤原祐/イラスト:椋本夏夜/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  ガツンと横殴りを喰らい、そして奈落の底に突き落とされる。この堪らないゾクゾク 感が癖になりそうです。いや、もう前半の展開から分かってたし、それ以前に口絵の和 気藹々なき雰囲気からこうなる予兆はあった。このあからさま過ぎる“平穏な日常風景” を強調されると、どうしたって「この後絶望のどん底に叩き落すから覚悟しとけよな」 と言われてるような気分に陥ってしまう。身構えていてもダメージ喰らってしまう。  対象はひめひめとか在亜とか。でも個人的に最もダメージ大きかったのは芹菜。今の 大事な何かが欠落した晶を理解して欲しい、と勝手な希望を芹菜の了解も得ずに一方的 に押し付けようとしても、結局は恐怖と悲しみによって拒絶される。晶は芹菜に打ち明 けるなんて事望んでいないし、望まずに知られたらこうなるのは充分理解していただろ うけど、それでも二人の様子を見ているこちら側としては、大切な幼馴染みからの明確 な拒絶ってのは酷く堪えるもの。勇気を抱いての告白がどうしようもなく切ない……。  一応今回の事件は収束を見せたけれど、ひめひめに関しては「そう来たか!」と最後 の一捻りな仕掛けに驚かされた。まあこの絶望の中に一縷の希望を含めている辺り、実 に嫌らしく容赦なく残酷な仕打ちだなぁと思わされたり(特に硝子にとってはね)。  既刊感想: 2006/03/07(火)とある魔術の禁書目録8
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:鎌池和馬/イラスト:灰村キヨタカ/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  ああ……とある魔術の“インデックス”なのに……このシリーズの性質を象徴するか のような、見事なまでのインデックスの端役っぷりに涙で前が見えない。しかも今回は 当麻まで端役のお付き合い。当麻の場合、どうせまた大した活躍もせず目立ってもいな い癖に美味しいとこだけしっかり掻っ攫って行くんだろう? とか思ってたけど珍しく 最後まで見せ場なし。代わりにアクセラレータが最後に美味しいとこ持ってった。圧倒 的な強さで凄みも充分。なんだけど、ミサカはミサカは〜なラストオーダーとのじゃれ 合いでは雰囲気一変で凄みも緩みっ放し。体調万全でないとは言え、ここまでおちょく られるアクセラレータなかなか見られるもんじゃないなとニヤニヤ眺めてました。  今回の主役は美琴お姉様好き好き大好き、な白井黒子。読む前は美琴と合わせ二人で 主役かと思ってたのだけど、ここまで一方的に黒子メインになるとはなぁ。外伝でも番 外編でも何でもなく紛れもない本編進行なのに、脇役を主役へ引き上げる荒業をあっさ りやってのけてしまうとは(まあそういう所もこのシリーズらしいと言えるのかも)。  内容は3巻の続きであり後始末であり、繰り広げられたのは空間移動能力者同士の激 しい死闘。いやしかしこれは想像以上に熱い展開で面白かった。詳しい事情なんて知ら なくてもどーだっていいからわたくしの大切な愛するお姉様の障害となる存在を排除す べく全身全霊をかけて戦うのみ! てな感じの黒子の戦い方がもの凄く凛々しくて格好 良かった。美琴の出番の少なさを補って余りある黒子の活躍ぶりに満足感一杯。  既刊感想: 2006/03/05(日)9S<ないんえす?>SS
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:葉山透/イラスト:山本ヤマト/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  本編では“色んな意味で語れなかった”エピソード満載の短編集。そういや読む前か ら気になってた事だけど……タイトルの“?”って何だ“?”って。この一冊は己が9 Sというシリーズ作品である事に自信が持てていないのか!? とか何とか、しょーもな い考えが頭を過ぎったりしてたけれど、中身に触れてなるほど納得。何か「これホント に9S?」と自信なさげに勘ぐりたくなるような、そんな感触が一杯の内容だった。  でも本編では決してやれそうもない事を思う存分やってしまおう! というこの妙な 勢いの方向性は、番外編の短編集としてはどのエピソードも実にしっくりハマってるな ぁと思わされました。だって、フリルエプロン装備して一生懸命料理(目玉焼き)した り、制服着込んで女らしさをアピールしたりな由宇とか、由宇に対抗意識燃やしまくっ て料理した事ない癖に料理対決に挑む麻耶なんて、こんな機会でも設けなければ一生拝 めなかったと思うし(実行時の思考は両者ともに一般的な同世代の少女とは著しくかけ 離れているんだけどね)。関連して表紙や口絵イラストも良い仕事してるなぁと。  あきらとアリシアの女同士の戦いはこの中では一番9S本編に近い雰囲気で、それは まあ戦闘描写が濃かったからか。敵同士ではないけれど、本気を出せる関係での緊張感 溢れる探り合い。ただもっと別な意外な繋がりがあって少々意表を突かれた感じ。  最後の壮絶な料理対決が最高のインパクト。内容で一番好きなのは『男の生き方、プ ライスレス』。こういうプライベートな部分もなかなか本編では入れ難そうだなと、八 代のとんだタヌキぶりやハメられた萩原を苦笑しつつ眺めたりで楽しかったです。  既刊感想:IIIIIIVVI 2006/03/04(土)護くんに番外編で祝福を!2
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:岩田洋季/イラスト:佐藤利幸/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  番外編短編集2巻目。今回の範囲はバレンタイン前から新学期前の春休みまで。本編 の合間に起こっていたあれやこれやのエピソード。『護くん』の場合、本編で護と絢子 のいちゃつきっぷりが際立っている反面脇役連中がイマイチ目立てないのだけど、その 分意識して短編でフォローを利かせてくれている辺りは嬉しい限り。今回はやっぱり表 紙で相変わらずな凄い髪型を披露してくれた、汐音の初恋エピソードが良かったな。  次にエメレンツィア。一世一代の告白イベントが終わってしまったら何だかすっかり 弄られキャラになっちゃってまあ(終いには噛ませ犬とか自覚してるし)。いや、マラ ソンやジョシコウセイ・クエストなんかは好き放題やってて楽しそうだな〜って雰囲気 が充分伝わって来て面白かったですよ。まあ最近は登場初期のシリアスモードから転げ 落ちるかのようにコミカルモードに移行してる気がするので……あー別にそのままでも いいか。一応ライバル関係だけど今後絢子と本気で争う事はあまり無さそうだし。  今回は時系列順に並んでいるので、最初と最後で一部役職や立場に微妙な変化が見ら れるのも面白味のひとつかな? それぞれの付き合いの距離は全く変わってないから、 いつも通りの騒がしさ賑やかさだけど。そんな中で一際異彩を放ってたのが絢子と彼女 両親との確執のエピソード。個人的に最も印象に残ったのはこれ。こういう重いのは本 編で絡めて来るかなと思ってたのでちと意外だなと。おまけに結末も予想外で、こうも うちょっと何とかなると思ってたんだけど……護の存在感の大きさだけが救いだった。  既刊感想:       番外編 2006/03/03(金)かしまし 〜ガール・ミーツ・ガール〜
(刊行年月 2006.01)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:駒尾真子/イラスト:桂遊生丸/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  同名コミックのノベライズ。現在アニメも放映中の作品。はずむが男の子から女の子 に性転換してしまい、男を認識出来ない病気を抱えるやす菜が男として一度振ったはず むを好きになり、ずっとはずむが好きな幼馴染みのとまりはそんな二人を見ていらいら やきもき……てな具合の重要な設定は小説版でも動かしようが無いので全く一緒。  一応私が目を通したのはアニメ→原作コミック→小説、の順ですよと断りを入れてお いて。複数のジャンルに触れると比較したくなっちゃうもんで、この作品も意識的に比 べながら読んでみましたが……これは良いノベライズですね! はずむきゅんが女の子 になった自分の身体を風呂に入りながら一々隅々まで細々と確認してる描写が堪らなく エロス! しかも一人称だから「僕のあそこがこーなってここがそーなって……」とか 恥ずかしげに教えてくれる訳ですよ!(しかしこの妙な背徳感は一体何だろう)。  いや、まあ見所はそこばっかじゃないですけど。アニメ、コミックより優れているな と思った点は、前述した一人称文章による感情描写。はずむ、やす菜、とまりに個別の パートがあって、それぞれの視点で描いているので、感情表現の奥深さはダントツで小 説版が上と感じました。特に口には出せない心の秘め事や、好きな人(やす菜、とまり ならはずむ、はずむなら両者)に対する様々な想いの描き方が素晴らしく良かった。  ただ、結末はコミックやアニメに繋がるような無難な纏まりだったので「まあこんな もんかな?」と言った感触。気になる続きはそちらで楽しみましょうって事かもね。 2006/03/03(金)ユメ視る猫とカノジョの行方
(刊行年月 2006.01)★★★★★★☆☆☆☆(6/10) [著者:周防ツカサ/イラスト:森倉円/メディアワークス 電撃文庫]→【
bk1】  何処から来たのかもどんな存在なのかもサッパリ不明な“精神体”と呼ばれるモノが、 主人公宅の飼い猫に憑依して年頃の娘さんに変身してしまって大慌て、な物語。とりあ えず憑依精神体=キリコが飼い主の智季になんら興味も示さなければ好意も抱こうとし ないので、そこら辺に少なからず期待を寄せていた身としては正直面白くも何ともなか ったのですが。ただ、それでも裏表の激しい性格してる円華が精一杯智季へのアタック を敢行してくれたので多少持ち直す(円華と鉄男の関係も結構面白かったので)。  ミケたんは元々素っ気無い猫だったんだろうか? だからキリコも元のミケたんの性 格受け継いで無表情無感情になってしまったんだろうか? ……面白味が薄いので心の 中で小石を蹴っ飛ばしながらぼやいていたのだけれど、そうではなくて元の精神体から キリコはこんな性格だそうで。ああそうか、じゃあ他人から好かれるような性格してな い智季の方に原因ありか、と無理やり納得させる。智季は肝心な所でおちゃらけて目を 逸らそうとする癖があるから、何となく“煮え切らない野郎”な印象で映ってしまうん だよなぁ。僅かに流れ込んだ精神体の影響から特殊な力を扱えるようになった事で、キ リコとの絆が良い方向に強まればいいんだけどね。問題は続きが出るかどうかだけど、 これで単発って言い張るにはあまりに不完全燃焼だから、せめてあと一冊くらいは。


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