NOVEL REVIEW
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08/15 『SHADE Italian Connection』 著者:南房秀久/富士見ミステリー文庫
08/15 『ぼくのご主人様!?』 著者:鷹野祐希/富士見ミステリー文庫
08/14 『天高く、雲は流れ6』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
08/13 『鋼殻のレギオス3 センチメンタル・ヴォイス』 著者:雨木シュウスケ/富士見ファンタジア文庫
08/13 『EME RED8 AOFC』 著者:瀧川武司/富士見ファンタジア文庫
08/11 『魔銃使いZELO』 著者:ひびき遊/富士見ファンタジア文庫
08/11 『君の居た昨日、僕の見る明日4 ―Round-about Runners―』 著者:榊一郎/富士見ファンタジア文庫
08/08 『ソード・ワールド・ノベル 輝け!へっぽこ冒険譚1』 著者:秋田みやび/富士見ファンタジア文庫
08/07 『天高く、雲は流れ5』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
08/07 『BLACK BLOOD BROTHERS(s)2 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集―』 著者:あざの耕平/富士見ファンタジア文庫
08/06 『殺×愛4 ―きるらぶ FOUR―』 著者:風見周/富士見ファンタジア文庫
08/04 『魔法遣いに大切なこと 太陽と風の坂道II Esperanca――エスペランサ』 著者:山田典枝/富士見ファンタジア文庫
08/03 『ソードギャラクシー 風、天を駈けよ』 著者:荻野目悠樹/富士見ファンタジア文庫
08/01 『<骨牌使い>の鏡II』 著者:五代ゆう/富士見ファンタジア文庫


2006/08/15(火)SHADE Italian Connection

(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:南房秀久/イラスト:湊ヒロム/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  シリーズ第2巻。シロガネ情報収集エージェント派遣企業、通称SHADE。合法非 合法に関わらず受けた依頼は何でもこなすスーパー・エージェント・ファミリー。前回 はニューヨーク、今回は依頼を遂行する為イタリアの地を縦横無尽に駆け巡る。言葉が 通じてコミュニケーションが取れたら、水の都ヴェネツィアにでも行ってみたいよ…… なんて思わされる程、現地の様子はかなり詳細に描かれている。実際に取材旅行で調べ たのか、それとも資料で調べたのかは分からないけれど、行った事なくても何となく現 地の情景が頭に浮かんでくる描写はなかなかお見事(これは前巻でも強く感じた事)。  ただ、ちょっと気になったのが、シリーズ作品として興味を先に引っ張ってくれるよ うな確固たる目的がまだ見えてこないなぁと。これ一冊だけならキャラクター同士の掛 け合いは楽しいものだし、一つのミッション完遂までが面白く描かれているのだけれど、 シリーズ通して考えてみるとやってる事は前巻と一緒じゃないかなと。今後も毎度一緒 のミッションクリア展開だと「で、それがどうした?」になってしまいそうなので、も し続くようなら新しい変化を織り交ぜてくれたら思う。個人的には血が繋がってないと 再三言ってる十八と三三十の血縁関係について、もっと深くまで触れて欲しい。  既刊感想:Lost in N.Y. 2006/08/15(火)ぼくのご主人様!?
(刊行年月 H18.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鷹野祐希/イラスト:和泉つばす/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  ご主人様とメイド達、性別逆転のパラレルワールド、想い人を救う為の奮闘に次ぐ奮 闘……などなど。しかしこれもまたミステリっぽく仕立てようと小細工盛り込みの富士 ミステイスト。久々に触れたけど、やっぱしそういうのあまりいらんのでL・O・V・ Eを、もっとL・O・V・Eを! ……とか、真っ向から喧嘩売る発言してみたり。  如何にもメイド萌え作品っぽく見えるけどそれただの錯覚なので注意。メイドスキー じゃないけど、たとえメイドスキーだったとしても萌えない。だって外見女の子でも精 神が男の子なんだもん。加えて軽いノリのラブコメを期待してたら、なんか会社の借金 だの強引な政略結婚だの邪魔者を消すだの殺人だの、キナ臭くて物騒な方向に傾いてば かりじゃないのさ〜。「あああそっち転がって行かないで〜」って心境だった。  ただ、ここから色々な方向に話を広げられそうな点。その可能性を大いに残してくれ た所は要注目。例えば千尋=千広の事(これについては2巻目で描かれているらしい)、 吉朗・麻琴と入れ代わって現世にやって来ていた筈の二人の事など。もっとコメディ方 向でパラレルワールドでの吉朗のメイド生活を見てみたかったので、結末は綺麗な纏め 方だったけど、あっさり元に戻ってしまったのはちょっと勿体無かったかなと。 2006/08/14(月)天高く、雲は流れ6
(刊行年月 H10.10)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  『水網都市』第四藩王領の解決編。今回は殆ど第四藩王内に限定された内容なので、 ユメの魔族側やオルジェイの神王家側のフォローは無し。第四藩王家の権力争い、意図 的に隠された醜い過去と現実、そういうのを織り交ぜて水害事件を解決してゆく展開は まずまず。ただ、これを無事乗り切ってライフォンに少しは近付けたか? と言えば距 離が縮まったという手応えは得られなかったので、あんまり進展はしていない。  前の第三藩王も今回の第四藩王もそうだけど、その領地で事件が起こった所で今後の 展開に何か影響が残るかどうかと考えると、案外何も残らないんだよねぇ。その時々で は結構重要な出来事っぽく「こんな事があった」と思えてるのだけど、少し経つと直ぐ に忘れてしまいそうな感じで。要はどうしても各藩王領での事件が“繋ぎ”の印象にな ってしまうのが少々不満かな……とか。まあライフォンの掌の上で踊らされている、と 思えば手掛かりを掴む為の必要な繋ぎとして受け入れられなくもないんだけど……。  確実に残るのは新規登場キャラクター。とは言え続けて登場して目立った活躍してる のは少ない気もするけれど。今回の場合は今後も残りそうなのアンクくらいかな?  既刊感想: 2006/08/13(日)鋼殻のレギオス3 センチメンタル・ヴォイス
(刊行年月 H18.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:雨木シュウスケ/イラスト:深遊/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  現在富士見ファンタジア文庫内最速刊行ペースで突っ走る好調シリーズ3巻目。何と 4巻も既に10月刊行が確定している模様。これなら年6冊くらい行けるかな? ここ までの進展具合を考えると、6巻程度じゃまだまだ終わらなさそうな気もするし。  開始当初から囁かれていた、鉱山資源を巡っての学園都市同士の武芸大会。そろそろ 何か動きがあるかなと思ってたのだけど、ちょっと話題が出るばかりで大した進展はな かった。どうも武芸大会をメインに置く前に、そもそも『自律型移動都市(レギオス)』 とは一体何なのか……この謎に迫る方を優先させているような印象。汚染獣に壊滅させ られた都市の偵察から、本質の一端が垣間見えたのが今回の事。鍵を握っているのは自 律型移動都市の自我=電子精霊か。この辺りはまだ不明点が多いので何とも言えず。  そしてこの巻の大きな特徴は、レイフォン側のツェルニとリーリン側のグレンダンの 様子が交互に描かれている点。いや、正直内容的にはリーリンの居るグレンダンサイド の方が面白かったぞ。まあ単純にリーリンの登場が嬉しかったり、手探りだった天剣授 受者時代のレイフォンの事を詳しく知る事が出来たり、女王の正体があれでそれで「お おおーっ!」と唸らされたり、興味を惹かれる要素が目白押しだったと言う訳で。  しかしわざわざツェルニとグレンダンを交互に描いてみせたのって、今回だけでなく 今後に影響及ぼす伏線か何かだったりするのかな? この辺りも妙に気になる所。  既刊感想: 2006/08/13(日)EME RED8 AOFC
(刊行年月 H18.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:瀧川武司/イラスト:尾崎弘宜/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  やばい。色々な意味でこいつはやばいぜ。まず新キャラの月下(後に枇杷樹を一番弟 子として迎え“万丈”の名を受け取った男)と枇杷樹(後に月下の一番弟子となり“英 雄”の名を受け継いだ男)。また一般人には理解不能な思考と特殊能力を持つ濃いキャ ラが出てきやがった。ホント今更だけどEMEの人員はこんなんばっかだな。こういう 特に強烈な奇人変人引き寄せる極めて迷惑で嫌な才能を有しているばかりに、本来比較 的常識人な紅も変人っぽく見えてしまう。ただ、紅自身も「どうでもなるようになれば いいや」と諦め切ってる節があるこの脱力感。実は意外と悪いもんでもなかったり。  次に紅の主役としての存在感がやばいと思った。そんなもんあったっけ? とか身も 蓋もない事を言ってはいけない。一応形式上は主人公なんだから。と、まあそんな危機 感抱いたのは今回紅が主役らしいエピソードが殆どなかった気がしたから(半分くらい 月下&枇杷樹師弟に美味しいとこ食われちゃってるぞ)。紅の場合他のキャラを立てる 脇役の位置に居た方が何かしっくりくる……それはそれでどうかと思うのだけど。  ただ、他エピソードで地味に動いていたお陰か、『なにもないいちにち』では紅が妙 に輝いてた。学校内エピソードってのはEMEにとって非常に珍しいもので、それ故に 特別な感じで印象深い。たまにはこんな風に学校の級友達も登場させて欲しいなぁ。  既刊感想:EME BLACK        EME BLUE        EME RED  2006/08/11(金)魔銃使いZELO
(刊行年月 H18.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:ひびき遊/イラスト:巳島ヒロシ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  鉄の鎖が付いた首輪に繋がれた『鎖乙女』と呼ばれる少女。鉄の鎖の端――首輪と反 対側に繋がれた『魔銃』を使役する存在である魔銃使いとパートナーを組む者。鎖と首 輪と少女と来たら連想するのは倒錯的で背徳的な匂いの濃い牝奴隷か何かで、パートナ ーとは名ばかりで表向きなもので、本来魔銃使いは鎖乙女にとってご主人様と崇めなけ ればならなくて、日々虐げられては屈辱に塗れる日々が続きながらも次第にそれが快楽 となり抗う事が出来なくなって際限なく堕ちていってしまう……これはそんな少女の悲 劇の物語……などでは断じてないですよ(それじゃどこかのエロゲになってしまう)。  この物語は立場的にものを言うなら全く逆。しっかり者でポジティブな鎖乙女の卯月 が、臆病者で逃げ癖のあるへなちょこ魔銃使いゼロを叱咤激励するパターン。そもそも 鎖付きの首輪だって自ら望んで志願して付けるものだし、この世界においては『鎖乙女』 という立派な象徴の証なので、羨望の眼差しを向けられる事はあっても蔑まれる事は無 い模様。こっちと価値観が全然違うから別に倒錯的でも背徳的でもないという訳で。  なんか首輪の要素だけで間違った先入観植え付けられ易そうだけど、中身は暗く重苦 しい感じは全然なくて至って明るい雰囲気。文句があるとすれば「おまえらちょっと落 ち着けよ」って溜息吐きたくなる程慌し過ぎる所か。でもアクション盛り込みのドタバ タで楽しい雰囲気は嫌いじゃない。シリーズ展開っぽいので続きを待ってみたい。 2006/08/11(金)君の居た昨日、僕の見る明日4 ―Round-about Runners―
(刊行年月 H18.07)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:榊一郎/イラスト:狐印/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  「これ以上何を書くんだ」ってご意見出るんかな?(あとがき参照の事) むしろこ こから残されている重要な所を描かなきゃならんだろうと思うのだけど。まだ根本的な 部分は何も解決されてないからねぇ。もっともその辺は著者の方も当初からの予定とあ とがきに記しているので、元より筋書き通りなのだろうなと。この巻は言わば“ドラゴ ンマガジンでの連載分の纏め”=“アグニエシカの恋愛の結末”みたいなもんかな。  確かに決着はきちっと付いてた。ただ、納得のゆく形ではなかった。アグニエシカは 前巻から優樹に想いを寄せる過程がしっかり描かれていて、積み重ねによる溜めも充分 だったと思う。問題なのは優樹の方。現実世界の『詩月』に対しての気持ちの変化を整 理してみせた終盤の語りは素晴らしく良かったのだけど、その後の展開がいかん。  たとえ優樹にそんな気が無かったとしても、「そっちがダメだったからこっちに乗り 換えただけでしょ?」と責められでもしたら文句言えんぞこの唐突さは。個人的には優 樹は絶対詩月(しかも鈴乃宮詩月の方)だと思ってたんだけどなぁ……。アグニエシカ のような過程がすっぽり抜けてしまってたのが至極残念。もしかしたら優樹の中できち んと変化があったのかも知れないけれど、こちらに伝わってくる事は殆どなかった。   既刊感想: 2006/08/08(火)ソード・ワールド・ノベル 輝け!へっぽこ冒険譚1
(刊行年月 H18.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:秋田みやび/イラスト:浜田よしかづ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  今までの読書履歴『ヘッポコーズ関連書籍編』。リプレイ1冊、短編集3冊……この パーティの事を色々知った気になってたのは錯覚で、本当は大して読み込んでなかった んだなぁと実感。キャラクターの個性がかなり強いので覚えは非常に良いのだけれど、 様々な内情や辿って来た足跡などは全然把握出来てない(あまり読んでないんだから当 たり前)。そんな私みたくヘッポコーズ知識が足らない人にお薦めの1冊。これはヘッ ポコーズの入門書と言い切っていいんじゃないかな? 元々リプレイが原点だけど、冒 険者としての第一歩が記されているのはこの新シリーズの小説版。誰を主役に立てても 描けそうなんだけど、今回特に強調されてるのはイリーナとヒースにとっての原点。  幼少の頃から冒険者を志すまでイリーナの事が満載。自分が掲げる正義にくそ真面目 な程真っ直ぐな所はずっと変わってなくて。でも実直なだけじゃ冒険者として世を渡り 歩く事は出来ない、と初めて他人から突き付けられて悩み迷いながら前に進もうとする 姿もいい感じで描かれている。あと初恋と言えるのかどうか微妙なフェルツとの触れ合 いとかも。女の子らしく振舞うイリーナは普段お目に掛かれないから妙に新鮮だった。 2006/08/07(月)天高く、雲は流れ5
(刊行年月 H10.07)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  これで全行程の三分の一を踏破。これだけの長さを考慮すると、いつも「ゆったりな 展開だな」と感じているのが実は丁度良いくらいなのかな。あまり進展しているように 見えないのは、今の所全部の藩王領を巡るのだろうと仮定して読んでいるせいか。  フェイロン一行はライフォンの誘いに乗る形で第四藩王領へ。『水網都市』と呼ばれ る領地で、住民が然程珍しくもない水害に苦しめられている噂。今回分かったのは水の 魔物による被害はライフォンの手によるものという事だけ。水害の正体や、ライフォン の下で動いているのが誰なのかはまだハッキリ分からない。まあライフォンの目論み自 体現時点では全然把握出来てないんだけど。子供からいきなり青年へ成長したみたいな 描写もあったけど何故そうなったのかも不明だし。謎はまだまだ解かれそうにない。  しかし今回はちょっとだけ満足度が上昇。理由はあまり語られなかった魔族としての ユメの事に結構触れてくれたのと、オルジェイが魔族嫌いになった原因を知る事出来た から(この二人って再びフェイロンと絡むとしたらあと何巻後になるのかなぁ)。  既刊感想: 2006/08/07(月)BLACK BLOOD BROTHERS(s)2 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ短編集―
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:あざの耕平/イラスト:草河遊也/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  やあみんな、ぼくコタロウ。みんなは知らなかっただろうけど、実は長編と長編の合 間にこんなに色々な事が起こっていたんだ。面白可笑しいでしょ? ……とかコタロウ くんが語り掛けてくれたら楽しいだろうなと妄想働かせつつ読んでみた。大事件の中で はどうしても描き切れない隙間を埋めるべくの些細な、でも多彩な日常エピソード。  時々脇役関係で「このキャラ長編で出てたっけ?」と考え込む事があって、とりわけ 短編は雑魚から強者まで色々な血統の名が挙がってるから、重要キャラなのかそうでな い使い切りキャラなのか見極めに結構手間取ったりとか。んなもん一々気にしてたらき りがないってのもあるんだけど、単発キャラでも魅力的で味のある奴が多いもんだから ついつい気に掛けたりとか。その辺の脇役の描き分けで「巧いなぁ」と唸らされる。  今回はジローとコタロウが時間にルーズ→そのせいで毎度大ピンチに陥るミミコにど つかれる、のコメディ一本槍ではない様々な日常風景が印象的。極めてシリアスムード な『ネズミたちの夜』『外よりきたる牙』では珍しく渋味の効いたジローの格好良さが 出ていて良かった。もっとも、その後のセイに美味しいとこ全部持っていかれちゃった 感じだったけど。こういうのこそ長編では絶対拝めない短編ならではの醍醐味。  そして今回初めての書き下ろし過去編も期待通りに面白かった。これもまた現世では 見れないアリス、ジロー、カーサの関係。書き下ろしは是非この方向で行って欲しい。  既刊感想:       (s) 2006/08/06(日)殺×愛4 ―きるらぶ FOUR―
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:風見周/イラスト:G・むにょ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  学園祭。何か今まであまりメインとしては描かれなかった雰囲気。ふつーに三角関係 のラブコメやってる……と、すっかり安心させられてしまったけれど、実はそれが罠だ った。最後まで行き着いて巻末のあとがぎと予告ページを見れば、心地良い現実にたっ ぷり浸け込んだ後で一気に奈落の底へ突き落とそうと狙っているのが良く分かる。最初 からこうなるの前提にぬるま湯の感触を密に植え付けてるもんだから、えげつないった らありゃしない。上昇した後はもうひたすら落下する道しかないみたいので、「誰が天 使の犠牲になるのか?」って事ばかり考えてしまう。密の近しい人の誰にも犠牲になっ て欲しくないけれど、段々奇麗事を言ってられない状況になりつつあるのも事実で。  あ〜も〜次を読むのが恐いな〜。ドラゴンマガジンで連載されてるからそっちで先の 展開を知る事は出来るんだろうけど……。それにしても今回の仕込みはホントえげつな いよ。↑でも書いたけど。こんな幸福絶頂な学園祭風景を描いておいて次で叩き落す予 告するなんてさ〜(いっそ世界の終末とか天使の脅威とかそういうの放り投げて、三角 関係のラブコメやってりゃいいじゃないか! と、ちょっとだけ思ってしまった)。  でもまあそうなったらなったで話が進まなくて困るだろうから、どんな風に突き落と されるのか震えながら待ってみる。温もりに浸りかけた所でブラック密再臨。今度こそ サクヤを利用する為に冷酷に徹するのか。それに遂に密に告白してしまった来夏との関 係はどうなる? せめて来夏っちだけは犠牲にならないでくれよと願うばかり。  既刊感想: 2006/08/04(金)魔法遣いに大切なこと 太陽と風の坂道II Esperanca――エスペランサ
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:山田典枝/イラスト:よしづきくみち/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  前回少々不足してた“魔法遣い”の要素。ナミの魔法遣いとしての資質を物語の中で うまく活かし切れるかどうか……という点を期待と心配抱えながら読み進めてたのだけ ど、今回はナミの心の成長と共に充分魔法と魔法遣いの設定が重要な役割を果せていて 良かった。タイトルの『魔法遣いに大切なこと』とは一体どんなことなのか? なんて 部分も、ナミが魔法から逃げず真っ直ぐ向き合う姿勢からしっかり語られていたし。  あとはもう前巻同様各々の恋愛模様が身悶えするほどに素晴らしくて。やっぱり描き 方がめちゃくちゃ好みだ。もっとも、ナミの中で形作られていた友情の輪が瓦解してゆ く様は凄く辛かったりもする。それぞれの胸に秘められた一方通行な想いが大体見えて いるから余計にね。しかしこれだけ掛け違いのように片思いだらけで気持ちが繋がって るのも切ない。想われている相手の心に気付けず振り返れずだからなぁ。ただ、その分 色々な事でもがき苦しみ抜いて幸せを掴んだナミの姿を見て凄く嬉しく思った。  最後に“あの”アホ毛の娘が登場した時は「前作と繋がった!」とつい力んで漏らし てしまった。成る程そういう出逢いがあったのかと。本当は欲を言うと卒業を経てナミ と龍太郎と親友達が新たな進路を歩み始める所まで描いて欲しかった。その辺りがちょ っと物足らずで残念。それでも充分満足のゆく内容で楽しませてもらえました。  既刊感想: 2006/08/03(木)ソードギャラクシー 風、天を駈けよ
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:荻野目悠樹/イラスト:バハムーチョ/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  三千年前の剣豪はどうしようもない困ったちゃんだった。そりゃ周囲の状況無視して、 敵将の真っ只中に単身突っ込んでゆく(一度ならず二度までも)ような奴の心理を理解 しろってのが無理な話だ。結局最後まで辿っても、剣豪スケザ(冷凍サンプル)の行動 思考がサッパリ読めなかったよ。そもそも“敵対する相手の中の一番強い奴をこの手で 斬り刻んでやる”事しか頭に無くて、他に何も考えてないようだから頭の中が見えない のは当たり前なのかも知れない。だって最初から“思考”なんて無いんだもん。  その突飛過ぎる行動で迷惑ばかり撒き散らしている割に、あまり作中で目立っている という実感が湧かなかったのは言葉の少なさ故か。主人公と言える存在が希薄だったの が微妙に感じた要因の一つで、クリスティアンも主人公だと挙げるには印象弱かったか らなぁ。一番活躍してたのって実は事ある毎に役立ってたPALなんじゃないのか?  ストーリー的にも主軸がハッキリしなくてイマイチな手応えだったかな〜と。スケザ の三千年の時を経ての目覚め、帝国での強大な王家同士による内乱勃発、帝国と地球連 合との敵対関係……これらの何処からも物語を発展させる事が出来ないまま終わっちゃ ったいう感じで。これまでが全て前座で、アリエルが傭兵隊結成を余儀なくされたここ からが本当のスタートと捉えるべきか。何にしても浮くか沈むかは続きの内容次第。 2006/08/01(火)<骨牌使い>の鏡II
(刊行年月 H18.06)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:五代ゆう/イラスト:宮城/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  いろんなものがぼやけて見えた。それがダメとかそういう事ではなくて。2巻目ラス トまで来ても、まだ全てを明かせる段階には達していない為に発生するもどかしさとか そういうの。終盤一気に盛り上がりを見せてくれて手応え充分だったのだけど、「あ、 そ、そこで切っちゃうの? ……くっ! つ、続き……続きを、は、早くっ!」てな具 合でしたよ。幕引き凶悪(良い意味でね)。まだくっきりと形を成すことが出来ない幾 つもの要素。最たるものはアトリが宿す『十三』の『骨牌』の真なる力。『樹木』アド ナイの言葉も助力以上にはならなくて、結局はアトリ自身で物語を紡ぎなさい、と。  『十三』については前代のジェルシダ公女の意志が残っていて、それがアトリの中で 息衝いているような……今回アトリ自身が力を暴走させないように気を張っていたから、 表に出る事も無くて詳細は掴めなかったけど。それに関連して『傾く天秤』のモランが 謎に包まれた『十三』の力を何の為に利用しようとしているのか? これも掴めず。  あとはロナーが本当に『王冠の天使』を継げていたら状況はどうなっていたか……ま あこれはそうならなかったものを蒸し返した考えなので、幾ら頑張ってみても現時点で 答えが出るわきゃないけど。ただ、継承の可能性が完全に断たれたとも言えない。  しかし最後の怒涛の攻めは凄かった。言わば読み手側にとって同調したいと思う『同 志』達が完全に劣勢。ほぼ望んだ何もかもを手中に収めつつある敵対者に反撃するだけ の力も残されてなさそうで。どうにかして絶望的な状況からの好転を見せて欲しい。  既刊感想:


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