NOVEL REVIEW
<2006年11月[後半]>
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11/30 『カオス レギオン02 魔天行進篇』 著者:冲方丁/富士見ファンタジア文庫
11/28 『天高く、雲は流れ8』 著者:冴木忍/富士見ファンタジア文庫
11/27 『死神とチョコレート・パフェ2』 著者:花凰神也/富士見ファンタジア文庫
11/26 『銀月のソルトレージュ ひとつめの虚言』 著者:枯野瑛/富士見ファンタジア文庫
11/24 『ご愁傷さま二ノ宮くん6』 著者:鈴木大輔/富士見ファンタジア文庫
11/23 『抗いし者たちの系譜 覇者の魔剣』 著者:三浦良/富士見ファンタジア文庫
11/19 『ソード・ワールド短編集 ぺらぺらーず漫遊記 乙女の巻』 著者:藤澤さなえ/富士見ファンタジア文庫
11/18 『ロケットガール2 天使は結果オーライ』 著者:野尻抱介/富士見ファンタジア文庫
11/16 『タクティカル・ジャッジメント9 被告人・山鹿善行』 著者:師走トオル/富士見ミステリー文庫


2006/11/30(木)カオス レギオン02 魔天行進篇

(刊行年月 H15.12)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:冲方丁/イラスト:結賀さとる/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  おおおー! すげー久々に読んだら色んな事を忘れちまってたぜ。自分で書いた既刊 の感想やら今作のあとがきやらを眺めた所で、ようやくこれまでの流れを少しは掴めた ……気がする。ええと、第一作『聖戦魔軍篇』がジークとドラクロワの因縁の結末を描 いたもので、その最終的な結末を目指し過去から歩み続けている途中を描いているのが 現段階の物語と。ん、これさえ思い出せばキャラクターは覚えてるので多分大丈夫。  内容的には今回より雑誌掲載から書き下ろしとなり新展開という感じか。いやしかし ……これは凄いね。新天地を求め二万人の大移動をたった一冊で纏め上げている事もそ うだし、故郷を失った大多数を聖堂の使者としてジークがたった一人(正確にはノヴィ ア、アリスハートも含まれるんだけど)で最後まで導いてしまったのも、そんな大仕事 すらジークにとってはドラクロワに近付く為の一作業に過ぎない事もそう。  二万人の内“途中で誰一人として脱落者が出なかった”、と言うのはもしかしたら出 来過ぎな部分もあるかも知れないけれど、それでも新天地を目指し二万人の民が一致団 結して行進する姿ってのは圧巻以外の何ものでもなかった。ジークの策も全てにおいて 研ぎ澄まされ、窮地に陥ってもその冴えを失わず。そして終盤のあのノヴィアの頑張り を垣間見て激しく胸を揺さ振られてしまった(ここまでの盛り上がりを見せておきなが ら未だ道半ばとはねぇ)。次はレオニスの更なる狂気が溢れ出る事になるだろうか?  既刊感想:聖戦魔軍篇       01 2006/11/28(火)天高く、雲は流れ8
(刊行年月 H11.08)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:冴木忍/イラスト:森山大輔/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ようやく全行程の半分越えた。前巻で衝撃かつ驚愕の事件が起こってしまったけれど、 今回大王家&神王家サイドは一旦横に置かれた形だったので、それ程目立った動きは無 くて。本当は引き続きこちらの騒動をメインにして欲しかったのだけど、放っておかれ たままではないと思うから、今後描かれる事になるのかな? メインはフェイロン達の 側で、王家の一大事が神殿からの情報として耳に入って来たのみ。王都からは遠く離れ ているから詳細を知る為に戻りたくても簡単には戻れず、普段喜怒哀楽をあまり表に出 さないロスメスタが「帰りたい……」と涙を流してしまうシーンが凄く切なくて……。  話の方は大して進展せず。新たな問題提起が主で、どうやって切り抜けようかと第二 藩王地で試行錯誤の足踏み状態。色々な状況が混在していて、まだまだ一本の線で繋が りそうにはない。でも、どの状況の先にもライフォンの影がチラついていて、それなの に当の本人は一切登場してないのが一層不気味さを醸し出している。現状で特に追うべ きはフェイロン達から離れたパジャの動向、そして砂漠の魔物ギャウルーの存在か。  既刊感想: 2006/11/27(月)死神とチョコレート・パフェ2
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:花凰神也/イラスト:夜野みるら/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ふと思う。これまでイリスの極刑で実際チョコレートパフェにされた奴っているんだ ろうか……と。彼女の神名とナギに対する態度を見るに、本気のようでいて実は単なる 脅しだけのような気もするし、鬼のような決定を下している割に肝心な所では微かな温 情が窺えたりとか。今回も彼女は基本的に問答無用で聞く耳持たずだったから、神名じ ゃないけど「この鬼!」と罵りたくなった。でも、ナギが倒れた時に何とかしてみよう と動いてくれてたから、結局は「手を貸したいけれど上司としての立場を優先させなけ れば」ってとこなのかな? そういう内面は絶対表に出さなさそうだけどね。  と、イリスの魅力を何となくプッシュしてみた。まあ今回の場合、最も注目すべきは 新キャラ登場ってとこなんだけど。神名とナギに“本来死ぬ筈だったけど手違いで生き てしまった沙耶架を殺す”なんて任務遂行出来る訳がない! と思ったから、ついつい ↑のようにチョコパフェ化の極刑について考えてしまった。そして改めて想像してみる と、かなりお間抜けで無様な末路だなぁと(だって食べられちゃうんだよ?)。  とは言え傍から見たら間抜けでも無様でも、命懸けな神名とナギにとっては笑い事で も何でもなくて。いや、この物語の性質から悲惨な結末にはならないだろうと思ってた けど、「これどうやって解決するんだ?」なんて心配はずっと抱いてたので。もっとも、 最後は「んな解決の仕方って有りなのかよ!?」とか突っ込みたくなったけど、これは神 名に隠された謎の力が関係してるんだろう。次はその辺りが軸になって来るのかも。  既刊感想: 2006/11/26(日)銀月のソルトレージュ ひとつめの虚言
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:枯野瑛/イラスト:得能正太郎/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  史実が有名な物語として舞台上映される程の現在。しかし、世間一般で当たり前のも のとして認識されている史実の裏側に、本当はこんな真実が隠されていたんだよ、って のが大まかな所かな。んん〜、前半の物語への没入具合は素晴らしく良かったのだけど (やっぱりここはリュカとアリスのいちゃつきが大きな要因だったかと)、戦いの中で “魔法使い”らしき能力が発現した辺りから、頭での理解力がどんどん追い付けなくな ってしまって参った。でもこの“不死の魔法使い”の能力って簡単には理解し難い部分 だよねぇ、とか思ったり(読解力が足りないせいだったらごめんよ……)。とにかく頭 の中で戦いのシーンが描けなくて。想像力で補い切れないのがネックだったかなぁ?  と、この物語への不満は大体特殊能力の把握し難さに掛かってたわけで。自分なりの 解釈で「多分こうではないだろか?」というのは勿論あるのだけれど、結局最後まで読 み切って完璧に把握出来たか? と問われたら「否」だったから。もっとも、シリーズ として巻が進めば、掴み損ねた部分も徐々に浸透して来て頭で描けるようにもなるんじ ゃないかなと。なので前みたいな1巻打ち切りは勘弁。続きがちゃんと出ます様に。 2006/11/24(金)ご愁傷さま二ノ宮くん6
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鈴木大輔/イラスト:高苗京鈴/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  新キャラ登場で梃入れか? な感触の修学旅行一日目。とりあえず毎度言及しておか なきゃ気が済まないのは、これはラブコメなんかじゃない! ラブコメの皮を被った何 かなんだ! って事。醸し出されている雰囲気はラブコメ以外の何物でもないんだけど ねぇ。かと言って今回の場合、真由が麗華に一方的に口撃を受けた時や、麗華がサキュ バス覚醒した時みたいなどシリアス展開ってわけでもなかったかな。まあ修学旅行の中 途で続いてるから、盛り上がりに期待を掛けているのはもっと先の方なんだけど。  終盤で張られた伏線はやっぱりサキュバス絡みなんだろうか? たすくといろりの会 話からは初めて出て来る固有名詞の連発で、何を言ってるのかイマイチ掴み切れなかっ たのだけど、その辺りも次巻待ちかぁ。……にしても、この峻護の押されまくりな様子 を見る度に一々イライラが募って仕方がなかったな。もっとも、いろりがサキュバスだ としたら抵抗出来ない何かが峻護を強制的に縛っていたという事もあり得るか(まだ確 定されてはいない、と思う)。たすくについては、この異性の惹き込み具合を見るに、 サキュバスの男版ってとこなのか? これもまた憶測の域で……何か色々と謎が膨れ上 がってしまった感じだけど、溜まった疑問は今後の展開でスッキリさせて欲しい所。  既刊感想:ご愁傷さま        おあいにくさま  2006/11/23(木)抗いし者たちの系譜 覇者の魔剣
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:三浦良/イラスト:KIRIN/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  シリーズ第3巻。玉座で構えるサラの内情が綴られる様子に触れてみると、案外余裕 綽々という雰囲気ではなくて、主に諸侯等の下らない嫌がらせに辟易させられているよ うで。腹に一物抱えている諸侯等の叛意が明確な形となって表れる前に手を打っておこ う、という思惑で今回の魔剣発掘騒動を最大限に利用した……ってとこかな? なんせ サラに叛意ある者は吐いて棄てる程居るようで、その癖誰も彼もが馬鹿ではない(むし ろ嫌がらせも計算の内とあるように頭の切れる者の方が多い)から無視も出来ないと。  今回は新しい謎がチラッと顔見せた所で終わってしまったので、続きの盛り上がりに 期待するとして。ちょっと一点だけ巻が進むに連れて気になってきているのが、ふと立 ち止まって考えてみるとサラが抱えている『復讐』って何だったっけ? って思ってし まう事なんだけど……ま、拙いかなこの読み落としは。でも、最近目の前に事件への対 処がメインで、サラの“最終的に目指す所”が何処なのか、多少ぼやけているような気 もしてたり。まあ一番の希望はラジャスをもっとサラに接近させて、彼女の中だけで隠 している恋心をぐらぐら揺らして欲しい、って事なんだけど。これも今後に期待か。  既刊感想:逆襲の魔王虚構の勇者 2006/11/19(日)ソード・ワールド短編集 ぺらぺらーず漫遊記 乙女の巻
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:藤澤さなえ/イラスト:かわく/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  ぺらぺらーず2巻目はドラゴンマガジン掲載分収録だそうで。前巻と違うのは、合同 作でなくリプレイでGMされている藤澤さんのみの執筆、そしてメンパーを均等に描く のではなく1人に焦点を当てて描いている点。今回は乙女の巻=ベルカナの巻、という わけで全編ベルカナが主役的位置付けなエピソード。確かに頼りなげな貧弱少年より可 憐(かどうかは極めて微妙な所だけど)なお嬢様の方が華があって映えるわな。  ベルカナがメインであるが故に、当然ながら他のキャラ(とりわけシャイアラとブッ ク)が割を食ってしまうのは仕方のない所なのだけど、その分ベルカナの魅力全開な内 容は他の不足を補って余りあるもの。前巻を読んだ限りで、「ベルカナってこういうキ ャラだよな」と掴めていた特徴はほぼそのまま表れていたのだけど、今回はそれ以上に 彼女の多彩な表情や内面の感情描写を堪能出来て満足。結構期待していたクレスポとの 絡みも、ベルカナの方で予想してた以上に“脈あり”だったし。各エピソード中とりわ け印象に残っているのは書き下ろしの『ライアー・ラヴァー』。現メンバーと別離する かどうかで揺れ動くベルカナの心の葛藤が随所で実に良く効いていたと思う。  ……しかし、んな誰も彼もあからさまに貧乳貧乳と指差さんでもいいのに。ちょっと ベルカナ(のぺったんこな胸)が不憫に思えて来た。まあ茶化されて憤慨するベルカナ の様子も見ていて楽しいんだけどね。また今度別キャラでこういうのやって欲しい。  既刊感想:ぺらぺらーず漫遊記 2006/11/18(土)ロケットガール2 天使は結果オーライ
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:野尻抱介/イラスト:むっちりむうにい/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  新装版3ヶ月連続刊行の2巻目。ゆかり、退学させられた母校へシャトルに乗って御 礼参り。いや、これもまた日常茶飯事的なトラブルで本来の着地点から大きくずれてし まった結果なのだけど、偶然にしては狙い過ぎな不時着ポイントへ降り立ったな〜とい う感じ。やっぱりあれか、母校に対する“無意識の内の呪い”なのか? そんなの普通 なら鼻で笑い飛ばせるのに、マツリに指摘されると洒落にならない辺りが恐い……。  今回は初っ端からゆかりとマツリが実験飛行の真っ只中で、↑のような不時着トラブ ルが切っ掛けで新たな人材=女子高生宇宙飛行士候補スカウト、てな流れ。しかし茜み たいな娘はあの超過酷訓練には絶対耐えられんだろ? と思わされるような外見であり ながら、実際には根性で乗り切ってしまう。人は見掛けでは判断出来ない大した適応力、 と言うべきか。それとも、茜の隠れた才を見出したゆかりの観察眼を讃えるべきか。  後半は宇宙に上がっての船外補助活動がメイン。ドッキングやランデヴーなどの様子 がどうしても想像として頭に浮かび難いのは、やっぱり知識が追い付かないから仕方な い事なのかな。それでも、会話シーンを主に何となくで読めてしまう取っ付き易さに助 けられている所もある訳で。動作的な部分は放映予定のアニメの方で掴めたらいいな。  既刊感想: 2006/11/16(木)タクティカル・ジャッジメント9 被告人・山鹿善行
(刊行年月 H18.11)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:師走トオル/イラスト:緋呂河とも/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【bk1】  第1部完……え? これも? ってのが素直な感想。但し昨日の『エクスプローラー』 と違うのは、あとがきで第2部開始の予定がある、と明確に述べているから。どうも主 役交代らしいのだけど、こういう部分も某逆転法廷ゲームをしっかりなぞってるなぁと いう印象。まあ同じように刑事裁判を連ねていったとしても、主役が変われば法廷戦術 も当然違って来ると思うので、毎回これだけ丁寧な作品作りをしてくれているのを考え ればそう簡単に飽きが来る事もないと思う。善行の目に余る悪逆非道ぶりや、追い込ま れた時の悪足掻きなんかは今も読んでて楽しいのだけど、これだけ巻を重ねると別の新 鮮味が欲しいのも確かで。短編はこのまま続くそうだから、長編は新展開に期待か。  んで、書く順番逆になったけど今回の事。タイトル通り、遂に山鹿善行殺人罪で逮捕 される! ……とは言っても当然ながら濡れ衣の冤罪。でも、これって今まで善行が散 々やって来た事をそっくりやり返されただけじゃねーの? と少なからず思わされてし まう辺り、あまり同情の余地もないというか。しかしよくまあこれだけあの手この手使 って針の穴程度の抜け道を押し広げられるもんだ、とつい感心させられてしまった。  今回は伏線の仕掛け方が分かり易く(冒頭の録音テープやコカペブシブルーの事など)、 それでいて開示のタイミングと使い所が巧かったかなと(主に善行を窮地に追い込む方 向でね)。最後のオチでニヤリとさせられて満足感に浸りつつ一旦の閉幕。とりあえず、 ひとつだけ言える事は……このままだと善行は雪奈と一生結ばれそうにないな、と。  既刊感想:       SS


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