NOVEL REVIEW
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02/15 『なつき☆フルスイング! ケツバット女、笑う夏希。』 著者:樹戸英斗/電撃文庫
02/13 『世界平和は一家団欒のあとに』 著者:橋本和也/電撃文庫
02/13 『扉の外』 著者:土橋真二郎/電撃文庫
02/11 『ミミズクと夜の王』 著者:紅玉いづき/電撃文庫
02/10 『戦嬢の交響曲1』 著者:築地俊彦/ファミ通文庫
02/10 『地獄少女 うつろいの彼岸花』 著者:天羽沙夜/ファミ通文庫
02/09 『108年目の初恋。』 著者:末永外徒/ファミ通文庫
02/08 『声で魅せてよベイビー』 著者:木本雅彦/ファミ通文庫
02/06 『バカとテストと召喚獣』 著者:井上堅二/ファミ通文庫
02/05 『ほおむステイ☆でい〜もン!』 著者:鯛津ゆうた/ファミ通文庫
02/03 『銀星みつあみ航海記 LOG.01 彼女が家出した動機』 著者:鷹見一幸/角川スニーカー文庫
02/02 『スプライトシュピーゲルI Butterfly&Dragonfly&Honeybee』 著者:冲方丁/富士見ファンタジア文庫
02/01 『オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White』 著者:冲方丁/角川スニーカー文庫


2007/02/15(木)なつき☆フルスイング! ケツバット女、笑う夏希。

(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:樹戸英斗/イラスト:ほんだありま/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  第13回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。  「フリル、」「レースつき、」「Tバァアアアアック!」……ナイス掛け声だ! ケツ バット女こと夏希を差し置いて今回の掛け声大賞は智紀に決定。いや、続編なんて出るの かどうかも定かでないデビュー作の途中なのに、この夢魔退散フルスイング時の“掛け声” が今後色々と仕込まれてくれたら楽しいだろうなぁ、とか思わされてしまったので。  しかし……こんなにもメインタイトルから内容を推し量れない作品ってのがあるもんな んだなぁ。むしろ「あっていいのか?」なんて疑問系にしたくなったり。インパクト絶大 →良い意味でバカバカしい→と来ればこれギャグコメディに違いない……という読書前予 想はものの見事に外された。この作品っぽく言うなら球種を読み違えたってとこか?  心身ともに切り刻まれ傷つき果てた現実か? 心地良い願望で形成された夢魔の見せる 幻想か? どちらを選ぶか、どちらで生きるか、そしてどちらが幸せかは夢魔に憑依され た当人次第。今回のケースでは半ばヤケクソ気味の勢いと、憑依された当人の意思が現実 に傾いてくれたお陰でどうにかなったけど、結構ギリギリのラインで危うい所だった(最 後のは特に)。もし、夢魔を抱いて幻想に生きたいと願う者が現れたらどうなるか……と 考えてみたんだけど、そういや夏希の件が片付いたから、智紀の夢魔退散の役割も終わっ ちまったのか? ケツバットで夢魔を追っ払うなんて面白いアイディアをこのまま埋もれ させるには勿体無いと思うので、また夏希&智紀のコンビで大暴れして欲しいな。 2007/02/13(火)世界平和は一家団欒のあとに
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:橋本和也/イラスト:さめだ小判/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  第13回電撃小説大賞『金賞』受賞作。  一家団欒(仮)。志乃お母さんが愛してやまない耕作お父さんが影も形も見当たらない ので(仮)。ううっ、物語の中でさえ親父という存在はかくも肩身が狭いものなのか…… ってこの家族の雰囲気からしてそれはないか。単に出張の多いお父さんではないかと思う んだけど、今回の騒動中でこうも徹底的に家族の輪から存在感を切り離されてしまうと、 余計気になるというか何というか。次の為に温存されてるんだろうか? 興味津々だ。  「神サマなんて居るのかな……」と、軋人が空を見上げて呟く様が目に浮かぶ。誰が星 弓家に“世界の危機を救う”という使命を与えたのか? 分からないから誰に問い掛ける 事も出来ず、なら神サマの仕業にしちまえ〜居るかどうかなんて分かんねぇけど関係ねぇ よ、とか大体そんなノリで。アットホームコメディと思ってたけど結構色合いが違う。  想像と違ってたと言えば、“世界平和維持の為に人知れず悪を駆逐する”という展開と 思ってたらそうでもなくて。外側にある敵への対処問題ではなく、内側にある家族問題の 方に比重が置かれている。でもそれは私の望んでた方向に傾いてくれた“違い”だったの で、むしろ嬉しかったかなと。基本的には軋人の性格が軽めに表に出ているので、コメデ ィ寄りになっているのだけど、抱えている能力が絡むと随分重くなってくるよなぁ。  個々のキャラクター性は少々出し惜しみ気味な感触。限定で突出させるのではなく、平 等に分散させていたからだろうか。ただ、この作品の流れだと続編は非常に作り易いんじ ゃないかなと思うので、家族それぞれの個性をもっと存分に発揮してもらいたい。 2007/02/13(火)扉の外
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:土橋真二郎/イラスト:白身魚/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  第13回電撃小説大賞『金賞』受賞作。  初っ端から望んで“孤立無縁”を選択した者(紀之)の行く末は、果たしてこの物語上 で勝者だったか? それとも敗者だったか? 「俺は決して正体不明な存在の言いなりに はならねぇよ」と突っ撥ねてみても、結局“多対一”のクラスの軋轢によって弾き出され、 他のクラスから手を差し延べられてもそこに自分の居場所を見付けられず、気が付けば紛 れもない敗北者。ただ、最後に自分の置かれた立場を受け入れる事が出来た紀之(と隣に 寄り添い手を繋いだ彼女)は、他の誰よりも勝利者となる事が出来たのかも知れない。  しかし結局一番描きたかった事って何だったんだろう? と考えてみて、これって実は 戦略シミュレーションではなく、自分達に仕掛けられたゲームの謎解きでもなく、流れに 流された紀之の“終着点”だったのかなぁと。いや、これらを並べて比較すると、まとも にケリをつけてるのって紀之の事だけなんだもん(それだって納得してる訳じゃない)。  こんなどう反応を返せばいいんだかひたすら困ってしまうような結末なんて望んじゃい なかったんだよぅ……。ううむ、このラストからリトライ出来ないもんかね〜。どうも紀 之は結末を受け入れてるっぽいので、新たな切っ掛けを与えてやらないとどうにもならん 気もするけれど、ほぼ丸投げに近い終わり方してたのでその辺を何とかして欲しい。 2007/02/11(日)ミミズクと夜の王
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★★★(10/10) [著者:紅玉いづき/イラスト:磯野宏夫/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】  第13回電撃小説大賞『大賞』受賞作。  初めてミミズクに触れた時、直感で「これはやばいな」と。で、その直感通りに寸分違 わず私のウィークポイントを貫いてくれた。実際に小説読んで泣くって事はまず無くて、 この作品に関してもその点は同様だったのだけど、心の中ではもうボロボロボロボロみっ ともなく垂れ流れてた。この物語の持つ純粋さ純真無垢さに、身体の何処かに溜まってい た不純物が一気にものの見事に洗い流されてしまった感じ。多分今ツヤツヤ。……書いて る自分でも「何のこっちゃ?」と思わなくもない意味不明な表現だけど構いやしない。  突き詰めると、あれも知りたいこれも知りたいと色々な詳細を求めたくなる部分もある にはあるのだけれど、これ以上乗せると重荷になってしまう。脇役は必要最小限に、でも ミミズクを一層際立たせる存在感は決して損なわず、この辺りの匙加減が本当に絶妙。  そして何よりもミミズク。「自分は人間じゃない」と言い張り「喰われたよぅ」と願う 少し足りないミミズクが愛しくて、“好意”という意味さえ知らずに夜の王に惹かれゆく ミミズクが愛しくて、大好きな夜の王が蹂躙されて絶叫するミミズクさえ愛しくて、記憶 を失った事で幸せに包まれたミミズクが愛しくて、知識を蓄え再び記憶を取り戻し絶望に 打ちひしがれるミミズクが愛しくて、夜の王と添い遂げ本当の幸せを掴む事が出来たミミ ズクが愛しくて、身悶えする程にミミズクの全てが愛しくて愛しくて堪らなかった。  こうなると早くも次作への興味が。気が早いかもだけど今から楽しみで仕方がない。 2007/02/10(土)戦嬢の交響曲1
(刊行年月 2007.01)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:築地俊彦/イラスト:赤賀博隆/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  乙女の園に異物混入。なのに穢れモノのように扱われないのは何故だ? いや、周囲全 ての女子高生達に汚物を見るような目を向けられると居た堪れなくなってしまいそうだか ら、別にそういう状況を望んでるわけじゃないんだけど。見ず知らずの野郎が放り込まれ た割に、意外と騒動にならないよな〜という印象で……はっ! それだとまぶらほと被る からかっ!?(注:全然被ってませんから)。設定は女子高でも一般的な“女子高”のイメ ージは薄く、戦士としての技術を育て能力向上を目指す“職業訓練校”のイメージが濃い から、色恋沙汰や男女関係なんて部分が目立って浮かんでこないのかも知れない。  そんな訳で初っ端はラブコメよりアクション増量。あ〜そもそもラブコメって雰囲気の 物語じゃないんだけど、そっちの方向で走ってる時のまぶらほが妙に頭を過ぎってしまっ てねぇ……。ただ、結構想像してたより違う手応えを味わえたのは収穫だったかな?  とりあえず現状分からん事や伏せられている事が多過ぎるので、早く続き読んで追っ掛 けたいって気持ちが一番。祐鹿の無属性能力について、雪風が仇と追っている敵の存在に ついて、その敵らしき男が霊機(ラルワ)を作って三瀧高校を襲撃させた理由についてな ど色々。祐鹿と雪風の成長と触れ合いについては今後もきちっと押さえて欲しい。 2007/02/10(土)地獄少女 うつろいの彼岸花
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:天羽沙夜/イラスト:南野彼方/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  同名アニメのノベライズで中編作二本立て。一応私のアニメ視聴状況に関して触れると、 第1期全話視聴で第2期中途離脱と言った具合。二籠(第2期)の方は確か地獄少女=閻 魔あいの素性により近接してゆくような感触のスタートだったのだけど、今現在はどんな 風になってるのかハッキリ分からない。もっとも、この小説版でのあいの絡みは藁人形受 け渡しと地獄送りの儀式時のみだったので、アニメ途中離脱でも問題はなかったかな。  小説版でやっている事はアニメの内容と然程変わらない。大体既に第1期で様々なパタ ーンが出尽くしちゃってる感があったので、それが映像から文章になった以外で目新しさ は見当たらず。……でも、なんだろ? 結構見慣れてるパターンなのに、妙に先の展開が 気になってしまい次へ次へと追いかけたくなるエピソードだったなぁ。主要登場人物は少 なめ設定だから、誰が地獄へ堕ちるべきかの所謂“ターゲット”的存在は絞り込み易い筈 なんだけど、そうあっさりとは悟らせない描き方がなかなか巧妙で良かったと思う。  1話目は地獄少女という物語の中では最もオーソドックス作り、2話目はオカルト・ホ ラー色よりもミステリ色の方が濃い目な印象。この二つのエピソード、舞台と一部登場キ ャラクターに繋がりがあったので、もうちょい密接な絡みを見たかったような気もする。 2007/02/09(金)108年目の初恋。
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:末永外徒/イラスト:とりしも/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  第8回えんため大賞『優秀賞』受賞作。  旧校舎・ミーツ・ボーイ、な初恋ドキドキ物語。いや、このくらいじゃまだまだこっ恥 ずかしくなんか……あれ……なんか……きた……きたよ! ドキドキしてきた! くぅ〜 甘酸っぱいじゃねぇかこんちくしょー! ……ってな具合で徐々にじわりと沁み入った。  最初の方はあまり恋愛が絡んでおらず、代わりに誰にも気付かれる事なく旧校舎の全貌 を覗き見出来るという事で、ドキドキよりもワクワク好奇心の方が先に立ってたかな。で も、単にワクワクするばかりではなくて。とある過去の事件から人間に干渉するのを固く 禁ずると自らに誓いながら、関われない寂しさを表に出してしまう……そんな『旧校舎』 の人間っぽい仕草がいいな〜と思える描き方で、元々高め設定な好感度が更にアップ。  中盤以降は意地でも関わりを諦めようとしない新への恋心を描く部分がメインとなり、 ↑のように転げ回りたくなる展開へと進んでゆく。この『旧校舎』=コウと新の恋愛模様 について、正直言うと対抗馬としてのリアンや夕子などの周囲の介入がもうちょいあって 欲しかったかなと(まあこの辺は好みの問題で、どうも個人的には波風立てて欲しいなん て余計な要望があったりとかねぇ)。純粋に二人の初恋物語を望むとすれば、これでもう 充分な内容ではないかな。起伏は緩やかだけど、心地良く穏やかで優しい気持ちにさせて くれる物語。非常に綺麗に纏まっていたので特に続きは望まない。次の新作に期待。 2007/02/08(木)声で魅せてよベイビー
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:木本雅彦/イラスト:ヤス/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  第8回えんため大賞『佳作』受賞作。  かくてハッカー少年は、腐女子の手引きによって特撮変身ヒーローオタクへの道に片足 を突っ込んでしまったと……ちょっと違うか? 当方コンピューター言語はサッパリな文 系少年君で通してきたもんで、「熱く語られても分からぬ」と華麗にスルーかましたけれ ど、かと言ってハッカー少年の悶々鬱々とした気持ちまで理解出来ないわけじゃない。  広野の第一印象は変なヤツ、器用なヤツ、そしてクールなヤツ。それが徐々に特別な事 に対してのみ不器用なヤツへと印象が変化してゆく。この過程を実に小気味良くテンポ良 く読ませてくれる。心の中ではしっかり整理出来ている“言いたい事”を直接口に出して 沙奈歌にぶつけりゃいーんだよ! と檄を飛ばしてもなかなか“孤高を好む自分自身”を 吹っ切れない辺りが不器用だなぁという感じ。でも凄く好きだよこういう野郎って。  沙奈歌は声優志望って事なので、タイトル通り“声で魅せる表現”をどのようにして作 中で描いてくれるか期待してたのだけど、成る程こういう風に活かしてくれたのか〜とい う安堵感が抱けてホッとした。終盤の舞台に上がってからの沙奈歌の感情爆発の吐露は、 広野と直接向き合ってる状況じゃないんだけど、ストレートに彼へと伝わっている。一見 変化球のような描き方なのに、その実ど直球真ん中の感触なのが特に印象的だった。  著者の方は続きを追う意欲ありとの事。それなら読み手もその意欲に乗ってみたい。 2007/02/06(火)バカとテストと召喚獣
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★★★☆(9/10) [著者:井上堅二/イラスト:葉賀ユイ/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  第8回えんため大賞『編集部特別賞』受賞作。  くっ! 分かっちゃいねぇ……俺達の要望を何も分かっちゃいねぇよ! そこ(P19 6〜P200辺り)は黙って秀吉の女子制服姿の挿絵投入だろっ! ……とか何とか、こ んな風に力説してる姿こそ「バカ」って指差されるに違いないだろうけど気にしない。  いや、しかしこれは面白い。アイディアが凄く面白い。『召喚獣』って言葉を聞くと、 既成概念から「あんな感じか」とか「こんな具合か」なんて割と定まった方向へ想像しが ちなんだけど、この作品は頭で浮かべていたどれにも当てはまってくれなかった。ホント こういうのよく考え付くよなぁ。新人作家さんの独自性が全面に出ていて凄く良かった。  あとはタイトル通り全編通じて「バカ」な所。主人公の一人称で描いているので、明久 のおバカさ加減に余計愛着が湧いてしまって、まさに愛すべきバカって感じか。明久に言 わせると「これって貶してんだか褒めてんだか……」となりそうだけど、当然ながら混じ りっ気なしの褒め言葉。何だかんだで周囲からは好意を寄せられまくってるもんな〜。  唯一惜しいと思ったのは、展開が少々駆け足気味だった点。おバカ軍団が段階的に駆け 上がってゆく部分をもうちょい長い尺で読んでみたかったかなと。もっとも、各クラスと の召喚戦争がワンパターンにならないよう工夫が凝らされていたので、物足りなさは殆ど なし。あ〜これ何とか続けて繋げて貰えないかな〜? そして次こそ秀吉の挿絵を……。 2007/02/05(月)ほおむステイ☆でい〜もン!
(刊行年月 2007.02)★★★★★★★☆☆☆(7/10) [著者:鯛津ゆうた/イラスト:シコルスキー/エンターブレイン ファミ通文庫]→【bk1】  第7回えんため大賞『東放学園特別賞』受賞作。  元ネタはハク○ョン大○王でいいのか? かなりの傍若無人さを発揮しておきながら、 最後の最後で目的ブツから身を引いてしまう辺り、ペイモンって案外本質はお人好しだっ たりするのかねぇ。ヒロシとヤスオの場合は無意識の内に同情心を誘っていたようだけど、 これを意識的にペイモンに仕向けたら結構効果的なんではないだろか? と、正直終盤の ペイモンの出方に対して「そこまでやって遠慮するのかよ」ってな具合だったので、ちょ っと予想外だったかなと。まあ“彼女はどんな目的で指輪を狙っていたのか”という部分 がぼやけてしまっているのはどうかと思うのだけど(いや、ホントに何だったっけ?)。  主人公・修也は地味、冴えない、特徴ない、取り得ない……どう頑張っても印象良くな るようにフォロー出来ねぇよ。そんなキャラクターだから、非公認佐伯綾奈ファンクラブ 略してSAFのお馬鹿どもが嫉妬に狂い身悶える気持ちも良く分かる。そりゃ「何でこん な地味で冴えなくて以下略な野郎なんかに綾奈ちゃんが〜」ってなっちゃうよな。  実は綾奈にこそ重要な秘密が隠されているんじゃないか、と予想してたのだけど、あん まし大した事はなかったね。観覧車での告白っぽいシーンで大どんでん返しを期待してた のに〜。途中に紛れてた幾つかの小ネタは半々くらいでスベったりツボに入ったり。 2007/02/03(土)銀星みつあみ航海記 LOG.01 彼女が家出した動機
(刊行年月 H19.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:鷹見一幸/イラスト:緒方剛志/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  「でたまか」と共通の世界。こちらはおよそ百年前の時代だそうで。でたまかは未読な のだけど、キャラクターやストーリーは新しいもののようだから、こちらから手を出して も特に引っ掛かりを覚える事はないかなと。ただ、1巻目から様々な星系を又にかけての 航行をやっているので、もしでたまかの方で同様の星系の名が上がっていたとしても「あ、 この星系知ってるよ!」なんて気持ちになれないのは残念な所だったかも知れない。  まあ“巻が進めば両作品の関連性が増す可能性もある”との事なので、そうなった時に でたまかの方も追えばいいか〜、ってな訳でこちら「みつあみ」について。メインは超危 険物資の運送。元々はハヤトの直情傾向的な性質が出たせいで請け負わざるを得なくなっ てしまったのだけど、そういう性格は案外嫌いじゃなかったり。迂闊に突っ走ってる感じ もあるにはあるけれど、「若いっていいなぁ……」なんておっさん染みた溜息が漏れてし まうような前向きな勢いがあって、その辺がハヤトへの好印象に繋がってたのかなと。  あと印象に残っているのは航行の途中での様々な人との出逢い。ハヤト達にとって良い ものから良くないものまで様々。おそらくその多くは二度目の出逢いは無いだろうけど、 誰か何処かで再登場して欲しい気持ちもある(個人的には元宇宙海賊の人とかね)。  次は雑誌掲載分の前日談。ハヤトとハインツがどうやって「銀星運輸」を立ち上げるま でに至ったか、そしてリアンとはどのようにして出逢ったかなど、色々と興味あり。 2007/02/02(金)スプライトシュピーゲルI Butterfly&Dragonfly&Honeybee
(刊行年月 H19.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:冲方丁/イラスト:はいむらきよたか/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【bk1】  二誌同時連載の富士見ファンタジア版。ボクは男だと言い張る女の子を捕まえていきな り「パンツ脱げ」って……サイテーな奴だが素晴らしい漢だ水無月。ま、物語の雰囲気を 考慮して言うなら、場違いも甚だしい行為を犯している奴ではあるのだけれど、割と凄惨 さが鮮明に際立つ中でこういう存在はある意味貴重なのかも。もっとも、あまり重要シー ンでの出番も無さそうなので馬鹿をやるのはたまにでいいよ、と念押ししておこう。  で、いきなり横道逸れたのを修正して本編の内容に触れてみる。先に読んで気になって いた『オイレン』との差異、想像していたのは世界観のみ一緒でストーリーやキャラクタ ーはそれぞれ独立した別の物語……だったのだけど、1巻目から思いっきりクロスオーバ ーしてたなぁ。『オイレン』に登場してたMPB副長のフランツがこっちでも顔出してた り、『オイレン』で話題に上ってた“三人の特甲児童の殺し合い”ってのがこちらで詳し く語られていたり、あとは共通の黒幕という位置にあるリヒャルト・トラクルおじさんと プリンチップ社の事とか。これから何がどう交わってゆくのか楽しみであり興味深い所。  しかし派手さは向こうが数段上という感触だったけど、劇中に漂う生々しさ、悲惨さ、 凄惨さなんてのはこっちが断然上のように感じられた。特に最後のはきつかったね……。  既刊感想:オイレンシュピーゲル  2007/02/01(木)オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White
(刊行年月 H19.02)★★★★★★★★☆☆(8/10) [著者:冲方丁/イラスト:白亜右月/角川書店 角川スニーカー文庫]→【bk1】  二誌同時連載の角川スニーカー版。瞬間「ネコミミ!」と思ってしまったけどイヌミミ だったか……とか何とか。第一印象はそんな具合で。まず触れるべきは、物語に入る前に 少々躊躇いを覚えた文体かねぇやっぱり。ただ、最初面食らいはしたけれど、取っ付き難 い訳ではなく。文章の合間に置かれている記号の意味する所が把握出来る頃には、いつの 間にやらテンポ良く読み進められている、という仕組み。これはなかなか面白いなと。  今回は涼月、陽炎、夕霧の主要三人娘の素性を赤裸々に暴きつつ、今後の核となりそう な出来事の予兆などをさらりと撫でる様に。どうやらミリオポリスという都市の中では、 まともでない過去を持つ人間が溢れまくっているようで。この三人娘達もそれぞれが相当 強烈に歪んだ過去を抱えているのだけれど、それをちゃんと自覚した上でしっかり地に足 つけて最大限の自己主張をしながら生きている(夕霧だけは多分に天然入っているからち と把握し難い所なんだけど)。そういう姿が凄く格好良いよな〜と何度も思ったり。  あと、コスプレ紛いの格好で住民の支持を得ようと立ち回りを演じる様子なんて物凄い 絵じゃないか? とか。涼月などは文句垂れてるけど、それを周囲の目を一切気にせずや ってのける辺りがまた更に凄くて、変な所で妙に感心させられる事が多かったかも。  彼女等が所属するMPBとの因縁は、暗躍するリヒャルト・トラクルおじさんとプリン チップ社。詳細は今の所不明。今後どんな風に絡んで踊ってくれるのか楽しみ。


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