[前] [戻る] [次]
08/28 『M.G.H. 楽園の鏡像』 著者:三雲岳斗/徳間デュアル文庫
08/23 『ヤングガン・カルナバル バウンド・トゥ・バイオレンス』 著者:深見真/トクマ・ノベルズEdge
08/23 『樹上のゆりかご』 著者:荻原規子/C★NOVELSファンタジア
08/19 『これは王国のかぎ』 著者:荻原規子/C★NOVELSファンタジア
08/19 『翼は碧空を翔けて3』 著者:三浦真奈美/C★NOVELSファンタジア
08/19 『翼は碧空を翔けて2』 著者:三浦真奈美/C★NOVELSファンタジア
□2007/08/28(火)M.G.H. 楽園の鏡像
(刊行年月 2006.06)★
[著者:三雲岳斗/イラスト:中臣亮/徳間書店 徳間デュアル文庫]→【bk1】
第1回日本SF新人賞受賞作。
現実世界でも、近未来で宇宙観光がごく当たり前の日常のモノとして組み込まれる日が
来るのかしら? そんな可能性にどっぷり浸らせてくれる内容に心惹かれる。夢物語では
なく、確かな現実味に溢れる感触。こちら側も宇宙観光気分。傍観者の立場で舞衣の作戦
を応援しつつ、凌とのじゃれ合いを目の当たりにする度にニヤニヤとさせられたり。
そんな楽観気分も殺人事件が起こるまでで。そこから先はSFミステリとしての旨味を
じっくり味わえる展開。ただ、自分にも凌みたいな知識があれば理解度ももう少しは上が
るだろうに……とか、どうしようもなくて指をくわえて眺めるしかない局面もしばしば。
まあ追いつけない箇所は適度に流し、楽しめるとこで充分楽しませて貰えたので納得の
手応え。「誰が真犯人か?」よりも、無重力環境では決して起こり得ない「被害者への殺
害方法」を探り解く方に比重が置かれていたかなと。実際後者の要素の方が面白かった。
□2007/08/23(木)ヤングガン・カルナバル バウンド・トゥ・バイオレンス
(刊行年月 2005.10)★
[著者:深見真/イラスト:蕗野冬/徳間書店 トクマ・ノベルズEdge]→【bk1】
シリーズ第2巻。塵八と弓華。日常と非日常。こられのスイッチの切り替えが実に絶妙
で心地が良い。しかし塵八と弓華って、日常で全くと言っていい程接点が見当たらない癖
に、非日常の中ではこれ以上ないくらい息が合ってるよな〜。どっちもしがらみ脱ぎ捨て
本能のままに行動すると似たもの同士になるから、なのかねぇ? 弓華は基本が自由奔放
なのでそれ程の違いはないけれど、塵八の方は結構劇的。その変化は見ていて面白い。
今回の敵対者、風樹と亜里沙は今後も何らかの形で絡んで来るでしょ? そうであると
嬉しい。特に風樹の方は更に狂ってイカれた姿での復活を望む。と言うのも、最後の逆襲
が割とアッサリ片付いてしまってちと物足りなかったから。まあ塵八には危機に陥れられ
た分だけ、完膚なきまでに叩きのめしてスカッとした気分にさせて欲しいって事で。
既刊感想:ヤングガン・カルナバル
□2007/08/23(木)樹上のゆりかご
(刊行年月 2006.06)★★
[著者:荻原規子/イラスト:香坂ゆう/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
『これは王国のかぎ』のストーリー展開から続いているのではなく、“上田ひろみの物
語”として続いている内容。中学生から高校生へと。異世界ファンタジーから現実の高校
生活へと。……ん〜中学生と高校生でここまで雰囲気に違いが表れるものなんだねぇ。と、
最も感慨深かったのがこの辺りの描写で。中学生の頃より大人びて落ち着きが出て、流さ
れずにしっかり立ち止まって物事を深く、複雑に考える事が出来るようになっていて。当
たり前の成長なんだけど、それを読みながら感じ取れた事が何だか妙に嬉しくてね。
多少事件性を絡めたミステリ仕立てにもなっているけれど、それはあくまで調味料程度
の味付けで、主に描かれているのは学校行事に絡めての男女の関係とか考え方の違いとか。
露骨な恋愛感情では踏み込まず、微妙な距離感を保ち続けての関係ってのがまた良いんだ
よなぁ。あ〜こんな楽しい行事満載の高校生活送ってみたかったよ(しみじみと)。
関連感想:これは王国のかぎ
□2007/08/19(日)これは王国のかぎ
(刊行年月 1999.09)★
[著者:荻原規子/イラスト:香坂ゆう/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
逃避から始まり、思い掛けない経験で立ち直り、ちょっとだけ心の成長を遂げる少女・
上田ひろみの物語。真っ先に疑問に上がったのは「この世界って何?」って事。アラビア
ンナイトをモチーフにしてるのは分かっていても、アラビアンナイトそのものを知らない
から「付いて行けるかな〜?」とかそんな心配ばかりしてた。その辺は物語背景の雰囲気
作りで主に作用してたので、知らない状態でもあまり問題はなかったのだけどね。
異世界に飛ばされたように見えて、でも異世界とは違う妙な感触が印象的で。何だろな、
これ? 異世界でも現実のような実感が薄く、夢を見ている状況に近いような……む、う
まい具合に表現出来んなぁ。と、思ってたらラスト付近で物凄く納得のゆくシーンが現れ
てくれて腑に落ちたと言うか、そんな具合。ひろみにとって残されたのは“探し人”って
事になるんだろうかね。続く『樹上のゆりかご』で、もしかしたら何か語られている?
□2007/08/19(日)翼は碧空を翔けて3
(刊行年月 2007.03)★
[著者:三浦真奈美/イラスト:椋本夏夜/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
シリーズ最終巻。終わってみれば著しく成長を遂げたのはアンジェラ。まあこの辺りは
順当な所で。セシルは元々キレ者な存在だったし、ランディは結局最後の方まで頑さが間
違った方向に進みっ放しで解れなかったしなぁ。ランディの場合はあくまで傍から見ての
事だけど、アンジェラと再会して彼女の行為を目の当たりにしても思想が変わらないんじ
ゃどうにもならねぇ……。共感出来ない所ばかりが目立ってしまって残念だったなと。
あー、そういや最初の内はアンジェラを軸にセシルとランディが意識し合う展開を望ん
でたっけ。好意を隠さないランディに対して、あまり相手への好意を表に出さないセシル
が刺激されるというか……結局そうならなかった所でも“残念さ”を感じてたのかも。
それでもアンジェラの想いがようやく届いた辺りは思わずぐっと来てしまい、照れ屋の
セシルが本心をアンジェラに告げたシーンでニヤニヤさせられたりとかね。気がつけば満
足感と幸福感で一杯になってた。何はともあれ、お二人とも末永くお幸せに。
既刊感想:1、2
□2007/08/19(日)翼は碧空を翔けて2
(刊行年月 2007.01)
[著者:三浦真奈美/イラスト:椋本夏夜/中央公論新社 C★NOVELSファンタジア]→【bk1】
おや? 我が侭お姫様な風体でロートリンゲンを出奔した時のアンジェラと、今回の彼
女とは随分醸し出す雰囲気に違いが出ているな。あれか、セシルと出逢って色々ぶつかり
合った経験が良い方向に作用したと、つまりはそういう事か? ノブリス・オブリジェ=
高貴な者の義務なんだそうで、そういう“自分が為せる事”を考え“自分が為さねばなら
ない事”を意識するようになったアンジェラの成長が目覚しく、またそんな姿を眺めては
嬉しい気持ちにさせられる。前巻で抱いたマイナス部分は完全に払拭されたかなと。
今回はアンジェらよりも、セシルとランディの方がメインっぽい内容だった。しかしラ
ンディの予想以上の頑なさはもうどうにもならん。割と辟易。いや、これは決定的な思想
の相違でセシルと衝突してる訳だから、単純に「頭の固い困ったちゃんだな」と断ずる事
も出来ないんだけど、これじゃもうちょっとセシルの気持ちを酌んでやれよと横槍入れた
くもなってしまう。アンジェラとの関わりが切っ掛けで聞く耳持たず反戦争運動に加わっ
ているのなら、また彼女と再会する事があればランディの頑なさも緩むだろうか?
既刊感想:1
[
戻る]