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03/10 『第61魔法分隊3』 著者:伊都工平/電撃文庫
03/09 『灼眼のシャナ』 著者:高橋弥七郎/電撃文庫
03/05 『ダーク・バイオレッツ2 闇の絵本』 著者:三上延/電撃文庫
03/05 『Hyper Hybrid Organization01−02 突破』 著者:高畑京一郎/電撃文庫
03/05 『Hyper Hybrid Organization01−01 運命の日』 著者:高畑京一郎/電撃文庫
03/03 『銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!3』 著者:あらいりゅうじ/電撃文庫
2003/03/10(月)第61魔法分隊3
(刊行年月 H14.11)★★★☆
[著者:伊都工平/イラスト:水上カオリ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
時間的には前巻より少し遡った所から始まりほぼ同時進行。ギースニデル南方の水都フ
ァルマスでデリエルが奮戦している時、北方の王都へ向かったシュナーナ、ロギューネ、
キキノ達は一体どうしていたのだろうか? というのが今回のお話。なので特に航路から
の動きは「こちらではこんな風に動いてたのか」という感じで興味深く面白かった。
今回はこれまでより一層カリス教団に深く接する内容で、その実態が暴かれて新たな展
開を迎えるというもの。毎回主役が交代する設定で、今回はシュナーナが主役との事だっ
たのですが、あまりパッとしないのは、性格的な問題であれこれ背負い込もうとして深み
にはまって迷ってしまってる表れなのか。主役なのに脇役で裏方に徹しているとかのロギ
ューネと同じくらいしか存在感が無かったよシュナさん……。
でもシュナーナの“本気になると何を仕出かすか分からない”という予測不能な性質を、
計章庁乱入とノーアス説得の2ヶ所で存分に堪能出来たのは良かったです。普段は危なっ
かしいばかりなのに、近くに接すれば接する程に見掛けだけでは分からない『心の強さ』
みたいなものが彼女の中で感じられる。それはどこかシュナーナに一目置いているような
頭が上がらないようなロギューネや、実力では断然上を行っているのにとうとう諭されて
しまうノーアスの様子を見ていれば良く分かります。試行錯誤でようやくカリス教団の真
相に辿り着いたのも、シュナーナの強さの証明なのかなと思いました。
シュナーナと対照的に描かれている姐御肌なノーアスの、スカッとするような猪突猛進
さや逆に葛藤した時に見せる弱さなど色々含めて、いいなと思わせてくれる事が多いキャ
ラでした。しかしそれにしてもロギューネ……頭突きはないだろ頭突きは。
誰が何を目的として何に向かって進んでいるのか? こういう所がちょっとごちゃごち
ゃしてて整理がついてないかなぁという気持ちも若干あったのですが、まあ多数の人間が
様々な場所で色々な思惑を抱えていたらこんな風に入り乱れてしまうものなのかも。
次はキキノが主役(終章のアレは何か勿体無いと思ってしまった)で、ベルマリオン計
画の事が軸になってゆくのかな。決心して転がり込んだ親父さんとの関係も気になる所。
既刊感想:1、2
2003/03/09(日)灼眼のシャナ
(刊行年月 H14.11)★★★★
[著者:高橋弥七郎/イラスト:いとうのいぢ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
まず序盤からいきなり説明無しで独特の世界観を見せる事で読み手に強烈な印象を植え
付け、一旦突き放した所から今度は徐々に深い部分を理解させ引き戻してゆく……という
組み立て。なので最初は、「現在何が行われているのか?」とか「これはどういう意味な
のか?」と考え込んでしまうような癖のある取っ付き難さも少々あったけれど、話が進む
に連れて少しずつ主人公・悠二の心情をそのままなぞるように描かれてるのが実にうまく
効いてると思いました。何度も噛む事でじわりじわりと味が染みてくるような感じ。
思えばこういう突き放すような世界観ってのは『A/Bエクストリーム』にも通ずるも
のがあって、こちらの「紅世の徒」「フレイムヘイズ」「燐子」など物語を構築する言葉
の数々なんかも、A/Bでの凝った武器設定の難解さや描き方が似ているなと。こういう
所が面白いと感じられる著者独自の持ち味と言えるのかも。
あとは思わず“これが全て”とまで断言してしまいたくなりそうなシャナの魅力が大き
な要素。序盤から中盤にかけてはとにかく強い・格好良い・凛々しい・近寄り難く扱い難
い……など他人を寄せ付けないオーラとなってシャナを覆ってるのが、悠二に対して微妙
な気持ちを抱くようになってからは他の全部が取っ払われて一気に“可愛い”となってし
まう惹きつけ具合は侮り難い。
大太刀を振るって闘う姿もいいけれど、特に後半の悠二とのやり取りはいいなーと思わ
せてくれる微笑ましいシーンが印象的。吉田さんの健気な「……負けませんから」発言も、
アラストールの何となく常に父親の視点でシャナを見ているような所も良い感じでした。
一方では悠二の中のミステスを狙う紅世の徒と相対するフレイムヘイズとして、もう一
方では(まだ自覚はないけど)悠二を巡って吉田さんと相対する一人の少女として、シャ
ナが今後どう物語を盛り上げてゆくのか期待したいです。
2003/03/05(水)ダーク・バイオレッツ2 闇の絵本
(刊行年月 H14.11)★★★☆
[著者:三上延/イラスト:GASHIN/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
幽霊を見る事が出来るけどそれを退ける術を持たない明良と、幽霊を退ける力を持ちな
がらその存在を見る術を持たない柊美。今回この二人の関係の深さが、前巻に増してより
一層色濃く表れていたのではないかなと。
片方だけで悪霊現象と相対するにはあまりに脆弱、なのにお互いが相手を想って危険を
承知で突っ込んでしまうから幾度となく窮地に陥ってしまう。特殊な力を持ちながら、身
体的にも精神的にも常にどこかあっさり壊れそうな脆さを抱えている……そういうどうし
ようもなく人間らしい弱さが実に良い感じ。それがあるから苦戦しながら何とか二人で力
を合わせて、の部分が際立って感じられたのだと思います。
以心伝心、一蓮托生、運命共同体……これらの言葉が明良と柊美にはよく似合い、二人
の存在を明確に示しているような。友達だとか恋人だとかを超越した所に、明良と柊美の
関係ってのは成り立ってるのかなという気がしました。
敵の存在を早い段階で知りながら思うように手掛かりを掴めず迷い悩んで傷付いて、ど
うにかこうにか倒すに至るまでの過程も良かったし、ホラーというジャンルに乗せた見せ
方も、前巻より巧さが向上してるように感じられて面白かったです。あとは気の毒なくら
い損な役回りだった岬が、もっとこの二人に色んな意味で絡んでくれると嬉しいんだけど。
本編の中でシリーズ作品として物語が動き始めたと感じられた事柄がひとつ。それはま
だ明良にも知れてない柊美に関しての事ですが、もしこのまま今後も同じ状態を抱え続け
てゆくとあまり嬉しくない展開になりそうな予感が……それでも盛り上がりが見えて来た
ので次巻が楽しみです。
既刊感想:1
2003/03/05(水)Hyper Hybrid Organization01−02 突破
(刊行年月 H14.11)★★★★
[著者:高畑京一郎/イラスト:相川有/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
実に1年半振りの第2巻……のわりに話があまり進んでなくて、全体的に見て流れが非
常にゆったりだなと感じたのは果たして気のせいかどうか。もっとも、内容的にはほとん
ど文句の付けようもなく良かったのですが、だから余計に更にその先を詳しく知りたいん
だよという欲求が生まれてしまってもどかしく感じられるのかもしれない。
復讐へ向けての次なるステップアップ……その詳細な実態を何一つ教えられないまま戦
闘員養成の訓練生として、ユニコーンの組織最下層に投げ込まれた貴久の訓練風景を描い
ているのが今回。前巻でそれ程とは感じなかった『漢』と書いて『おとこ』読み『強敵』
と書いて『とも』と読む、というあとがきの部分はまさにこの本編にこそ相応しい言葉だ
と思い知らされました。いや、この徹底的に女性キャラを寄せ付けない舞台で、濃い漢の
匂いの充満する熱く燃えるシチュエーションが堪らなかったですよ。
カラー口絵で何かむさい男ばっかしだなぁと思ったのが読んでいる間は不思議とそれを
意識する事はなくて、読了してあとがき読んだ時に「ああそういや登場キャラは男だけだ
ったな」と気付かされた程に惹き込まれてました。電撃レーベルでは異色作と言えるかも
知れないけれど、こういう言葉よりも拳で語らうような男同士が分かち合う姿を描く物語
もなかなか面白い。個人的には訓練生としての貴久をもう少しじっくり見せて欲しかった
のですが、彼にとってひとつの通過点に過ぎないと思えばこの位で丁度いいのかな。同期
で卒業した訓練生達と今後どう関わってゆくのか楽しみです。
で、結局復讐相手である藤岡武士は今回も名前だけで存在の多くは謎に包まれたまま。
おそらく貴久がユニコーンの組織内で地位を上げてゆく度に徐々に明らかになるのだろう
なと。しかし今回のラストでようやく本当のスタートラインに立った感じなので、次巻の
中でもどれだけ見えて来る事やら。やっぱり根気強く気長に待つしかないのか……。
既刊感想:01−01
2003/03/05(水)Hyper Hybrid Organization01−01 運命の日
(刊行年月 H13.05)★★★★
[著者:高畑京一郎/イラスト:相川有/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
正義の味方と悪の秘密結社みたいなのとの抗争に巻き込まれた一般人の主人公が、復讐
の為に日常を捨てて生きる道を選ぶ……というちょっとどっかで聞いた事あるような気が
する物語。世間から見た正義と悪の勢力関係や、復讐を誓ってからの貴久の一連の行動な
どは結構シンプルで分かり易いものながら、気が付けば物語の展開に惹き込まれてしまっ
ていたのは文章の巧さを感じられたから。
世情でのヒーローまたは悪の秘密結社のイメージと、実際敵対してる当事者達が抱える
事情とは少々ズレがあるようで、単純に善と悪では割り切れないそれぞれに様々な意図や
思惑を持って複雑に絡み合ってるような印象。ただガーディアンへの復讐に駆られるだけ
でなく、そういう空気を敏感に感じたからこそ貴久は悪と称されるユニコーンに志願した
のかもしれない。組織を自力で調べ上げる段階から、気の遠くなる地道な作業のひとつひ
とつから、誰にも曲げる事の出来ない彼の力強い信念が伝わってきました。
この1冊の最後までが全体の序章の序章で、実際には分かってる事より分からないハッ
キリしない事の方が圧倒的に多い(特にガーディアン=藤岡武士の存在や彼とユニコーン
との確執など)。けれども次に興味を引かせるようなうまい隠し方してるなという思いが
大きかったので、読んでいる分には面白さが先にあって余り気にはならなかったです。
ただ、こういう続きを気にさせる展開だけに、各所の感想でも見られるように刊行ペー
スの遅さが相当のネックとなっているようで。作品の内容の良し悪しには左右しないけど、
確かにこの謎だらけの序章部分を刊行当時に買って読んで、ずーーーっと待たされたらか
なり辛いものがあるかも。
2003/03/03(月)銀河観光旅館 宙の湯へいらっしゃ〜い!3
(刊行年月 H14.11)★★★☆
[著者:あらいりゅうじ/イラスト:みさくらなんこつ/メディアワークス 電撃文庫]→【bk1】
今回は短編5本で相変わらず空の湯に学校にとドタバタな騒動を巻き起こす話。またお
約束で三助に惚れる新しい美少女キャラが登場するものと思ってたのですがアテは外れ。
なんかSFラブコメの“ラブ”が抜けてコメディ色が一層強くなったかなぁと思いきや、
夕子なんかは結構目立って三助と急接近するシーンもあったりで、ルカの気持ちも含めて
良いのかイマイチなのか微妙な内容。ただ次巻は長編って事だから、もし中継ぎという意
味で主要キャラ&脇を固めるキャラの掘り下げを意図してるなら、その試みはうまくいっ
てると思います。特に空の湯旅館の従業員達はなかなか個性派揃いで面白い。おキョウさ
んとかヒデさんなんかは引き続きちょくちょく見せ場を持たせて欲しいかも。
5本の中で個人的には『ルカのたんじょうび』が一番印象に残ったかな? ちょっとル
カの年齢においおいと突っ込み入れたくなったけど、地球とは成長速度の違いが極端てこ
とで何とか納得。周囲の騒ぎが激しかったこの巻の最後に、ようやく三助とルカの二人だ
けで過ごすホッとするような時間の流れが良かったです。しかしもうちょい進展してもい
いんじゃないかと感じる部分も多いので、次の長編作に期待したい所。
既刊感想:1、2
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