NOVEL REVIEW
<2002年10月[後半]>
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10/31 『東京タブロイド6 陽炎ゆらめく夏の王国』 著者:水城正太郎/富士見ミステリー文庫
10/29 『カフェ<白銀館>物語 一 危険な魅惑のアロマ』 著者:年見悟/富士見ミステリー文庫
10/28 『Dクラッカーズ・ショート 欠片−piece−』 著者:あざの耕平/富士見ミステリー文庫
10/27 『Dクラッカーズ4 決意−resolution−』 著者:あざの耕平/富士見ミステリー文庫
10/26 『Dクラッカーズ3 祭典−ceremony−』 著者:あざの耕平/富士見ミステリー文庫
10/24 『Dクラッカーズ2 敵手−pursuer−』 著者:あざの耕平/富士見ミステリー文庫
10/23 『Dクラッカーズ 接触−touch−』 著者:あざの耕平/富士見ミステリー文庫
10/22 『トワ・ミカミ・テイルズI 国なしの皇子、乱国に起ちて』 著者:日下弘文/富士見ファンタジア文庫
10/21 『ディヴァイン・ハート1 白銀の竜とワルツを』 著者:あおしまたかし/富士見ファンタジア文庫


2002/10/31(木)東京タブロイド6 陽炎ゆらめく夏の王国

(刊行年月 H14.09)★★★☆ [著者:水城正太郎/イラスト:しのざきあきら/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  ほら、やっぱり偶数巻って殺人事件&謎解き仕立てですよね?(5巻感想参照) いや 別に文句あるわけでも何でもないんだけど、ただ少なくとも意図的な可能性が高いので次 巻の内容の予測が付きやすいかなと思っただけ(笑)。   今回は東京社会新聞社と山県組のヤクザどもと猟奇王チームとの三つ巴抗争、それに宝 捜しが加わって殺人事件&謎解き仕立ての出来上がりとなります。もっとも“読者が読み 解く”ではなくて“キャラクターが解くのを読む”てな描かれ方でしたが。  3巻から1人ずつ遊馬と女性キャラが大きく絡んでいて順に麻衣子(は1,2巻もそう だけど)、キザイア、昭奈ときて今度は晶。これまで彼女はわりと編集長の蘭と同行して るって印象が強くて、遊馬との絡みが稀薄だったせいか、外見から滲み出てるものは強烈 に印象に残っても内面の心理ってのが掴み切れてないキャラだったのですよね。だから遊 馬と共に行動した晶の知り得なかった部分が色々見えたのは満足。もうちょい晶にとって いい方向に進んでくれたら……というのもあったけれど。  あとはこのシリーズに無くてはならない存在・猟奇王。やっぱり彼は遊馬とじゃれ合う よりも敵対して騒ぎを繰り広げてた方が面白いよ〜。今回は変な存在感も奇行の数々もそ こそこ目立ってて良かったですよ。こういうふざけた奴がふざけたままで本気を垣間見せ ると背筋がぞくりときてしまいます。今の所はわざとか地なのか変なキャラで通してるけ ど、本気になったら相当なもの、と思うのは買い被り過ぎだろうか……。  2巻の黒猫女給こと未亜や3巻の睦月・弥生の双子姉妹が再登場してたのも、シリーズ 通して読んでる身としては嬉しい所。遊馬の悩みの種として今後も登場して欲しいです。  ……で、結局宝は社屋の件から最終的にあの人が手にしたってオチですか?(笑)  既刊感想:コレクション 2002/10/29(火)カフェ<白銀館>物語 一 危険な魅惑のアロマ
(刊行年月 H14.09)★★★☆ [著者:年見悟/イラスト:早真さとる/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  珈琲と殺人事件の組み合わせというのはなかなか面白い発想。ただ事件に巻き込まれ真 犯人追っ掛けて真相に辿り着く……というミステリの流れがしっかりありながら、それを メインと感じられない所が実にこのレーベルらしいですが(笑)。  じゃあ何がメインかと言ったらやっぱり珈琲。本の中から珈琲の香りが漂ってきそうに 思えてしまうくらい作品で珈琲の占める割合は大きく、また奥深い描写で物語に密接に関 わりを持ってるのが特徴。だから殺人事件や真相追求の推理部分ってのは、あくまで珈琲 の引き立て役として比較的軽めに描かれてるような印象だったのですよね(珈琲とミルク のような関係……なのかなぁ?) でもそれがダメな訳ではなくて、珈琲とうまい具合に 溶け合っているのが面白いと思えた要因だったかなと。  もうひとつ目立っていたのは事件に乗せてユキが進路について葛藤する部分。自らの才 を学業で伸ばすか、それとも大好きな珈琲に携わる仕事を取るか……明治時代と現在とで 13歳の少女の考え方がどう違うのかは分からないけど、自分の為と父・良輔の為に最良 の選択はどれかと迷い悩むユキの心情が凄く伝わってきました。ユキがとある人に言われ て気付いた事は「自分らしいのはどちらか」というごく簡単な答えだったわけですが、私 は進んで欲しいなーと思った方を彼女が選んでくれたので良かったかな。もう一方の進路 の先を見てみたい気もしたけど、やっぱりユキには身近な珈琲の香りがよく似合ってる。  この作品は明治時代が舞台で、設定が実際に合ってるのかどうかは知識無いのでこれま た分からないけれど、作中のカフェ<白銀館>や人と街並みの風景描写などの雰囲気は良い 感じで結構好き。あまりミステリに拘らなくてもいいから、このキャラクター達と珈琲と 世界観で続きも読んでみたい(あとがきで続編の構想はあるようだけど、本当に出るかど うかはアテにならないからなぁ(^^;))。 2002/10/28(月)Dクラッカーズ・ショート 欠片−piece−
(刊行年月 H14.09)★★★★ [著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  本編で語られなかった裏話や知り得なかった過去話が中心の短編集。これから手を付け る人はあんまし居ないだろうけど、既刊分の本編読了してからの方がいいかな。  見たかった知りたかったエピソードが多かったので満足度高しで良かったです。 ・手紙1−a day−  1巻ラストからの繋がりで、クッキーと書置きのメッセージにまつわるシーン。さり気 なく何気ないけど大好きだな〜こういうの。物語の中でとても大きな意味を持つものであ って、ラストの『手紙2』との相乗効果によって受ける威力は絶大です。 ・狩猟−hunt−  水原の“セルネット足抜け”話。いつからコンビ組んで動いてるのかはハッキリしてな いけど、景との連携プレイは息が合っていてさすが。景のジェットコースター耐性につい ては後の『台風』を最後まで読むと、なるほどなと思える作りがなかなか面白い。 ・炎踊−flame−  1巻から2巻刊行までの間にドラゴンマガジンにて掲載されたもの。まだ本編が深い所 まで進んでない時期に書かれた話なので、“この物語はどういうものなのか”というのを 読み手に知ってもらう為に用意されたんではないかなという気がしました。というのも本 編に対しての位置付けが微妙なのと、切羽詰っても景の方から梓にあんな事は絶対しない だろ〜というのがあったから。対『悪魔持ち』戦の縮小版といった感じかな。 ・休日−horiday−  セルネット・カプセル・DD・悪魔持ちという単語が全然出てこないエピソードも珍し い。水原のしょんぼり加減と千絵の暴走言動に素直に笑いましょう(笑)。 ・逃走−runaway−  いつ頃かは明確でないけど中学生くらいの頃の、まだ戦闘経験の浅い景が悪魔持ちと対 峙する話。不安感・恐怖感が浮き彫りになってる景の危うさがまたうまく描けてます。こ の最後を見せられて景VS甲斐の最初の闘いも見たいよなぁと思いました。猫は登場した時 から先が予想出来てしまってその通りになってしまったのは辛い……。 ・序曲−prelude−  物語の発端――麻里奈の自殺の本当の意味での真相が、1巻より過去の話として描かれ てます。彼がこの頃から絡んでたり麻里奈と間接的に関係があったり、というのは全部伏 せられてた事だったので、読んだ後は何か凄くスッキリした感じでした。 ・台風−storm−  本編では梓の意識から断片的にしか見えなかった、一番じっくり読んでみたかった景と 梓の幼少時代のエピソード。何か思い描いてたまんまの保護者と従者って関係に、思わず 笑みが漏れてしまいました。小さな力でちぐはぐな協力体制を敷きながら、困難に立ち向 かう二人が微笑ましくていいな〜。しかし梓は予想以上に無茶苦茶言う娘だったよ(笑)。 ・手紙2−a day−  手紙1から更に繋がって、その日の夜の景とクッキーとメッセージにまつわるエピソー ド。景にとって心身を癒す事の出来る大切な場所だというのが良く分かる。同じく『手紙 1』とのセットで効果がじわりと効いてきます。最後の景の長嘆が言葉無くても全てを物 語ってます。誰に向けて放たれてるかは言わずもがな。  既刊感想: 2002/10/27(日)Dクラッカーズ4 決意−resolution−
(刊行年月 H14.05)★★★★ [著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  困ったのは読了して早く続きが読みたくてしょうがなくなった事くらいで(笑)、クラ イマックスへ向かって怒涛の如くひた走りまくりな展開がもうたまらなく良かったです。  前回の続きから、それぞれがそれぞれの思惑を抱えて散り散りバラバラに動いてるんだ けど、全体的に見て必要なピースがしっかり噛み合ってる辺りがうまいなと。だからこそ 個々が収束して結集するというラストに感慨深さがあったんだと思います。  セルネットのB――バールとベリアルもようやく尻尾を見せ始め、あとは<女王>の真意 が望むべきもではないと言い切った彼らの『建国』の意図と<女王>の存在と関係、それか らそもそもの発端であるカプセルとは? 服用して生み出される悪魔とは? という、悪 魔持ち(オーナー)でさえ最初から定説と思わされ目を背け続けてきた核心が引き剥がさ れるのを残すのみ。考えてみれば一番最初から景や梓たちと根深く関わってきたカプセル の出生についてはずっと秘匿されていたんだったなと。セルネットとDDの抗争や組織の ほつれという事態が大きくて、肝心な所はすっかり頭から抜け落ちてました(笑)。もっ とも作中のキャラ達には自分の態勢を立て直すのが精一杯で、他の事に気を回す余裕なん てありはしなかったろうけど。  忘れられないのが千絵の作り残していった簡素な野菜スープを啜るシーン。ずっと過去 の景への罪の意識に苛まれ、今回最初から心も身体も路頭に迷い続けていただけに余計印 象深くて、比喩でなしに思わず涙が出そうになってしまいました。  強固な結びつきでずーっと断片的な描写が続いていた7年前の景と梓の王国の事も、こ こからが元々の発端だというのがハッキリ分かった時点で、すーっと霧が晴れてもやもや が離散してしまったような感覚。そういや景と梓は従者と保護者ってイメージばかりが強 くって、ただ単純に「好きだから」という気持ちから来てるものだとは全然考えもしなか ったなぁ。もし著者の意図でやってたんだとしたら完全にハメられてしまったかも(笑)。  てな感じで結集した彼らの反撃と最終局面へ向かう今後が非常に楽しみです。  既刊感想: 2002/10/26(土)Dクラッカーズ3 祭典−ceremony−
(刊行年月 H14.01)★★★☆ [著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  この1巻に似た不明瞭さと曖昧さに不安感一杯だったのですが、それは4巻と合わせて 前後編って構成という事で納得。次でそういうハッキリしなかった部分をきちっと見せて くれないと困るけど(笑)。まあ謎は情報整理すれば何となく分かりかけてるというのが 大部分を占めるんだけど(読み手にとっても登場キャラクター達にとっても)。  執行細胞(ファースト・セル)がBで実体のない存在の<女王>が頂点のA、でセルネッ トのBの3人が仕組んだ事こそがこの物語の核心となるのかな? まだネットの曖昧な情 報でしか拾えてないのと、<女王>の存在がハッキリしない所が一番気になるとこ。  でも伏せられ気味でも確実に核心へと歩を進めてる事がしっかり感じられるので、読ん でいて面白いのですよね。相変わらず健康を損ねそうな内容ですが(^^;)。  梓の喜び様がよく分かっていただけに、事態に突っ込み過ぎな危うさが凄く気になるな と思ってたら……やっぱりこうなってしまったか、と。もう誰も彼もがボロボロで陰鬱で 救われる気がしないですよホントに。好転する機会は果たして訪れるのか……。  それから読み切った時点で過去の王国でのシーンが幾度となく描かれていた意味に気付 いてなるほど〜となったのが印象的でした。個人的に毎回引き付けられるのは千絵の推理 や言動の全てかな。どんどん暗く深い場所へ沈みつつあるので、当初に見せてた興味本位 の明るさよりも深刻な思考の方が目立ってしまってるけど、聡明さで道を切り開く持ち味 だけは失って欲しくないなぁ。ま、相反する程に気が合うという不思議な関係の水原と組 んでる今は大丈夫かな? この二人も何だかんだでいいコンビです(笑)。  既刊感想: 2002/10/24(木)Dクラッカーズ2 敵手−pursuer−
(刊行年月 H13.07)★★★★ [著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  何て言うか……読んでてドラッグに酔って溺れる錯覚に陥ってしまいそうな所が素敵で す(笑)。何錠も薬物カプセル噛み砕いての服用でパワーアップしてるもんだからなぁ。  そういう部分もまた興味あって楽しめる要素なのですが、前回と比較して予想以上に良 かったと思えたのは、カプセルやセルネットの謎が明かされ始めた事ばかりではなかった ようで。自らの足でネタを稼ぎ、集めた情報を分析し理詰めで真相に辿り着こうとする過 程が読み応えあって面白かったです。主に千絵がその役割に立ってたので梓の影は薄めだ ったけど、その分彼女は後半で景の支えとして重要な役所を担ってたわけだし。  まだ景が『何故、いつから、何の目的で』ウィザードとして戦ってるのか? というの は“とある悪魔を追っている”くらいしか明かされてないけれど、序盤を抜けて核心へと 話が動き出した今回で、1巻ではどうかと思ってたこの作品への期待感とか面白さといっ た手応えみたいなものを掴めたような気がします。  どうも内容からしてドラッグとかカプセルとか麻薬中毒者とか、廃退的な印象を受ける キーワードが蔓延していてしょうがないのですが、これもまた独特の作風って事でしょう かね。しかし景が抱えてる症状から察するに、救われる未来と結末ってのが全然思い浮ば ないし思い描けません(^^;)。悲惨だったり破滅的なのは歓迎したくないけど案外あり 得そうなだけに……まだまだ続くにしても結末は気になるポイントかな。  既刊感想: 2002/10/23(水)Dクラッカーズ 接触−touch−
(刊行年月 H12.11)★★★ [著者:あざの耕平/イラスト:村崎久都/富士見書房 富士見ミステリー文庫]→【
bk1】  1巻だけは感想書いてたのですが、あまりにおざなり(というよりほとんど愚痴)だっ たもんで再読ついでに書き直してみました。と言っても感じた事の大まかな部分は読み返 してもあんまし変わらなかったですが。  とにかく伏せられてる事が多い為に謎でよく分からない所も多いんだろうなと。主に何 故景が『ウィザード』と呼ばれ、カプセル売買ルートや末期症状の中毒者を狩る役目を背 負っているのかと、ネット組織の存在やカプセルそのものの具体的な症状など。簡潔にカ プセルと関わる全ての事柄が謎だらけとも言えるけど。梓が自らの危機の中で噛み砕いて 飲んだカプセルについても、起こった影響がどんなものかちと分り難かったし。  ただ、薬物中毒を更に超えた症状を引き起こすカプセルや取り扱ってる組織の関係など、 題材としてはなかなかの面白さを感じられたのも確か。不明瞭な点は次巻以降へ持ち越し でも徐々に見せてくれるならという期待込みで。  良かったのは景と梓の関係を描いてる辺りかなぁ。とりわけ景の梓に対する心情とか。 7年の歳月を経ても無関心を装っていても、いざって時には昔と変わらずちゃんと梓の事 を考えて見てくれている。荒みまくった内容に一服の清涼剤という感じでホッとしました。 あとは登場する度に話す度に行動起こす度に、一番最初の印象からどんどんかけ離れ崩れ てゆく千絵の姿が読んでいて楽しかったです(笑)。 2002/10/22(火)トワ・ミカミ・テイルズI 国なしの皇子、乱国に起ちて
(刊行年月 H14.09)★★★★ [著者:日下弘文/イラスト:宮城/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  舞台であるパンゲアという世界の歴史――女神アルテマと破壊神シーヴァの争いから端 を発し、パンゲアに壊滅的な傷痕を残した過去の出来事、圧倒的な軍事力を誇る帝国の支 配下にある現在の情勢、そして希望の見えない未来に為すべき事へ向かい手を伸ばそうと する者達。そういった世界を読み手に堪能させる事がまず一番先に立ってる物語。次にキ ャラクターがその中に役割を与えられてはめ込まれてると印象だったかな。  設定としては異世界ファンタジーの王道と言うべきなのか。帝国に支配されてる情勢と か、皇帝の血縁者が反乱を起こして立ち向かうとかの相関関係などはわりとよく見たこと ありそな感じだったのですが、このパンゲアという世界の作り込みが実に深く丁寧で、読 んでみてかなりこの世界観に惹かれてしまいました。“虚空の力”ってのも面白いシステ ムだったし、何よりこれからリュカ達と帝国との争いがスケールの大きな世界背景の中で 一体どう展開してゆくんだろう? という今後への期待感ってのがもの凄く高まっている のですよね。確かに始まったばかりで謎も多いけれど、これは知りたいかなと思った部分 は大体明かされていたので、その辺のバランスの良さも好感触だったのかも。個人的には 引っ張るようになんでもかんでも隠されるのはちょっと勘弁なので。  まあ問題はこれからで、大きく広げたものをどう展開させ収束させて結末まで導くかが 肝心。期待値高いので、打ち切りっぽく終わるのと未完ってのだけは絶対やめて欲しいで すが(^^;)、龍皇杯の結果と合わせて続きを楽しみに待ちます。 2002/10/21(月)ディヴァイン・ハート1 白銀の竜とワルツを
(刊行年月 H14.09)★★★★ [著者:あおしまたかし/イラスト:こやま基夫/富士見書房 富士見ファンタジア文庫]→【
bk1】  人間と擬人化出来る竜との共存とか竜舞闘のシステムがどうこうよりも、まずキャラク ターの面白さと印象深さが凄まじく際立ってた物語。ボケとツッコミで強引に話を進めて しまってる部分もあれど、とにかくキャラ同士の掛け合いが読んでて非常に楽しかったで す。会話からキャラクターの特徴を導き出すうまさというのかな? そういう見せ方がよ く描けていて、惹かれてしまったからには負けを認めるしかないと。  個人的には遊子さんが大好きなのですよね。おそらく作中で一番強くて怖い人なんだけ ど、普段のそういうの微塵も見せない姿とのギャップがまた堪らないという感じ。彼女の オモチャにされてる陣はたまったもんじゃないだろうけど(笑)。  陣とキリアの“喧嘩するほど仲は険悪”な関係も面白かったですが、こう僅かずつ徐々 に徐々にお互いパートナーとして意識してゆく過程なんかもベタであってもいいなと思わ せてくれるシーンが多かったかな。竜舞闘部との試合で危機に陥った時は、二人の心が惹 かれ合って乗り切る……じゃなくて全く逆の発想で見せてくれたのには、遊子さんも言っ てたけど実に陣とキリアらしい切り抜け方で、してやられた感一杯でした。  ただその方策が「ディヴァイン・ハートってこんな事も出来るんだぞ」の言葉で片付け るにはちと唐突で都合良過ぎなんじゃないかなぁ……と思ったりもしましたが。  弾かれた者達(陣やキリア)が伝統にしがみついて奢る奴等に抵抗して必死になってガ ツンと一発喰らわせるのも楽しめた要因の一つ。まあ遊子さんやいおりんが強過ぎるので 先の読めまくりな竜舞闘部と竜舞闘同好会の試合は微妙だったかもですが(^^;)。その 辺はもっと強い相手も登場するだろう続きに期待したい所。


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